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百獣の王と密林の覇者、異世界で獣人解放の旗を掲げる~誤召喚された俺たちが、奴隷以下の同胞を救って建国する話~  作者: スフィーダ


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第05話 野盗

ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン


「おぉ、結構揺れるねぇー」

「タイガよ、黙っておらんと舌を噛むぞ」

「はーい」


整備されていると言うが、山道はでこぼこ道で荷馬車が右へ左へと揺れ、時折、上下にも跳ねている。

タイガは、それを楽しそうに喜んでいる。

但し、目と耳は常に警戒しているようだった。

それはレオンも同様で、辺りの異変を察知できるようにキョロキョロと見渡し、鼻をヒクヒクさせている。



「よっし、この峠を過ぎたら国境の高い塀が見えるぞい!」

「おぉ、やっとかー。ん??」


レオンの鼻にインバ以外の人間の匂いが感じられた。

タイガは耳をすませている様だった。


「爺さん、止めてくれ」

「ん?止めるのか?小便か?」


ガッタン


「爺さん、荷馬車の中に入りな。どうやらお客さんが来たみたいだぜ」

「えっ!?わかった。すぐに中に入るぞい」


「タイガ!」

「うん、気づいてる。どうやら囲まれてるみたいだね」

「そうだな。タイガは爺さんを頼んだ」

「わかった。僕のスキルで守るよ」


タイガは掌をインバの方へと向ける。

「じいちゃん、声を出しちゃダメだからね。いい?絶対に黙ってじっとしててね」

「わ、わかった」

「じゃ、いくよ!『ミスト・オブ・アニマ(魂の霧)』」


タイガの掌から広範囲に濃い闇の霧が発生する。

この霧は、レオンの五感を研ぎ澄ませる効果を持つ一方で、人間側の魔術師や弓兵の照準精度を劇的に低下させる、攻防一体の陣形魔法になる。

この霧がインバの身体ごとすっぽりと包み込むと同時に、辺りにも広がって行く。


「兄ちゃん、こっちは大丈夫だ!」

「よし、じゃ、お前も出てこいよ。虫けら退治といこうぜ!」



真っ暗な霧に包まれた野盗たちは右往左往しているようで、荷馬車の位置すら見失ったようだった。


「さて、お前ら!このまま退くなら許してやる。襲って来るなら覚悟してこいよ。俺達は加減って言葉を知らないからな!」


ザワザワザワザワ


「テメェら、何してやがる!いいからやっちまえ!」

野太い声がするのは、野党の首領だろう。


ウォォォォー


数人の野盗がレオンへと向かって来る。

手には剣を持ち、顔には手拭いで顔を隠している。


「来たか……。死ぬ覚悟は出来てるんだろうな?」


近づいて来た野盗たちはレオンの顔、姿を見て立ち止まり、どうしていいか分からなくなっているようだった。

「なんだ?来ないのか?」

「――クッ、クソがぁー」


野盗の件をスイスイと避け、ガシッとひとりの野党の頭を掴んで持ちあげる。

「ぐあぁ、は、離せ、離せ」


グシャ


野盗の頭はレオンの分厚くて頑丈な手で熟したトマトを潰すがごとく、簡単に粉砕してしまった。

手についた血と脳漿(のうしょう)を振り払い、次の野盗へ鉤づめ状の巨大な爪をゾロリと出す。


ひるんでいた野盗であったが、それでも勇敢にレオンに向かって来るのだが、腕を一閃するだけで野盗の首と胴体は泣き別れになってしまった。



「僕も頑張ろうかな。『シャドウ・ベール(影の帳)』。これでいいのかな?」


タイガがスキルを唱えると、自身の身体の輪郭が歪んでいく。

周囲の影に同化していくスキルは広範囲型カモフラージュ魔法である。

敵の視覚的な認識を大幅に妨害し、不意打ちを可能にできるものだった。


自分とレオンのみが濃い霧でも視界良好であり、隠れている野盗やレオンの隙を伺っている背後から、タイガもレオン同様に鉤爪で頸動脈を断ち切っていった。


うっ

がっ

ぎゃ


たちどころに数人の野盗を倒して行く。レオンとタイガは向かって来る野盗の首を作業の様に刎ね飛ばす。

その間、数分間の出来事だった。


「兄ちゃん、もうあと一人だけだから、霧を解除するよー」

「おー、いいぞー」


霧が解除されるとレオンや近くの木立にはゴロゴロと野党の死体が転がっていた。

レオンの正面にはひときわ大きい男が呆然と立っているだけだった。


「もう、お前だけか。さぁ、どうする?お仲間は死んだけどな。なぁ、どうする?」

「お、俺の配下を……。く、クソやろうが!舐めんな半端者っ!人間様を舐めんじゃねぇぞ!」


大剣を正眼に構えてレオンの前に対峙する。

ただ、構えただけでレオンの方へとは来ない。

レオンが一歩前に進むと、野党の首領らしき男は一歩下がる。


一瞬で距離を詰めて殺すことも可能なんだが……。


「レオン、タイガ、野盗は一人だけでもいいから捕まえてておくれ!騎士さんに引き渡さにゃならんのでなぁー」

荷馬車から様子を伺っていたインバから大声でレオンとタイガに呼びかけてきた。

「わかった。じいさんは兎に角、隠れてろ!タイガ、警戒!」

「オッケー」


「さぁ、来いよ。それとも逃げるのか?なぁ、半端者に馬鹿にされてままでいいのか?ん?」

「こ、この半端者野郎がっ」


大剣を大きく振りかぶり、レオンの正面から振りぬくと思いきや、背後にまわって首筋へと大剣を振るった。


ガキン


バキッ


野盗の首領の大剣はレオンのたてがみに跳ね返され、ぽっきりと折れてしまったようだった。

「あぁ、ごめんなぁ。お前の大事な剣が半端者には通じなかったようだな。ハッハッハ」

「ク、クソッ」

「はーい、そこまでー」


首領の身体全体にタイガのスキルであるダーク・バインド(闇の拘束)で拘束されてしまったようだった。

「グッ、こいつ、クソー。う、動けねぇ」



「爺さん、騎士さんとやらを呼んで来てくれるか?俺達はコイツを引っ張って山を下りるからよ」

「う、うむ。わ、わかった。すぐに戻ってくるからの。お前さんらも気を付けるんじゃぞ」

「あいよー」


ガタガタガタガタガタガタ


インバは急いで山を下りていった。もう目の前には国境も見えているから大丈夫だろう。

見送っていると、タイガが死んだ野盗の死体と首を持って来ている。

「タイガ、それ何するんだ?」

「いや、昨日さぁ、兄ちゃんと爺ちゃんが話してただろ?野盗は生死問わずに捕まえたら報奨金が貰えるってさ」

「あぁ、お前が寝たふりしてた時な」

「もう、いいじゃん。その話はさぁ。それで爺ちゃんが言ってただろ?覚えてない」

「忘れてたなぁ。そういやそうだったな。それで首と死体を持ってきたのか?それでどうやって運ぶんだ?爺さんが荷馬車持って行ったから俺達が持って行くのか?」


チッチッチと指をふるタイガ。いつそんなことを覚えたんだろうか?


「コイツだよ。この首領って奴に運ばせるんだ。ほら、爺ちゃんから縄も貰ってるんだよねー」

「準備周到だな。まぁ、いい。それで死体の足首に括りつけよう。全部結んだら、コイツの腰にでも結わえればいいか?」

「そうだね。ただ、首は兄ちゃんが持ってよ。僕は嫌だからね」

「チッ、仕方ねぇなぁ」


野盗は首領を除いて十五人もいたようで、多くの死体には首がないものが多かった。

レオンは数体の首だけを髪の毛で器用に結び、ひとまとめにする。

タイガはすでに十五体の死体の足首に縄を括り終わっており、首領の腰に括り付け終えた所だった。


「さぁ、行こう。途中で爺ちゃんにも会えるだろうね」

「あぁ、そうだな」


レオンは数体の首をひょいと肩に担ぎ前を進む。

タイガは首領を挟んで殿をつとめているのだが……


「ねぇ、首領さんってばぁ。もうちょっと早く歩いてくれないかなぁ。日が暮れちゃうよ」

「う、うるさいっ!だ、黙れ!お、重いから仕方ないだろうがっ!」


タイガはスルッと首領の横に立ち、首に手を回す。

「ねぇ、文句を言う口はいらないよねぇ。アンタが言う半端者って呼ぶ獣人と同じように口を耳まで裂いてあげようか?それとも、目ん玉をくりぬこうか?」


ゾロリと鉤爪を首領の目の前に伸ばしてから、頬をひと撫ぜしてやった。

ツツッーと頬から一筋の血が滲みはじめる。


「わ、わかった。は、運ぶから……。や、やめてくれ……」

「最初からそう言いなよぉ」


首領は震える足で一歩、また一歩と歩き始めたのだが、十五体の死体を引きずるのだから、なかなか進むことができないが、それでもタイガが恐くて言い出すことができなかった。



「おっ、爺さんが戻って来たみたいだな。それに馬のひづめの音も複数聞こえるってことは、騎士を連れてきたのかね?」

「そうだね。数で言えば十頭くらいの馬の音だと思うね」


そう言っていると騎乗した騎士がタイガの言った様に十人現れたのだった。

後ろから荷馬車で戻ってきたインバ。



馬から降り立ち、レオンとタイガの前へと立ちふさがった。

(敵か?)

(こいつらが変な動きをしたら殺すしかないよね)


「君たちが奴らを討伐してくれたのだろうか?」


(あれ?意外と紳士的だな)


「あぁ、こいつらなら全員、俺達が倒したぜ。ただ爺さんに言われたように一人だけは生かしておいたがな」

「そうか。君たちの勇気に感謝する。ありがとう」


騎士は二人に深く頭を下げたのだった。

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