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百獣の王と密林の覇者、異世界で獣人解放の旗を掲げる~誤召喚された俺たちが、奴隷以下の同胞を救って建国する話~  作者: スフィーダ


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第28話 人形

「見れば見るほどデカいなぁ〜」


シルヴァン神国の象徴とも言える白亜の巨大な城を見上げる兄弟。

朝日に反射してキラキラと輝いて見える。


「こんな金があるんなら、勇者なんか呼んで他国を攻める必要なんて無ぇだろうがよ」

「兄ちゃん、わかって無いねぇ」

「何がだよっ」

「こんな立派な城を建ててるんだよ。金が足りなくなったから襲ったんだと思うけどね」

「そんなもんかね」

「そんなもんだよ」



昨日は王城前の広場で野営となった。

各国からは危険だと止められたが、それでも疲れていたんだろう。

レオン軍の皆が野営準備に取り掛かると、王城前に集まっていた騎士達も野営準備を始めたのだった。

最初は緊張し、警戒していた彼らだったが食事をして人心地ついた後は、めいめいに横になり始めたのだった。


ここを野営地にしようと提案したのはタイガである。

敵国の重要拠点である王城の前で野営を行う事を意味するのは、『我らは貴様らなど恐るるに足りず』と意思表示をするのが目的であった。

実際、王城にいる王や宰相、騎士達にとって、これ以上の侮辱はなかった。

玉座に座り歯噛みしてイライラとしていたと、後に捕縛された宰相から聞いた話である。



「よーし、行くかぁー」


相変わらず、緊張感のないタイガの呼びかけで全軍が行動を開始する。


先頭を行くのはレオンとタイガ。アンナとグスタフ。その後ろには、各国の精鋭達が続く。そして二人と仲が良いプリムローズである。

王城内に全軍が入っても無駄だとして、少数精鋭で入ることになった。

残った兵士たちは残党狩りと、魔獣の対応をすることになった。



「待て!」


横から声がしたので、そちらを向く。

明らかに上等そうな騎士服を着て、綺麗な剣を構えている男が数人。


「おい、半端者が王城に…………、グワァ」

話の途中でレオンが騎士の腹を拳で突き破った。


「半端者って言うんじゃねぇよ」

「兄ちゃん、それもう死んでるから」

「ふんっ」


拳を振って血を振り払い、他の騎士をギロリと睨みつける。

その姿を見た騎士達は、動くことが出来なくなっている。蛇に睨まれた蛙状態である。


「来るのか?来ないのか?」


クイッ、クイッと手招きをすると、果敢にも数名の騎士がレオンの方ではなく、アンナへと向かっていった。

剣を振り上げアンナの頭上から振り下ろすのだが、そこには誰もいない。

キョロキョロしている騎士の頭上から脳天へとダガーを突き立て、他の騎士にも頸動脈を掻き切った。


「女だからって舐めんじゃねぇよ。バカがよぉ」

「おい、アンナ!俺の分を取るなよな」

「グスタフのおっちゃん、早い者勝ちだよぉ〜だ」

「クッソー」


そこからはアンナとグスタフが暴れ回る。

あっという間に二十人の騎士を倒してしまった。


「二人ともやりすぎだよぉ。王さんの居場所を聞きたかったのにさぁ」

「「タイガ、ゴメン」」


腰に手を当てて二人を叱ってる横でレオンが

「まぁ、怒るなタイガ。『ヒートセンス(熱源感知)』。うん、まだ何人かいるなぁ」

「兄ちゃん、そのスキル何?僕、知らないんだけど」

「あれ?言ってなかったか。これはな、炎の魔力で周囲の生命体の熱を感知して、隠れた敵を見つけ出すやつだ。エルダー女王国のダンジョンで使ってただろ?」

「あれはね!兄ちゃんがひとりで奥まで行って全部終わらせたんだよ!知ってる訳ないだろ!」

「あぁ、そっか。まぁ、いいじゃないか。それでな、このご立派な階段の先に数人。その奥に部屋があるのかな?何人かいるようだぞ」


全員で階段を登ると大きな両開きの扉がある。レオンが言うにはこの先に五人がいるとの事である。


「あの、レオン様。今度は我らにお譲り頂けないでしょうか?」

「ん?別に構わんが?王の首を獲りたいのか?」

「いえ、違います。レオン様、タイガ様、アンナ殿、グスタフ殿のご活躍により我らは何もお手伝いが出来ておりませぬ。何卒、お願いしたいのです」


サハラド王国の騎士、ウィンザー王国の騎士、フリージア国の騎士とプリムローズの四人が頭を下げて頼むのを了承する。


「では、開けます」


扉が静かに開けられる。

四人がバッと飛び込み中へ入ると玉座には誰も座っていないが、周りには数名の騎士と老人が立っている。


「来たか……半端者が」

老人が小さく呟いたのがレオンとタイガの耳に入る。


「宰相、王はどこだ!?」

プリムローズが宰相と呼びかけたのは、玉座の近くにいた老人の様だった。

「さてな、私は知らんよ」

「――クッ」

「プリムローズ、心配するな。その奥にいるのは確実だ」


「な、なぜそれを……。おい、お前達、何をしておるのだ!奴ら片付けんか!」

「「「はっ!」」」

騎士が一斉に向かってくるのだが、

「ちょっと待ってくれるかな?」

「ほぉ、命乞いかね?半端者は臆病風に吹かれたと見えるのぉ」

「ジジイは黙っててくれるかな?口が臭いから、嗅覚に優れた僕たちにはキツイからね。あぁ、それがアンタの攻撃かい?」

「な、何を!ヤレ!半端者を殺せ」


再び、襲ってくるのを、プリムローズ達が切り捨てる。

レオンとタイガ、グスタフは黙って手を出さない。



「おい、魔鉱石術師、アレを動かせ!早くせぬか!」

「は、は、はい。只今、すぐに」


魔鉱石術師と呼ばれた男は懐から杖を取り出し、口をモゴモゴさせていると思った時には、玉座の間の壁がゆらりと動くと巨大なゴーレムが現れた。


「ハハハハハ、驚いたであろう?我が国の魔鉱石にはな、こんな使い方もあるのだよ。術師、奴らを殺せ!」

「はっ!」


ゴーレムは玉座の間の天井付近までの高さがある。十メートルはありそうな巨体である。

額には紅く輝く石が嵌められている。


ズシン、ズシンと近づいてくるゴーレム。


「アンナ、術師を殺せ。グスタフはプリムローズ達の援護だ」

「わかった」

「承知」



「タイガ、あれを相手するのは疲れそうだぞ」

「同感」

「「ホロウマイン(虚ろな地雷)」」


タイガが床に炎の魔法陣の幻影を描く。

丁度、床に魔法陣が浮かび上がった時に、ゴーレムが踏む。

その瞬間、レオンの魔力で本物の爆炎が発生した。

一瞬で燃え上がるゴーレム。


炎で姿は見えない。

ようやく魔法の効果が切れ、爆炎がおさまって姿を現したゴーレムは、どこも破壊されておらず、二人に向かって足を止めない。


「クソっ」

「ダメか」


クイーンズサイ(女王のため息)


ヒュォォォォー


二人の頬を冷気が横を通り過ぎていく。


「「えっ?」」

振り向くと、そこにいたのは、フリージア国のエルシュオン・フリージア女王。


「ウフフ、来ちゃいました」

ペロッと舌を出し、ウィンクまでしている。


「「な、なんで?」」

「だって、退屈だったんですもの」

「「……『ですもの』って……』



ビキビキビキビキ


二人の後ろから唱えられたスキルにより、正面のゴーレムがダイヤモンドダストの彫像へと変化する。


バキっ、バキバキバキバキバキ

ガラガラガラガラ


さっきまで業火に燃やされたゴーレムは一気に冷やされ、頑丈な身体も脆くなる。

そこに存在していたゴーレムは瓦礫となっていたのだった。



「こっちは終わりました」

プリムローズが声をかけてくるまで、レオンもタイガも呆けてしまっていた。


護衛騎士も全員がプリムローズ達によって斬り殺され、床には一面の血が玉座の間を汚していた。

ふと術師を見ると、首を掻き切られて絶命している。


「なぁ、宰相さんよ。諦めな。後ろの小部屋にいるんだろ?王様がさぁ」

「こ、この役立たずどもがぁー。もう良いわ、我が手で半端者を退治してやる」


ガンッ


襲ってくる宰相の後ろに回り込んだグスタフが、剣の柄頭で後頭部を殴りつけ気絶させる。


「あらぁー、アレは痛いわよねぇ〜」


ひとり場にそぐわない言葉を発している女王フリージアだった。

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