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第8話

 ジャージ仮面とクロの勝負が決着し、立っていたのはジャージ仮面だ。


 ジャージ仮面は片手に持っていた電話を耳にあてる。


「総理、任務完了です」


 四葉の報告に総理は言葉を返す。


「ご苦労様です。その捕縛した男は、構成員と戦闘している、後方の責任者に預けなさい。話は通しておきます」


「分かりました」


「責任者に男を預けたら、貴方もすぐに構成員制圧の任務に入ってもらいます」


「分かりました」


 ジャージ仮面が電話を切ろうとすると、総理が言葉を残す。


「それと、あと一つ」


「何でしょうか?」


「ジャージ仮面なのだから、仮面だけでなく、ジャージも着なさい」


 ジャージ仮面は自分の姿を確認すると、仮面だけを着けており、服装はパジャマ姿のままだった。


 顔を赤らめながら、ジャージ仮面は言葉を返した。


「失礼しました」


 ジャージ仮面は、恥ずかしくなり、すぐに電話を切ったのだ。


 そして気絶する、クロを睨みつぶやいた。


「お前のせいだぞ。最悪だ。嫌だ。俺のパジャマ姿が全国放送されるのか」


 ジャージ仮面は、仮面を外し、体をかがめながら頭を掻きむしり、大きなため息をついた。


「取り敢えず、こいつを運ぶか」


 四葉は仮面をかぶると、クロの服を掴み、総理から送られた、自衛隊の後方隊に向かって、走り出す。


◇ ◇ ◇


 ジャージ仮面がクロの受け渡し場所に近づいていくと、周りは戦闘音が広がっていた。


「押しているようだけど、急ごう」


 ジャージ仮面は身体強化の出力を上げ、走るスピードを上げた。


 数分が経ち、ジャージ仮面は受け渡し場所に到着した。


 周りは急にジャージ仮面が現れたことに驚いた。


「みなさん、お疲れ様です。後方の責任者はどちらにいますか」


 ジャージ仮面の問いかけに、反応したのは体が大きく、筋肉が膨張している、色黒の軍人だ。


 色黒の軍人が敬礼をするとジャージ仮面も敬礼で返した。


「お疲れ様です」


「ジャージ仮面が敵の幹部を捕えたと、報告を受けている。流石は英雄だな」


「お褒めの言葉、感謝します」


「私はこの後方部隊の責任者を任されている、大尉だ。早速だが、敵の幹部の身柄を預かろう」


「よろしくお願いします」


 ジャージ仮面は運んできた、クロを大尉に渡した。


「確認した。こいつは、私たちのほうで厳重に拘束する。その後の処遇は上の方々が決めるだろう」


 その一言に、四葉は捕まえた、クロの未来が完全に閉ざされたことを理解した。


「それでは、私は構成員の捕縛に向かいます」


 ジャージ仮面が大尉に伝えると、大尉はジャージ仮面を呼び止めた。


「待って」


 大尉は地面に置いていたケースをジャージ仮面に渡す。


「これは?」


 大尉に問い返すと、言葉を返した。


「総理からの贈り物だ」


「贈り物?」


 ジャージ仮面は頭を傾げながら、贈り物を開けた。

 その中身には。


「これは……ジャージ?」


 ジャージが入っていた。


 二人が頭を同時に傾げると、ジャージ仮面は総理との会話を思い出した。


「私の服装ですね」


 ジャージ仮面の説明に、大尉はジャージ仮面の服装を見た。


「成程な。確かに、その格好では、国の象徴とは言えないな」


 大尉はパジャマ姿のジャージ仮面を見ながら笑いだす。


「考えは分かりますが、ジャージに仮面を着ける男も、大概、変ですよ」


 ジャージ仮面の皮肉に松本は言葉を返した。


「そんなことはない。既にこの国では、君の格好はこれだと全国民が認識しているよ。既に受け入れられているなら、変ではない」


 その励ましにジャージ仮面は思った。


(受け入れられたのではなく、受け入れるように押し付けただけでは)


 ジャージ仮面は、色々と言いたいことを押し殺し話を戻す。


「話過ぎました。それでは、構成員の制圧に向かいます」


「そうだな。前線ではみんなが戦ってくれている。君の力が必要だ」


「奮戦を期待する」


「はい」


 ジャージ仮面は話を終えると、戦場に向かって走り出した。


◇ ◇ ◇


 ジャージ仮面が戦場に降り立つと戦況は一変した。

 全ての敵を一撃で倒し、一切スピードを緩めずに次々と相手を無力化させていく。

 拮抗していた状況が一瞬で傾いた。


 ジャージ仮面が戦場に現れてから、すぐに全ての戦場が片付いた。


「能力者がいないようじゃ、この程度か」


 彼の後ろからは仲間たちの大きな喝采が響きある。


 ジャージ仮面は拳を空に突き上げると、それに反応するように、止まない喝采が彼に贈られた。


◇ ◇ ◇


 ジャージ仮面が構成員との戦闘を終えた頃、指令室では、先程ジャージ仮面と話していた総理が指令と話していた。


 しかし、指令室の空気は非常に冷たい。


「失態ですね、指令」


 総理の冷たい一言に、指令は冷や汗を流し、謝罪する。


「申し訳ございません」


「ここの維持費にどれくらいの予算を出しているか、理解できていますか」


 総理の言葉に指令は即答した。


「もちろんです」


「それでは、それだけの莫大な費用を使いながら、ジャージ仮面の情報を盗まれたと、ジャージ仮面の情報は全て極秘情報のはずですよ。ジャージ仮面の情報以外も盗まれては問題ですが」


 総理の説教と小言に指令は何も言えない。


「今度また、このようなことがあれば分かりますね」


 指令は何度も何度もうなずき答えた。


「もちろんです」


 総理は頷く。


「期待しています」


 総理との通信が切れると、指令は倒れた。


「指令、大丈夫ですか」


 部下の問いかけに指令は早口で言葉を返した。


「大丈夫な訳ないだろう。俺は首を覚悟したぞ。総理は怖いんだよ。それにお前たちだって首だったかもしれないぞ」


 指令が叫ぶと、部下たちが言葉を返す。


「それはないですよ。一応、私たちが敵の構成員のアジトを特定して、報告を行いましたので、それを合わせたらきっとチャラですよ。チャラ」


「それは絶対にない。」


 指令は部下たちの言葉を否定した。


「そうですか」


「そうだ。今回は敵の幹部と、構成員を全て捕縛できたから、首は繋がったが一人でも逃していたら、俺たちは確実に首を斬られていたぞ」


「何で、指令は分かるんですか」


 その質問に指令はヒーローの重要さについて説明した。


「お前たちは今まで、存在したヒーローの数を知っているか」


「確か、六十五人でしたか」


「正解だ。その六十五人はある特徴があった。それは何だと思う」


「基本ですよ。生まれつき特異能力を持っていることです」


 部下が自信満々に答えると、指令はその答えを否定した。


「不正解だ。正解は特異能力が強いことだ」


 指令の答えに部下たちは思った。


「同じでは」


「違う。もう一つ質問だ。この日本に今、確認されているヒーローは何人だ」


「国民の常識ですよ。一人ですよ。四葉君だけですよ」


 指令はそれも否定した。


「違う。正解は三名だ」


 今度は指令の回答に部下たちが驚く。


「ありえません。特異能力持ちの、赤子が生まれたら、国に報告する義務があります」


「無論、報告されている。そして、国は二人の特異能力者を隠している」


「何故ですか」


「弱いからだ」


「よわい? 本当に特異能力者なのですか」


「お前たちは一つ勘違いをしている」


「勘違い?」


「何故、全てのヒーローが戦える特異能力だけを持って生まれると勘違いする。戦いとは関係ない特異能力を持って生まれる子たちもいるのは当たり前だ」


 その指令の叫びに部下たちは言葉を失う。


「屍能結社、最初は、強いヒーローの死体から力を奪っていた。そして彼らは、ヒーローとは別で、守られながら過ごす特異能力者の存在に気付いた。当然、そんな存在が居れば、ヒーローよりもそちらを狙う。ヒーローは目立ち、戦うことが専門だが、戦えない能力は、補助の専門が多い。有名なのは千里眼。どんな場所にいても、すぐに相手の場所を特定できる能力。他にも怪我を治す、治癒の能力。それを狙い、奪うことで、屍能結社は大きくなった」


 指令の説明に部下たちは口がふさがらない。


「四葉は、他の特異能力者を守る存在でもある。そしてあと二人の特異能力者の情報をここにある」


 部下たちは自分たちが就いている仕事の重みを再確認した。


「もう絶対、敵に情報を渡すな。ここに侵入できないように、徹底しろ」


「了解」


 この時、指令室は更なる強固な壁になった。

読んでくださって、本当にありがとうございます!

明日で最終話です。


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