第1話
僕は四葉、さえない中学生男子だ。
そんな僕には夢がある。
同じクラスの女子、初恋の人である姫さんとお付き合いすることだ。
席は遠いが、いつも見てしまう。
綺麗な銀髪。美しい顔立ち。
そして超が付くほどのお嬢様。
それに比べて僕は地味な容姿で、家も貧乏でもなく裕福でもない普通の家だ。
そんな僕にも月1回の恋愛チャンスが訪れた。
それは席替えだ。
何としてでも姫さんの隣の席を確保する。
僕はそんな野望を胸に抱えながら、家を出た。
「行ってきます」
大きな掛け声とともに学校へ向かうと、銀行強盗に遭遇した。
「はぁ〜、またかよ」
少年は顔を隠す仮面をかぶり、ジャージに着替えると、お金を奪って銀行から出てくる強盗三人組を一瞬で制圧した。
「楽しみな日を邪魔するなよ!」
周りで見ていた野次馬が喝采を上げた。
「さすがはジャージ仮面!」
「見た目以外は完璧だ」
そんな言葉にため息をつくと、警察に犯人と奪われたお金を預けた。
「助かりました。いつもありがとうございます。ジャージ仮面」
「急ぐので。」
四葉は仮面越しに頷き、学校に向かって走り始めた。
「ヤバい、ヤバい、遅刻する。今日は1時間目に席替えなんだぞ」
四葉が学校に到着し、教室に入ったころには、すでに一時間目は終わっていた。
◇ ◇ ◇
俺は四葉。
席替えに参加できず、愛しの姫さんの席から遠く離れたミジンコだ。
「姫さん、何であなたは、こんなに遠いんだ」
「あいつ、席が隣になったからって姫さんを見すぎだろ」
俺は何度も手を強く握り、運に恵まれて姫さんの隣になった男を睨む。
「俺も姫さんの隣でバレないように彼女を見つめたい」
四葉は自分の体をくねくね動かしながら、姫さんと隣になった自分を想像した。
「姫さん。」
「四葉君。」
二人の手が恋人つなぎのように重なろうとする。
「人の授業中にキモい動きをするな。」
担任教師からチョークが四葉の額に向かって飛んでくる。
四葉は自分に向かってくるチョークを指で受け止めた。
「くそったれが」
担任教師が悪態をつく。
「先生、甘いですね」
四葉が決め顔を決めると同時に先生が四葉に拳骨を入れた。
「そんなことを言う暇があるなら真面目に授業を聞け」
四葉が椅子から落ちて答えた。
「はい」
先生が離れていく。
◇ ◇ ◇
「授業が終わったら姫さんに話しかける」
四葉が決心をつけて、授業が終わると同時に、同学年全クラスが一斉に姫さんに群がった。
「相変わらず凄い。これが姫への謁見」
説明しよう。
姫への謁見とは、授業が終わると同時に姫さんに話しかけた順番で、姫さんとおしゃべりが数秒できるのだ。
「俺も今、並べば話せなくても顔は見れるかも」
四葉が列に並ぼうとすると、懐から電話の着信音が鳴った。
四葉が着信先を確認するとえげつない恨みを込めた声を発した。
「くそが」
「ジャージ仮面、出動だ」
男の声を聞いた四葉は、表情を変えて答えた。
「了解」
四葉は仮面をかぶり、ジャージに着替えながら屋上に向かった。
その時、小さな声でつぶやかれた。
「ケガしないでね」
その一言は誰にも届かなかった。
◇ ◇ ◇
四葉が仕事場に到着した。
「取引を止めて、逮捕しろね」
「要するに、組同士の取引現場を押さえてお縄につけろと。」
「警察の仕事だろう」
「ジャージ仮面、ご協力感謝します」
「気にしないで下さい。困っている方を助けるのは当たり前です」
四葉が仮面の下から答えると警察の方々、各々が敬礼をした。
無線で組同士が接触したことが報告され、緊張状態になる。
「突撃」
その掛け声と共に、まず突入したのはジャージ仮面だ。
ジャージ仮面が組同士の前に姿を現すと、組同士は驚き、各々が武器を取った。
ジャージ仮面はまず、遠距離攻撃の脅威を持つ組員を全て無力化させた。
そして渡された無線を繋ぎ連絡を取る。
その言葉と同時に外で待機していた突撃部隊が中に進入し、組員を捕らえ始める。
「おいおい、仲間を置いて、リーダーが逃げるのはダメだろう」
ジャージ仮面の問いかけに二つの組員リーダーたちが肩を震わせる。
「物は受け取ったんだ。分かれて逃げるぞ」
「ああっ!」
二人が扉から出ると、外で待ち構えていた警察官たちが銃を構えた。
「投降することを勧めるよ」
二人のリーダーが崩れ落ち、逮捕されたことで、この仕事は終わりを迎えた。
仮面を脱ぎ、携帯で時間を確認すると今日の学校は終わっていた。
「今日も、姫さんの後ろ姿しか見られなかった」
これは、地味な少年がヒーローとして活動する一方で、その使命に邪魔され、好きな人に近づけない物語。
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