番外編
俺は今日、最高の一日を迎える。
今日はバレンタインデー、もしかすれば姫さんから義理チョコを貰えるかもしれない。
何故、俺がこんなに貰えると自信を持っていると思う。
簡単だ。俺は姫さんと席が隣同士なのだ。
早く学校に行かなければ。俺は学校の制服に袖を通し、鞄を持つ。
「いってきます!」
玄関の扉に触れようとすると、緊急連絡が入る。すぐに連絡に応答する。
「はい!こちら四葉」
電話からは司令の声が答える。
「ジャージ仮面、仕事だ。」
「絶対に断る!」
俺はその命令を断固拒否した。
「はぁ~!?」
電話から司令が動揺した事が分かる。
「何故だ!お前ヒーローだろう!」
「知るか!今日は何の日だ!」
俺は怒声には怒声で言葉を返した。
「バレンタインデーだろう。」
司令は答えると俺は追い打ちをかけるように話す。
「そうだ。今日、俺は好きな人からチョコレートを貰える。年に一度だぞ!たまには警察や自衛隊が俺の代わりに仕事をしろ!」
司令は俺の怒涛の言葉にたじろぎながらも言葉を返す。
「お前、何で貰えることが前提なんだ。貰えなかったらどうする。」
「ふっ。甘いな。俺は現在、姫さんと席が隣同士だ。つまり必ず義理チョコが貰える」
俺はポーズを取るように決め顔を作る。
「四葉、お前、考えが甘すぎないか。」
「指令は知らないようだ。俺は今まで、バレンタインデーの時には、必ず隣の席の女子がチョコをプレゼントしてくれたのだ。実体験に勝るものなし。」
司令はため息を吐いた。
「はぁー、色々と突っ込みたいが緊急だ。能力者案件。お前の役目だ。」
俺は理解したくなかった。
能力者が絡んでいる以上、同じ力を持つ俺が出るのが当たり前だ。
「クソッタレ!!」
俺は仮面を被り、ジャージ着替える。
「分かった。すぐに向かう。」
俺は送られてきた地点に向かう。本当に俺はなんて運が悪いんだ。
(姫さんのチョコレート食べた方!!)
心の声を叫びながら、涙を流しながら町を駆ける。
◇ ◇ ◇
お昼過ぎ。
俺はメールで送られた地点に到着した。
何処にいる。徹底的に潰してやる。
「ジャージ仮面お疲れ様です」
後ろの声に反応する。そこには、自衛隊員が待機していた。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様です。」
俺は挨拶を返す。
「状況を聞いても」
俺は状況を確認した。この森に屍能結社の基地を発見したこと。
基地の中はもぬけの殻だったが、罠として能力を扱う機械兵器が動き出したそうだ。
動き出した機械は暴走を始めて、まだこの森で暴れている。
この状況で俺に求められたのは機械の鎮圧だ。
仕事を理解した俺は鎮圧任務に集中する。
「任務了解!」
◇ ◇ ◇
「キーンコーンカーンコーン」
授業のチャイムがなると担任教師が出席をとる。
一人一人が呼ばれていく。
四葉の名前が呼ばれると返事は返ってこない。
「あいつは待った欠席か」
先生は頭を悩ませながら出席簿にチェックを入れた。
クラス内では四葉に対する陰口が飛び交う。
「今日はうざい奴の顔を見なくて済んでラッキーだな!」
「そうそう。今日はバレンタインデー、不良には縁遠い話だもんな!」
男たちは笑いながら四葉をバカにする。
女子たちは、話が聞こえると男たちに軽蔑の視線を向ける。
「あいつらには何もなし!姫さんの近くにも寄らせるな。姫さんの恋路を邪魔する奴は全て消しなさい。」
この学年では姫が四葉に恋をしていることを大半の女子が知っている。
姫ファンクラブは隠れながら、二人の恋を陰ながらサポートしている。
◇◇ ◇
「はぁ~。四葉君、今日も休みか。折角、チョコレートと持ってきたのに」
姫は鞄に入っている綺麗にラッピングされたチョコを見る。
昨日頑張って手作りしたのに。渡す相手がいないと意味がないでしょ。
姫は隣の空いている席を見る。
(バカ。そっちから話しかけてきなさいよ。意気地なし。)
机に突っ伏すし、彼の席を見つめる。
「早く会いたいな」
◇ ◇ ◇
俺はねばねばしたスライムもどきと相対していた。
「どこが機械兵器だ。これは、まるでゲームの敵だぞ」
俺は笑みをこぼす。
攻撃は弱く。スピードも遅い。攻撃距離も短い。
一言で言うと雑魚だ。しかし一つだけ厄介な点があった。
「物理攻撃の耐性が高すぎる!」
俺は何度も殴り、蹴りを入れた。
全くもって効いていない。
こういう時だと、核を攻撃するのが鉄板だが、そんなものはない。
すると無線から司令の言葉が届く。
「どうする。かれこれ十分は格闘しているぞ。」
「まだ十分だ。少しは待ちなよ。」
司令の言葉に軽口を返す。
「一応、言うが移動規制などを行っている。可能な限り、早く終わらせろ。」
「分かった。すぐに終わらせる!」
俺は無線を切ると、陸上でよく使われるクラウチングスタートの構えを取る。
「お前の倒し方は簡単だ。一点集中でどてっ腹をぶち抜く!」
身体強化を右足一本に集中させる。
俺はスタートを切るように走り出す。
右足から赤い稲妻が音を出す。
「喰らえ、雷撃ジャージキック」
赤い稲妻が敵の腹を貫き、巨大な紅の雷撃が敵を打ち抜いた。
「任務完了」
俺は仮面を外し消し炭になった敵を確認する。
敵が消えると、報告の為に森を下山した。
報告を終えると、基地の制圧に入った。
他にも敵が潜んでいないか。罠が残されていないか。
全てが終わると、既に午後三時を過ぎていた。
◇ ◇ ◇
俺は今、走っている。
午後四時までに学校に間に合えば、姫さんが学校に残っているかも知れない。
「俺はチョコをあきらめない!」
学校が見えてきた。家の屋根を飛び移りながら学校の屋上に到着する。
学校に到着した時間は三時三十分前だ。俺は走りクラスに向かう。
外では部活の声が響いていた。
クラスが見えてくる。扉に手をかけ、クラスに入る。
そこには誰もいなかった。俺は四つん這いになり、涙を流す。
「チョコレート‼」
クラスに入り、自分の席を見るが何も置かれていない。
「そうだよな!義理チョコをわざわざ置いて帰るわけないよな。義理なんだから」
落ち込みながら、家に帰ろうと教室を出る。
部活の掛け声が何故か、流し続ける涙に沁みた。
下駄箱に着くと、自分が裸足の事を思い出す。
屋上じゃなくて校門から入るべきだろう。
頭を掻きながら、一人で笑みを浮かべる。
自分の下駄箱を開けると、何かが入っていた。
中身を取り出すとそこには。
「あまり無茶はしないでね!バレンタインデーよ!――姫より」
チョコレートと手紙が入っていた。
俺は思考が止まった。これが何か理解出来なかった。
何度も何度も手紙の内容を往復し確認する。
「バレンタインデー。姫。バレンタインデー。姫。」
思考が追いつくと、俺は両腕を高く挙げ、勝利の雄叫びをあげた。
「ありがとう、姫さん!」
すれ違い続ける二人の恋の行方は、果たして――?
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