第25話 宣戦
「タイガ殿、申し訳ありませんが、我らにも分かるように説明をして頂けないだろうか?」
「いいよ。奴らが使ったのはね、魔法やスキルじゃないみたいなんだよ。物がないから説明が難しんだけど」
タイガが説明するのは、地球でも使われる『テレプレゼンス』のことである。
テレプレゼンスとは、『テレ』と『プレゼンス』を組み合わせた造語である。
よくあるビデオ通話よりも、そこにいる感じを伝えることに特化しているものである。
「つまり、自国で集めている兵士たちの姿を、このロアザナトスの近くで投影してるってことなんだよ。さっき諜報部隊のロイヤルが話してただろ?『飛行部隊が見た百万の兵士の装備はバラバラで、且つ、かなり使い込まれた古めかしい物』だって。それに『恐らく徴兵された農民や住民達では無いか』とも言ってたよね。だから、総合的に考えると、シルヴァン神国はまともな兵士がいないんじゃないかな」
ようやく納得できたようなレオンと元首達。
「では、作戦の詳細を詰めようか」
レオンが声を掛けた時、会議室のドアが乱暴に開け放たれた。
「あっ!ゴメン。会議中だったんだ……」
「アンナ、どうした?そんなに慌てて」
「えっと……」
「大丈夫だ。ここにいるのは全員が同じ思いだ。報告があるなら言ってくれ」
「わかった」
「ちょっと気分の悪い物を見ちゃったんだ。男は兵士に、女に子供は別の場所へ運ばれてるようだって報告しただろ。その連れて行かれた場所を見つけたから、行って来たんだけど……」
アンナは口を開きかけては、止めを繰り返した後、何かを決意したように話始めた。
「城の近くにある広場なんだけど。そこに大勢の女と子供が詰め込まれてたんだ。地面には魔法陣が描かれてたよ。全員の首には隷属の首輪を嵌められてたんだ。するとさ、黒いフードを被った奴らが魔法陣の周りに立ったんだ」
「それで?」
「うん。フードの奴らが祈り始めたんだけど。言葉は『イオニアス創造神様へ贄を捧げましょう。どうか、我らに異世界からの勇者をお与えください』と。それから……」
アンナは苦し気に顔を歪ませ始めた。
「アンナ、言いにくいのか?」
「いや、言うよ。それがアタシの役目なんだから。ふぅ、それから魔法陣の中に入れられていた人たちは順々に首を……、刎ねられてたよ」
「「「「「――なっ!」」」」」
「レオン、あんたから召喚魔法が禁忌指定したってのは聞いてるよ。でも、あいつらは知らないんだ。だから、みんな殺されちゃったんだよぉー。なぁ!なんで世界に言わなかった!なぁ!あの人達が殺されたのは、レオン、アンタにも責任があるんじゃないのかぁ!ウワァー」
アンナはレオンの胸倉を掴み前後に揺さぶりながら文句を言い、ワッっと胸に顔を押し当てて泣き始めた。
数分、そうしていたアンナだったが、顔を上げ恥ずかしそうに俯く。
「ゴメン、あんたが悪い筈はないのにね。仕方がなかったのかも知れないけど。でも、あの隷属の首輪を嵌められてた人達。なにも文句も言わずに目も虚ろで首を刎ねられてたんだ。子供なんて泣き叫ぶこともなかったよ。多分、千人は超えてた人達が殺されちゃった。殺されちゃったんだよぉ」
「それで召喚は?」
「なにもなかった。魔法陣が光ることもなかったよ。失敗だと言いながら、また別のところから同じくらいの人数が連れて来られて……。同じように……」
「そうか。わかった。アンナ、別室で休め」
「えっ、でも」
「命令だ。休んで来い。あぁ、アンナ、ご苦労だった。嫌な報告をさせてすまなかった」
「……うん」
アンナが部屋を出てから、元首達は沈痛な面持ちになっているのだが、レオンは唇を噛んで、怒りを我慢している。口の端からは血が滴り落ちているほどに。
「……外道がっ!」
その声で元首達がレオンの方へと顔を向ける。
「連合国の元首達。我らロアザナトスは、明日、全軍を持ってシルヴァン神国へと進軍する。国境にて宣戦布告を行うものとする!」
「我らも参戦致しましょうぞ!」
「我が国も」
「我らも」
「「「「我ら、連合国一同は只今、この時よりレオン殿、いやレオン様の配下として参戦致しましょう!」」」」
「このレオン、ロアザナトスを代表して感謝申し上げる。では、連合軍の総大将は私が致しましょう。軍師として弟のタイガ。よろしいですか?」
全会一致でレオンとタイガの就任が認められたのだった。
翌早朝、日が昇る前に先頭を歩くのはレオン配下のロアザナトスの全軍。
その後ろには各国の軍隊が進軍して行く。
全軍の戦力は、約二百万である。
シルヴァン神国の国境へと到着。
ロアザナトスの重装部隊が国境の門を破壊していく。
重装部隊は獣人族でも一際大きく、皮膚も厚い獣人で構成されている。
ゾウ、サイ、カバ等の獣人族であり、その肉体は攻城兵器そのものである。
簡単に国境門を打ち破り、一路王都へと進んで行く。
道中の商人や徴兵を逃れた住民に対し、『進軍を邪魔する者には容赦しない!』と声をかけながら進んで行く。
野営を繰り返すこと三回。
ようやくシルヴァン神国の王都が見える所まで進んできた。
そのまま進軍のスピードは落とさずに真っ直ぐに王都へと向かう。
王都城門前で全軍は停止する。
レオンは全軍の前に立つ。
手にはウィンザー王国が開発したと言う魔鉱石をもとにした魔道具を手に持っている。
地球で言うところの拡声器である。
誰かが用意した台の上へと昇るレオン。
「シルヴァン神国の民、そして玉座にふんぞり返る王よ。我が声を聞け!」
王都城門前にレオンの声が大きく響き渡る。
「我らは、お前たちが『半端者』と呼び、泥を啜らせてきた者たちだ。お前たちは自分の白い手を汚さぬよう、同胞を鎖で繋いできた。また、奴隷として扱い、戦時には肉壁として利用してきた!お前達にはあたたかな血が流れてはおるまい。シルヴァン神国の傲慢なる冷血非道な者達よ。我ら『半端者』の言葉に耳を貸すがいい。お前たちの歴史は、血塗られた禁忌魔法の上に築かれた砂の城だ。かつてお前たちは、異世界より無垢な魂を呼び寄せ、『勇者』という名の殺戮兵器へと仕立て上げた。その忌まわしき魔法で、我が友の国々を蹂躙し、神の慈悲を語りながら略奪の限りを尽くした。我らは召喚魔法によって訪れた勇者に怯える事はない。我らの爪で、お前たちの偽りの国、そして教義を切り刻でやろう。王よ聞いているか!?貴様の胴体を切り裂き、首を刎ね、城門に掲げてやろう!」
レオンは、一度言葉を切り、そして再び口を開いた。
「お前たちがかつて世界に与えた絶望、そして我らが同胞の絶望を、今度は自分たちが味わうがいい。これよりは、裁きの時間だ]
後方の連合軍や自分たちの部隊も静かにレオンの口上を聞いている。
「我ら、これより全種族を以て、シルヴァン神国へ宣戦を布告する!」
オォー、オォー、オォー、オォー、オォー
ガンッ!ガンッ!ガンッ!
雄たけびを上げ、盾に剣を打ち付ける音が響いている。
連合軍全員の士気は、かつてないほどに高揚している。
レオンは右手を真っ直ぐ上空へと上げる。
「全軍!進め―!」
その手を振り下ろし、全軍に命令を下すのだった。
ウォォォォォォォォォーー
まず重装部隊が攻城兵器よろしく城門へと突進し、いとも容易く打ち破る。
別の場所でも、別班の重装部隊が壁に大穴を空けている様だった。
そこから一気に王都へとなだれ込む全兵士達。
逃げ惑う王都の住民達。
レオン達の反撃が始まったのである。
ブックマーク、評価をお願い致します。
レビュー、感想等もお待ちしております。
誤字、脱字等がありましたらご報告をお願い致します。




