第7話
ジャージ仮面とクロの勝負が始まった。
二人が踏み込み、急接近し、二人が同時に拳を構えて打ち抜いた。
二人の拳がぶつかり合い、一人の拳が撃ち負けた。
勝ったのはジャージ仮面だ。
(こいつ、スピードは俺よりも速かったが、パワーを俺よりも弱いのか。)
ジャージ仮面がクロと名乗る男の力量を分析する。
(他にも、いくつか確かめる。)
ジャージ仮面は追い打ちをかけようと、クロに接近し、近接戦を仕掛ける。
クロが腕でジャージ仮面の攻撃を防ごうとするも、ジャージ仮面は、パワーの強さを利用して、防御の上から、相手にダメージを負わせ続ける。
(ジャージ仮面、どんな力業だ。いつもは格闘技を活かした、近接戦を得意とするが、今日は、技術ではなく、私以上のパワーと、私以上のスピードでのごり押しだと。)
クロがジャージ仮面の攻撃を防ぎながら、考えている隙を、ジャージ仮面は見逃さない。
ジャージ仮面の足蹴りがクロの防御を完全に崩した。
「隙だらけだぞ」
「しまった」
足蹴りで防御を崩すと同時に、使った足をジャージ仮面は振り落とした。
「喰らえ、ジャージかかと落とし」
ジャージ仮面の技がクロに迫る。
クロは冷や汗を流しながら、能力を発動した。
「一直線発動」
ジャージ仮面がその一言を聞いた時には、自分の技は避けられ、クロは二十メートル後方に移動していた。
(全く見えなかった。それに今の発言からして、あの男の能力は)
ジャージ仮面が思案していると。
「一直線発動」
今度はクロが仕掛けてきた。
ジャージ仮面がその声を聴くと同時に構える。
(俺の予想通りか。確かめる。)
ジャージ仮面は敵の速さに驚き、クロを見失う。
(早い、目では追えない。それでも、相手の能力が予想通りになら)
「ここだ」
ジャージ仮面がクロの立っていた、直線状に拳を打つ。
すると、ズドーンと大きな衝撃が自分の腕に伝わった。
それと同時に、ジャージ仮面が撃った拳が直撃したかのように何かを吹き飛ばした。
ジャージ仮面が打った存在を確認すると、クロが腹を抑え、胃液を逆流させ吐いていた。
◇ ◇ ◇
「貴様、何故、私の場所が」
クロは、口や鼻から血を流し、目が充血をしたかのように血走っていた。
「一発、いいのを貰った程度で、大袈裟すぎるぞ」
ジャージ仮面がクロを見つめながら、淡々と言葉を返す。
「お前の場所が分かったのは、お前の能力を見抜いたからだ」
「何!!」
ジャージ仮面はクロの能力と組織について話し始めた。
「お前たちの組織は、屍能結社。世界的なテロ組織で有名だ。その証拠にヒーローしか使えない特殊能力が使える点、そしてその能力は、二代前のヒーローが使っていた能力、一直線だ。お前たちの組織は、寿命や任務中に命を落とした、ヒーローの死体を奪い、研究することで、死んだヒーローの能力を移植することに成功した、唯一の組織。ヒーローが使っていた能力があれば確定だ」
クロはジャージ仮面の推理がすべて的中したことで、何も言えずに黙り続けた。
「黙秘は肯定と捉えるぞ」
ジャージ仮面が身体強化を更に一段階上げる。
「屍能結社の能力使い、幹部クラスは確定だ。悪いが確実に捕らえて、色々と白状してもらうぞ」
ジャージ仮面が踏み込もうと足に力を入れると、服のポケットから、電話のコール音が響く。
「こんな時に誰だよ」
ジャージ仮面が電話で相手を見ると、電話相手は総理だった。
ジャージ仮面は驚きは目を見開き、すぐに電話に出た。
「お疲れ様です、総理」
「お疲れ様です、四葉君」
総理の声は落ち着いているにもかかわらず、言葉の一言に重みを感じ、逆らえない強い意志を感じさせる。
「要件は簡潔に言います。まず一つ、貴方を襲った敵は必ず生かして捕まえなさい。死んでいなければ問題ありません」
◇ ◇ ◇
ジャージ仮面が電話をしていると、クロは隙を伺いながら、逃げる算段を整えていた。
(パワーや技術、情報収集で相手を侮っていた。今は引いて相手の情報をアップデートするべきだ。幸い、ここは森の中、逃げるのに適している。ここから、一直線に山の麓に直進して、山の麓から、山の頂上まで、直線に進む。そしてその上から落下するように直進すれば逃げられる。スピードは俺が圧倒的に勝っている。)
クロが山の麓までの一直線に繋がる道を確保すると能力を発動する。
「一直線発動」
◇ ◇ ◇
四葉が総理に任務の内容を聞いている。
「二つ目は屍能結社の構成員が鹿児島にいます。その男を捕えたら、すぐに構成員の制圧に向かってください。警察や自衛隊も既に動かしています」
「了解しました。私を襲った敵と屍能結社の構成員を必ず捕縛します」
ジャージ仮面がクロを確認しようとすると、そこには既に誰もいなかった。
「あっ……」
ジャージ仮面は体が固まった。
「どうしましたか」
総理の問いかけにジャージ仮面は気まずそうに答えた。
「話している間に、何処かに敵が消えました」
「追えますね」
総理の問いかけに、ジャージ仮面は迷いなく答えた。
「無論です。」
ジャージ仮面は身体強化を最大に上げて発動した。
目を強化することでクロを探す。
(見つけた。)
ジャージ仮面は山を一直線に駆け登るクロを視認した。
「すぐに追いついてやる」
今度は足に身体強化を最大に施し、地面を踏みしめ、足のバネを最大限に活かし、飛んだ。
クロは山を一直線に駆け登り、頂上を目指す。
(あと少しで、頂上だ。登りきれば、後はスピードに乗って落下する。)
クロが頂上に手を伸ばすと、目の前に死神が現れた。
「ヒーローからは逃げられない。」
ジャージ仮面がクロの顔を鷲掴み、山の麓に落ちていく。
「な・ん・で」
クロは理解できなかった。
ここまで追いつける圧倒的な速さ、先程とは速さの次元が違う。
その問いかけが聞こえたのか、ジャージ仮面は言葉を返した。
「何故、手を抜いていたのか知りたいのか。簡単だよ。お前の情報を収集するためだ。いつでも捕えられるほどの実力差があれば、自分から情報を話してもらうように促すのが、当たり前だ。」
その解答にクロは絶望した。
自分は敵だと認識されていなかった、事実に顔を背けたくなる。
「上からの命令だ。お前を生かして捕える。山の頂上から麓まで、この距離を落ち続ければ、確実に気を失うよな。」
その一言に、クロは現実に戻された。
(このまま落ちると死んでしまう。逃げようにも顔を押さえられて逃げられない。こいつは身体強化で落ちてても死なない。俺は死ぬ。どうすればいい。思考がまとまらない。)
「あと十秒だ。」
ジャージ仮面のカウントダウンが始まると、クロは涙を流しながら、手をバタつかせる。
(誰か助けて。だれか。)
「た・す・け・て。」
苦しみの中で残した最後の一言を呟くと同時に。
「ゼロ」
カウントはゼロになった。
ジャージ仮面は山の麓でスピードを緩め、悠々と着地した。
ジャージ仮面がクロを見ると、彼は気を失い、体からいろんな水を垂れ流していた。
「任務完了」
ジャージ仮面とクロの対決はジャージ仮面の圧勝で終わった。
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