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百獣の王と密林の覇者、異世界で獣人解放の旗を掲げる~誤召喚された俺たちが、奴隷以下の同胞を救って建国する話~  作者: スフィーダ


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第29話 拉出

プリムローズが玉座の間での件を報告の為に外へと出て行った。

すぐに多くの騎士が城内に入って来る。

彼らは城内の隅々まで誰かがいないかの確認をすることになった。


もし見つかった場合は、誰であっても捕虜として捕らえられる。

また、貴重品のある部屋には火事場泥棒がいないように立哨をたてている。

宝物庫には大勢の騎士が扉前で特に注意を払うようだった。




「この先に熱源があるんだけどなぁ」

「でも、兄ちゃん、ここって壁だよ」

「そうだよな。うーん、スキルでは壁の奥を指してるんだが」


「壊しちゃえばいいじゃないですか?」

「ここを?」

「はい」


エルシュオン・フリージア女王がサラリと『壊せ』と言う。


「そうだよな。んじゃ、「待った、待った!」。なに?グスタフ」

「何じゃありませんぜ。旦那の剛腕で壊したら、中の誰かもミンチになっちまいます」

「あっ、そう?」

「俺がやるよ。旦那たちは下がっててくれ。フンッ!」


ドガッ


壁はグスタフの一撃でもろくも崩れ、大きな穴が空く。

中を覗くと鉄で出来た頑丈な扉が見える。それどころか部屋中が鋼鉄製のようである。


「グスタフ、壊して」

「これを?この鋼鉄の扉を?」

「そう、さっきみたいに殴って」

「タイガさんよぉ、無茶言うんじゃねぇよ」

「ハハハ、冗談、冗談」


「兄ちゃん、壊せる?」

「やってみるか。ちょっと全員、俺から思いっきり離れてくれ。危ないからな」


レオンは玉座の間の入り口まで後退し、全員が、スススッとレオンから距離をとり壁際に貼りつくように避難する。

それを確認した後、クラウチングスタートの姿勢を行う。



「んじゃ、『バーニングチャージ(業火の突進)』」


その姿勢のままスキルを唱えると、レオンの全身を炎のオーラで包み込まれる。

「行くぞっ!」


地をおもいっきり蹴りつけ、猛ダッシュで玉座の間の奥の小部屋へと走って行く。

バーニングチャージは突進のスキルであり、突進の速度と質量を爆発的に増幅される。その突進は、城壁や岩石をも砕くほどの破壊力を持っている。


ダダダダダダダダダ、ドカーン。


「おーい、開いたぞー」


タイガ達が行くと、小部屋は熱気で入ることができない。

鋼鉄製の扉もだが、壁も全部ドロドロに溶け、溶けた鉄が床に溜まっている。


「アチチチ、熱っ、こんなとこに入れないよ」

「そうか?」


タイガですら熱いと言うところに、みなは入ることなどできない。


「フリージア女王さん、冷やしてくれる?」


フリージアは、口に手を添え、ふぅ~と冷気を吹き出すと室内の温度が下がり、全員が入れるようになる。


「ふぅ~、やっと入れたよ。あのままじゃ、僕だって火傷するよね」

「根性ねぇなぁ~」

「「「「いや、いや、いや、いや」」」」


レオンの言葉には、フリージアまでもが手を振って、無理だと言う。


ガンッと扉を蹴ると簡単にバラバラになる。

その奥は長い廊下があり、扉が見える。


「まだ続くのかよ」


ウンザリしながら熱源のある方向へ進むしかない。


今度は鋼鉄製ではないが、扉にはがっちりと鍵がかかっているようで開かない。

今度はグスタフが蹴り破る。

中は結構な広さがある部屋だった。



バンッと開いた扉の先に騎士が五人と豪華な服を着た男女と小さい子供。

騎士達は剣を構え、後ろの男女を守るように立っている。


「|ガルルッ、グルルルルルル《アンナさん、頼んだよ》」

「任せろ」


タイガの低い唸り声は『ランブル』と言われ、仲間内の通信用によく使われている。

今回はレオンに向けてはなく、アンナに向けて発したものだった。


「『ミスト・オブ・アニマ(魂の霧)』」


部屋全体を真っ黒の霧で満たされていく。

あっと言う間に部屋の中は何も見えなくなってしまったが、タイガが仲間と認識している対象者には影響がない。


「な、なんだ?見えん、見えんぞ!おい、騎士よ、何とかいたせ」

「陛下、そう申されましても。剣を振るえば同士討ちとなります」

「うるさいっ、うるさいっ!貴様、余の命に逆らうか!?」


足音がタイガの所に戻って来た。


「タイガ、もういいよ。アタシは外に連れて行くから」

「アンナさん、ありがとう。じゃ、解除するよ」


サッと霧が晴れると部屋に女性と子供はいなくなっていた。


「おい、お前達、何をしとるのだ。さっさと、奴らを殺せ!獣臭くて堪らん!」


襲って来る騎士はレオン達の敵ではない。

アッサリと殲滅してしまう。


陛下と呼ばれた男の前に死に絶えた騎士達。

それを憎々し気に睨みつけている。


「クソの役にも立たん奴らめ」


ペッ!


死体に唾を吐きかけ、レオン達を睨みつける。



「おい、おまえが王のヴォルク・ヘイトリード・シルヴァンで間違いないな?」

「フンッ!お前のような半端者が余の名を呼ぶでない!汚らわしい!」


シルヴァン王は、レオン達から目を逸らさずに、手を横の方へ伸ばし、何かを手繰り寄せるような動きをする。

横を向き、今度はレオン達のほうへと目を向けた。


「お、おい、余の妃と子はどこにやった?半端者、どこにやったのだぁー」

「あぁ、あれ妃と王子だったんだね。だってさぁ、あんな小さい子に殺人なんて見せられないだろ?だから別の場所に移動させたってわけ」


小さい子の前で騎士達を殺すのが躊躇われたタイガはアンナへ二人を逃がすようにと伝えていたのだった。


「感謝してよね。あぁ、僕って優しいだろ?アンタも親だから、子供には人死にを見せたくないだろ?」

「よ、余計な真似を!」

「はぁ?」

「余計な真似だと言ったのだ。奴らがいないと……」

「なんだ?」


「あいつらは余の肉壁にするつもりであったのに……。それを貴様、余計な真似をしおって」

「クズはどこまでもクズってのがわかったよ。教えてくれて感謝するよ」

「フンッ、半端者が人の気持ちを語るか……。笑わせる」



タイガがその言葉に珍しく怒りを滲ませ、一歩前に出ようとするのをレオンが手で制する。


「グスタフ、連れて行け」

「承知」


グスタフがシルヴァン国の王を殴り倒し、気絶させてから首根っこを掴んで引きずっていった。


レオンとタイガが殿をつとめ、全員で玉座の間から出る。

城内はレオン軍と連合軍の騎士達が動き回っていた。

聞けば、城内の騎士は勿論の事、使用人やメイドもすべて捕縛対象として探し回っていると言う。



外に出ると待機騎士達の全員から拍手で出迎えてもらえた。

それに手を振って返す二人。



「報告いたします」

「ロイヤルか。なんだ?」

「はっ、当国の王、ヴォルク・ヘイトリード・シルヴァン。妃、マチルド・ヘイトリード・シルヴァン。王子、グレゴリー・ヘイトリード・シルヴァン。宰相、ニコラス・ハーミテージ。以上、四名は警戒を最大限にして捕縛しております。また、残騎士数名も同様に捕縛しております。王城の貴重品、宝物庫にはわが軍の重装部隊を警備の為に立哨させております」

「ご苦労。この国の住民は?」

「すでに一か所に集まるようにと指示しております。ウィンザー王国、サハラド王国の騎士達が担当してくださっております」

「殺してはいないよな?」

「はい。但し、騎士に襲い掛かる者は切り捨てても良いと、両陛下が命令しておりますが」

「わかった」



王城内に探索に出ていた騎士から、王城内は安全だと報告を聞く。

そのまま、各部隊長と各国元首とともに閣議の間へと入る。


騎士達が全員にお茶を用意してくれていた。


「さて、レオン様。この度は、シルヴァン神国の制圧、誠におめでとうございます」

「よしてくれよ。俺達だけじゃないだろ。全世界の国々との連合で倒せたんだ。決して、俺とタイガだけじゃ無理だったよ」


ウィンザー王より祝いの言葉を貰うのを、即座に否定する。


「私からもよろしいか?」

「サハラド王、なんだ?」

「うむ。憎きシルヴァン神国を打倒せたのは、レオン様が切っ掛けでございましょうぞ。あなたと弟君のタイガ様、このお二方が誤召喚された。それが切っ掛けではございませんか?」

「確かにそうだが」

「我らもレオン様の『獣人解放』のお題目がなければ、このように全世界の国々が集まったとは思えません。我らが如何ほどに、この国に蹂躙され、農地は干上がらされ、民も悪戯に殺されたのです。憎い憎いと思えど、”勇者”が怖い。いえ、怖かったのです」


サハラド王の言葉は、全世界共通で被害にあっていたようで、閣議の間にいる全元首達も深く頷いている。

エルダー女王国の女王も昔を思い出したのが、ソッと涙を拭っていたようだった。

ただ、一か国だけは被害が軽微であったと言う。

それは、フリージア国である。


女王のエルシュオン・フリージア得意とする氷晶魔法のひとつであるアイリスカレイド(氷晶万華鏡)を使って侵入を阻止したそうだ。

これは、空中に浮かぶ無数の氷晶が光を屈折させ、国全体を蜃気楼で覆って隠すものであり、外からは何も無いように見えると話す。

なぜ、このタイミングで話したのかと聞けば、国家機密だからとのことであった。



「そろそろ、この国の扱いと資産を分配する話し合いをしようか」

タイガがレオンの横に立ち、各国元首の顔を見渡しながら会議を進めようとしたのだが。


「「「「我らは不要。この国、資産、すべてはレオン様の物にして頂きたい!」」」」

「「へっ??」」


レオン、タイガ、二人共が間の抜けた返事をしてしまったのだった。

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