第2話
組同士の取引現場を押さえ、仕事を終えた四葉は報告に来ていた。
「ジャージ仮面、報告ご苦労。」
「そのダサい名前で呼ぶな。」
四葉が禿げ頭の厳つい男に文句を言う。
この男が、四葉ことジャージ仮面の指揮を任された人物である。
「お前が私に名前を考えろと言ったのではないか?」
「本当に後悔してるよ」
四葉はヒーローになった時を思い出す。
ヒーロー、それは特殊能力を生まれつき持っている存在のことをさす。
今現在確認されているヒーローは四葉を合わせて十名。
四葉が持って生まれた能力は身体強化である。
まさに地味だ。
周りのヒーローは火を吐き、空を飛び、巨大になるなど、すごく目立つ能力を持っている。
ヒーローを持つ国はヒーローを象徴として扱う。
身体強化は特に見た目も変化せず、空も飛べない。
そこで、目の前の男が俺を目立たせるために考えたのが、このヒーロー名とジャージだ。
親しみとユーモアを兼ね備えた結果、俺はジャージ仮面になった。
◇ ◇ ◇
「ヒーロー名を考える時に戻りたい。」
四葉が嘆くように地団駄を踏む。
「文句を言うな。ジャージ仮面人気だぞ。」
つるっ禿げのオッサン司令が四葉に携帯を見せる。
◇ ◇ ◇
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23.名無しの一般人
今日もジャージ仮面、面白かった。
24.名無しの一般人
分かる。
あのダサさであの強さ。
見てて飽きない。
25.名無しの一般人
ヒーローの事件解決後は必ずニュースで放送されるから毎日見てる。
26.名無しの一般人
まさに。
今日の夜にご飯食べながらヒーローニュース見るのが定番よ。
ジャージ仮面は未成年だけど、俺たちの為に働いてくれて嬉しいよ。
27.名無しの一般人
いつも事件解決のニュース見てると、ジャージ仮面の成績が心配だな。
28.名無しの一般人
そこはヒーローだから、どうにかしてるだろう。
29.名無しの一般人
これからも我らの象徴、ジャージ仮面を応援していこう。
30.名無しの一般人
おおおおおっ!
31.名無しの一般人
おおおおおっ!
32.名無しの一般人
おおおおおっ!
33.名無しの一般人
おおおおおっ!
34.名無しの一般人
おおおおおっ!
◇ ◇ ◇
四葉は顔を赤くしながら、掲示板を読んでいた。
「どうしたよ。そんなに顔を赤くして、照れてるのか。」
司令が悪い笑みを浮かべながら四葉に近づく。
「照れてないよ。ただ、もっと頑張ってみんなが平和に過ごせる国にしていきたいと思っただけだよ。」
四葉の言葉に司令は微笑み、四葉の頭を撫でた。
「それじゃ、もっとジャージ仮面に仕事を振らないとな。」
その一言に四葉の顔は青ざめる。
「鬼畜、中学生を働かせるな。労基に訴えるぞ。」
「お前、ヒーローは国家公務員だろう。国民から税金をもらってるだろう。」
その一言に四葉は黙ることしかできなかった。
「もちろん。皆さんの為にも働くけれど、もう少し学校の時間が欲しい。」
「何故?」
両手の示指をちょんちょんしながら小声で話す。
「恋愛がしたい」
「すまん。聞こえなかった。もう一回頼む。」
四葉は顔を真っ赤にしながら息を吸い込み、大きな声でゆっくりと叫んだ。
「恋愛がしたい!」
司令は耳を塞ぎながら、四葉の叫び声を聞いた。
「恋愛? すればいいだろう。」
「仕事があるから、できないの。」
「四葉、好きな奴でも出来たか。」
司令が四葉の肩に腕を絡め、問いかける。
四葉は恥ずかしくも頷いた。
「そうか。」
司令は頷きながら言い放つ。
「諦めて、仕事に生きろ。」
その一言に、四葉は目を見開き驚く。
「ここは応援してくれる場面でしょう。十年以上の付き合いでしょう。」
「しかしなぁ、俺は人前でダサいジャージに仮面を付ける人と、自分の娘が付き合うことを考えると普通に嫌だぞ。」
四葉は、まさしくトドメの一撃を受けた。
目からは涙が溢れ出し、大きな声で叫んだ。
「司令のクソ野郎。ダメ人間。鬼畜外道禿げ頭。」
四葉は涙を流しながら部屋を飛び出した。
周りでは、二人の会話を聞いていた部下たちが、司令をクズでも見るような目で睨んでいた。
◇ ◇ ◇
姫さんは家族とともにヒーローニュースを見ていた。
「今日もジャージ仮面は凄いわね。今までの事件解決率100%でしょ。見た目はともかく、こんな優秀なヒーローが国を守ってくれるのは安心ね。」
姫の母が姫の父に問いかけた。
「そうだな。活動を始めてまだ一年だが、関東地方の事件発生率は少しずつ減り始めているようだ。」
「ヒーローは凄いわね。あなたもそう思わない。姫。」
「もちろんよ。ジャージ仮面はカッコイイ人よ。なんだって私のヒーローだから。」
「あらあら、姫はジャージ仮面が大好きね。この街を中心に活動しているから、もしかしたら姫にもチャンスが来るかもね。」
「お母さん。」
姫が恥ずかしそうに母を呼ぶ。
「姫にはまだ早い。それにジャージに仮面をつけた、変な奴と付き合うのは反対だ。」
「あらあなた、娘が取られるのが心配。それに服装は姫が正せば問題ないでしょう。服のダサさも、その人の個性よ。」
姫の家庭は、今日も笑顔で溢れていた。
「明日の学校、楽しみだな。明日も来てくれるかな、四葉君。」
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