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百獣の王と密林の覇者、異世界で獣人解放の旗を掲げる~誤召喚された俺たちが、奴隷以下の同胞を救って建国する話~  作者: スフィーダ


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第27話 接敵

レオンは農奴が向かって来る正面に仁王立ちで待ち構える。

その姿でスキルを使うのだと判断した騎士、兵士たちはレオンの後方へと隊列を変更するのだった。


一歩、また一歩と城門に歩いて行く。


向こうの方からは隊列を組んで一糸乱れぬ農奴が向かって来る。

報告通り、首には金属の首輪が嵌められている。


農奴の隊列が城門を越えた時、レオンはスキルの準備を行った。


「仕方がないと割り切るのは難しいのだが。『バースト・ストンプ(爆炎の踏破)』」


バースト・ストンプを唱え、ドンッと地面を強く踏みつける。

踏みつけた前方に向かって炎の衝撃波が発生し、農奴たちはバタバタと倒れてしまう。


レオンは大きく息を吸い込む。

「『パーガトリー・ロア(煉獄の咆哮)』。グゥォォォォォー」


エルダー女王国のダンジョン破壊にも使ったスキルのパーガトリー・ロア。

炎を束ねたブレスを吐き出し、遠距離の敵を焼き尽くしていく。


「次はこれだ。『|レイン・オブ・ファイア《業火の雨》』」


スキルを唱えると、空中から敵集団に向けて、炎の塊が降り注ぐ。



大半がレオンのスキルで死に絶えたようだが、それでも向かってくる敵は多い。

レオンはパッと後ろを振り向き、全軍が自分よりかなり後方で待機しているのを確認する。


「よし、大丈夫そうだな。『|ヒート・ヴォルテックス《炎熱渦巻》』」

レオンは、自身の身体を高速で回転させると、炎が竜巻のように巻き上げて周囲の敵を吹き飛ばしていく。


レオンのスキルにより、三分の一程度の農奴は倒せたようだが、まだ多く残っている。




「全軍!突撃―!」


ウォーーーーー


レオンの声で全軍が一斉に農奴へと襲い掛かる。

確実に頭を潰さない限りは、這ってでも攻撃をしてくる農奴たち。


殺すのが躊躇われるのだが、戦時下においては仕方がない。

殺さなければ、自分が殺されるからである。



王都城門前は、自軍敵軍が入り乱れての乱戦状態になっている。

農奴に混じって騎士や兵士、衛兵もいるようだった。

恐らく農奴の後方で待機していた連中のようだった。



「レオン軍に告ぐ!各自、好きなように暴れろぉぉー」

「「「「「承知!!!」」」」」


レオンは自分の配下には好きに動くようにと命令をする。

その方が、獣人本来の能力がいかんなく発揮されると思ったからだった。



ウィンザー国は右方面から王都へと進軍して行く。

サハラド王国は左方面から入って行った。


中央突破はレオン軍の重装部隊と歩兵部隊である。

レオンとタイガの横を走り抜けていった。



「さて、僕も働こうかね。『|ディープ・イリュージョン《深淵の幻影》』っと。ほーら、同士討ちが始まったよ」

「なぁ、タイガ。お前のスキルってえげつないな」

「兄ちゃんには言われたくないよ」


タイガのスキルで、敵は極めてリアルな幻覚を見えているようで、精神的に追い詰められた農奴や兵士たちは同士討ちを始めてしまった。



あらかた五十万以上もいた農奴たちは城門前とその近辺に倒れている。

血の匂いが濃厚で、その匂いでむせかえる。

若い兵士は、その凄惨な状況を見て吐いている者もいる。

また、青い顔をした兵士も多くいるようだった。


そのような兵士たちは後方の医療部隊へとさがらせる。

戦意喪失した兵士は、死にやすいからである。


そう言った兵士の多くは、別に懲罰を受けることはない。

ないのだが、軍部に戻る事は出来ない可能性がある。

もしくは再教育になるだろう。

地獄と言う名の再教育である。


レオン配下の兵士は、誰もそのようになった兵士はいない。

それは、グスタフの指導が厳しいことを理解しているからである。



「ふぅ、だいぶん片付いたようだな」

「いや、どうだろうね。確認するよ。『タイガース・アイ(虎の慧眼)』。うーん、現状は僕たちが有利だけど、なんか隠し玉がありそうなんだよな」



タイガのスキルであるタイガース・アイ。これは知覚と思考を加速させ、戦況の未来を予測する軍師の眼を指すものである。

そのスキルで見た未来の景色では、農奴以上の強い敵が現れるのが見えた。

ただ、ハッキリとした姿までは見えない。


「ちょっと、ヤバいかも……。一度、全軍を戻した方がいいかもね」

「そうか、じゃあ全軍に……」


「緊急につき、失礼いたします!斥候ロイヤル、戻りました!敵の先遣隊、すぐそこまで迫っております!」

「農奴か?」

「いえ、大型魔獣です。その数、多数!」

「魔獣だと!?数は不明なのか?」

「はい、早すぎて数えるのが困難です」

「接敵までの時間は?」

「間もなくです」



「全軍に告ぐ!大型魔獣接近中!各自、警戒せよ!」


拡声魔道具を使い大声で呼びかけると、ロイヤルが言う通り、地響きを建てて多くの大型魔獣、そして魔物が向かって来る。


特に水陸両用の魔物が多いようで、”|アイアン・クロコダイル《鋼鉄鱗のワニ》”、”|トレビュシェット・トード《大投石蛙》”、”スチーム・クラブ(熱気蟹)”、”シェル・ブレイカー(要塞蟹)”などなど。



あちこちで大型魔獣が暴れまわっている。


「レオン!」

「アンナか?戦況は?」

「ちょっと、不味いよ。今は重装部隊が抑え込んでるけど、ちょっと厳しいかも」

「一度、撤退させるべきか?タイガ、どう思う」

「そうしよう!」


拡声魔道具を手に持ち、大声で全軍に撤退命令を出す。

重装部隊が殿を務め、各国連合軍も撤退してくるがケガを負っている兵士が多い。

すぐに後方の医療部隊へと送る。



「このままじゃ、ジリ貧だな。タイガっ!行くぞ!」

「その言葉、待ってたよ!行こう!」


大型魔獣はレオンとタイガ二人のみで対処すると、飛行部隊を通じて伝令を頼む。


王城付近まで全軍が迫っていたのだが、城門前まで押し返されてしまったようだった。

魔獣に向かい走っている途中でも、連合軍の兵士の死体も転がっているのを見かける。


「レオン様、よろしいですか」

「なんだ?ロイヤル、下がってろ!」

「いえ、お伝えすべきことだけ話させてください。あの魔獣たちの身体には、魔鉱石が埋め込まれている様です。どうやら隷属の首輪と同様かと」

「わかった。よく知らせてくれた。退避していいぞ」

「はっ!ご武運を!」



二人が最初に出会ったのは、”|アイアン・クロコダイル《鋼鉄鱗のワニ》”。確かに目の上には赤い魔鉱石が埋められているのが見てとれる。



「行くぞ、タイガ」

「おおっ!」

「「コロナ・アロー(漆黒の火矢)」」


レオンの炎をタイガの闇の魔力で包み、超高速で直線的な貫通弾として放つ。

アイアン・クロコダイルの頭から尻尾までも、一瞬で貫通し焼きつくされた。

同じスキルで数頭の敵を葬り去る。


「連携技の練習しといてよかったな」

「そうだね。っと、来るよ!」


トレビュシェット・トードが群れをなして、二人に石つぶてや水流をぶつけて来る。

それを、ヒョイヒョイと避けながら、次の連携技の準備を行う。


「タイガ、アレをするぞ」

「オッケー」

「「フレイム・ケイジ(炎の影牢)」」


タイガが作り出した闇の空間の縁をレオンの炎で強化し、敵を閉じ込めてしまった。


レオンは、その空間の中へと入って行く。


「「さて、身動きできないだろう。『ソウルピラー(魂の火柱)』。燃え尽きろ!」


このスキルはレオンの奥義のひとつである。

レオンの足元から巨大な炎の柱を立ち昇る。

広範囲の敵を巻き込む奥義。

フレイム・ケイジの中に閉じ込められたトレビュシェット・トードは、一気に燃え上がる。

断末魔の泣き声を上げながら、ジュウジュウと身体が燃える嫌な匂いが周囲に漂い始めた。


それを見てから、死んだことも確認せずに外に出て来る。


「カエルの次は、カニか。おう、おう、色んな蟹がいるもんだ」

「じゃあ、アレを使おうか」

「そうだな」

「「シャドウニードル(影縫いの烈火)」」


数百匹の”スチーム・クラブ(熱気蟹)”、”シェル・ブレイカー(要塞蟹)”に対してスキルを発動させる。

二種類の蟹の魔物の弱点をタイガが見抜き、そこを狙って精密に影の糸で縫い止める。

動きを止めた瞬間に、レオンの炎をその糸を通して内部から送り込まれていく。


蟹の内部に送り込まれた煉獄の炎は、身体の内側を焼いていく。

ブクブクと泡を吹きながら、燃やし尽くされて死んでしまった。


「なんか腹の減る匂いだな」

「あー、本当だねー。食べられるのかな?」

「ノンキなことを言ってる場合じゃねえぞ。ほら、次のお客さんだ」


次から次へと来る魔獣を作業の様に連携技で倒してまわる。

後方からは全軍がついてきている。


まだ隠れている騎士や兵士は見つかり次第、アンナが率いる特殊部隊が息の根を止めているようだった。

レオンやタイガのところまで、アンナの声と断末魔の声が聞こえてきたからだった。



「さて、さて、敵の本拠地まで押し返せたな」

「一旦、ここで全軍集合させよう」



全軍を王城前の広場に集める。

警戒の目は緩めないが、一度、交代で食事をとることにする。



「なぁ、兄ちゃん」

「なんだ?」

「さっきの蟹って、食べられるのかな?」

「知らねぇよ!」


さっきまで恐ろしい大型魔獣を倒して来たと言うのに、いつも通りの兄弟の会話を聞く自軍や他国の兵士たちは、声もだすこともできなかった。


なぜ、そんなに()()なんだ。


その言葉が二人以外の全兵士の頭によぎったのだった。

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