表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

第3話

 夜の時間、四葉は家でサンドバッグを殴っていた。


(くそったれ。あの司令、人の心がないのか。そんな男が既婚者だと。)


 四葉は頭で司令を思い浮かべ、拳に力を入れた。


「世の中は不条理だ。」


 身体強化された拳は、容易くサンドバッグを貫通した。

 四葉はサンドバッグから腕を抜こうする。

 しかし腕が挟まったかのように抜けなかった。


「なんでだよ。抜けろ。今日は姫さんとも喋れず、司令には馬鹿にされる。そしてサンドバッグまで俺を馬鹿にするのか。」


 四葉はサンドバッグに逆ギレした。

 身体強化で、無理に腕を抜こうとする。


 力を入れすぎてしまい、

 腕が抜けると同時に、余った力が爆発した。

 勢い余って体重を支えきれず、

 四葉の体は倒れ、盛大に頭を打った。


「いだぁぁっ!!」


 家の中に、四葉の悲痛な叫び声が響いた。


◇ ◇ ◇


 朝になると四葉はベッドから目を覚ました。

 起きると母が作ってくれた朝食を食べ始める。

 両親は共働きで、四葉を育ててくれている。


 ヒーロー活動でお給料をもらっている。

 親から「将来のために使いなさい」と言われていた。

 そのせいか、四葉はいまだ、親孝行ができていない。


 ヒーロー関係なく両親は四葉を愛してくれている。

 そのことに四葉は両親に、いつも感謝している。


「ご馳走様」


 朝食を食べ終わる。

 ニュースを見ながら学校の準備を始めた。

 それが四葉の一日の始まりだ。


(今日の目標は姫さんに挨拶を返してもらうことだ。こうした積み重ねが恋に発展するのだ。)


 この男は初恋で、恋を何も知らないど素人である。


「いってきます。」


 家から出て学校に向かう。

 家から町にある学校直通バスまで歩いていく。

 三十分はかかる。地味に遠い。


 身体強化で行きたいが、力を使ってはダメなのだ。

 使えば、なぜかバレる。

 この前もバレて司令に怒られた。


 しかし、俺は通学中もパトロールを忘れない。

 ヒーロー活動は年中無休二十四時間体制なのだ。


◇ ◇ ◇


 学校に着くと、俺のヒーロー活動は休憩に入る。

 学校中に事件が起きたら、司令室から連絡が来る。


 そしてジャージ仮面が出勤するのだ。

 学校中の四葉は、姫さんしか頭にないのだ。


「おはよう、みんな!」


 四葉が自分のクラスに入り、挨拶をする。


「今日は時間通りに来たぞ。」


「来ない日もあるくせに。」


「不良は迷惑なんだよ。」


 小声で四葉の陰口を言うクラスメイトは多い。

 四葉の学校イメージはこうである。


 ヒーロー活動で遅刻は当たり前。

 ヒーロー活動で欠席は当たり前。

 ヒーロー活動で早退は当たり前。


 みんなはジャージ仮面の正体を知らない。

 四葉の行動は完璧な不良に見えるのだ。

 素の身体能力が高い四葉は、すべて聞こえていた。


(大丈夫。みんなは俺の正体を知らないだけなんだ。それに、あまり出席しない人が来るのが嫌なのは当たり前。)


 四葉は胸を張り、クラスに入る。

 カバンを机に置くと席を外し、トイレに向かった。

 周りに人がいないことを確認してトイレに入る。

 トイレの中で一人寂しく落ち込んだ。


「そこまで言わなくてもいいじゃん。俺も友達が欲しい。」


 四葉が落ち込んでいると、外から歓声が聞こえた。

 四葉は手で頬を叩き、気持ちを入れ替えた。


(そうだ。切り替えろ。今日の目標は姫さんに挨拶を返してもらうことだ。)


 四葉はトイレから出ると、自分のクラスへ戻る。


(教室に入ったら、「おはようございます。おはようございます」だ。)


 四葉が教室の扉を開く。

 息を吸い込み挨拶の準備を始める。

 その瞬間、扉から人の波が四葉を襲う。


「なんだ、これ!」


 四葉が後ろに後退し、驚きの表情を見せた。


「今日も姫の波が起こったか。」


「あいかわらず凄いな、姫の波は。」


(姫の波?)


 四葉が疑問に思い。

 二人の男子生徒の話に耳を傾ける。


「姫さんが通学すると、挨拶のために姫さんに人が押し寄せ、人が流れる。このことから、これを姫の波と呼ばれるようになった。」


 廊下で話す男子生徒の説明に四葉は納得した。

 四葉は立ち上がり、諦めずに教室を目指す。


「また来るぞ。」


 廊下にいる男子生徒の声が聞こえた。

 新たな姫の波が現れ四葉を襲う。


「くそ。俺は諦めない。姫さんに挨拶をして、必ず認知してもらうんだ。」


 四葉は波で流れる学生を掴み、教室を目指す。


「あと少しで、姫さんにおはようの挨拶ができる。」


 波の頂上が見え始め、四葉に力が入る。

 そして最後の波を踏み越えて教室に入る。

 後ろ姿の姫さんを視認した。


 四葉は目を光らせ。

 挨拶をするために息を吸い込む。

 挨拶をしようとした、その時――。


「みんな、おはよう。」


 姫さんの挨拶の声が四葉の耳に響いた。

 姫さんの天使を宿す声が、世界を浄化する。

 美しく、清らかな声がみんなを天国へ導いた。


 美しすぎる美声に、四葉は立ったまま気を失った。


「出たわ!天使の声が!」


「相変わらず、凄い光景ね。」


「姫さんの声には、すべての人を癒す力があるのよ。朝に姫さんの声を聞いてしまうと天に上る気持ちになり、異性は気を失い、同性は腰を抜かすのよ。この理由から、姫さんの声は天使の声と呼ばれているわ。」


「姫さん、凄いわね。通りで私たちも今、腰を抜かしているわけね。」


 女子生徒たちが腰を抜かし。

 姫の声について説明した。

 姫が四葉に近づき、自分の手で頬に触れた。


「私に挨拶をするために来てくれたのかな? 四葉君。そんなに一途に思ってくれて嬉しいな。早く気絶していない君と顔を合わせてお話がしたいなぁ。待ってるよ。私のヒーロー。」


 姫が気を失った四葉に声をかける。

 周りの女子生徒が黄色い悲鳴を上げる。


「姫ちゃん、早く告りなよ。すぐに付き合えるのに。」


「四葉君、あまり学校に来ないから、チャンスの時に行きなよ。」


 女子生徒たちが姫に告白を勧める。

 姫は女子生徒たちに顔を向けて尋ねた。


「みんなは、告白して付き合う私たちと、付き合う前の私たち、どっちがいい?」


 その問いかけに戸惑う女子生徒たち。


「付き合えば、みんなの前では絶対にイチャイチャしないよ。私だけが彼を独占するから。でも、私たちが付き合う前なら見せてあげる。私たちの恋の物語を。」


 姫は再度、女子生徒たちに尋ねる。


「答えてよ。」


 姫が女子生徒たちに小悪魔な笑みを見せる。


「付き合う前がいいです。」


 女子生徒たちは、示し合わせたように即答した。

 姫さんの小悪魔な笑みを浮かべ。

 女子生徒たちはまとめて気を失った。


「先生が授業を始める前に予習しよ。」


 姫は自分の席に腰を下ろした。

 机に腕を置いて頬に手を添え、静かに空を見た。


「告白は嫌よ……だって、一度はヒーローに愛されて、告白されたいって思うでしょ?」


 姫は頬を赤く染めた。

 誰にも聞かれないほど小さな声で夢を語る。

読んでくださって、本当にありがとうございます!


「面白い」「続きが気になる」と感じて下さった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】から評価、または【ブックマーク】をお願いします!


あなたの応援が、次の更新の一歩になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ