第24話 援軍
昨夜の被害は住居が数棟焼け落ち、商店街も燃えてしまった。
シルヴァン神国へ通じる唯一の門も焼け落ちている。
死者は出なかったのだけが幸いであったが、逃げる際に大けがを負ったものも多くいると聞く。
レオンは各部隊長全員を会議室へ集める。
すぐに各部隊長が入室してくる。
「俺の堪忍袋の緒も切れた。絶対に許さん!」
「兄ちゃん、怒るのはわかるけど、ちょっと落ち着きなよ」
「なんだっ!?タイガ、お前は腹が立たんのか!?」
「そりゃ、僕だってムカついてるさ。でもね、ちょっと変なんだよ」
「変?」
「だってそうだろ?昨日、街を襲って来たのは千人。後方には百万の軍隊がいるって報告を聞いてるんだよ。そのまま進軍すればいいのに、何故か引き返しただろ。引き返したって言うか、姿が消えたんだけどね。僕は、それが気持ち悪い」
タイガが言う通り、確かにシルヴァン神国の軍隊の動きは謎がある。
全軍百万で街に突入し、蹂躙することも可能だった筈だ。
レオン率いるこの街の戦力は六万。
到底、勝てる見込みはない筈である。
「タイガの言う通り、確かにおかしいな」
「そうだろ?僕と特殊部隊で潜入してくるよ。アンナさんもいいよね?」
「いいぜ。アタシ達で調べようか」
「いや、それは待て」
「「??」」
「ロイヤル、アンナ、諜報部隊と特殊部隊で班を編成し、シルヴァン神国のすべてを調べ尽くせ!お前たちの情報収集能力と機動力に期待する」
「「はっ!承知致しました」」
「ヴォルペス、再度、補給部隊全隊員で手分けして糧食を集めよ!住民には気の毒だが、戦時であると納得してもらえ」
「はっ、お任せください」
「アヴィス!お前は飛行部隊全隊員で各国へ伝言を届けろ。いいか?一度しか言わんから覚えろ。『昨夜、ロアザナトスがシルヴァン神国により夜襲を受けた。連合国の助力を願う』。それを伝えに行かせろ!」
「はっ!すぐ行動いたしますっ!」
「ハゼル、昨日の怪我人たちの治療はどうなっている?」
「はい、我ら医療部隊で完治させております。ただ、焼け落ちた箇所に関してなのですが……」
「わかった。タスク、お前は重装部隊の隊員達で建築資材を集めさせろ。住民の中には大工もいる。彼らとともに急ぎ、焼け落ちた住居、門などを作らせろ!それと別班には見張り台を追加で作らせろ!」
「はっ!仰せの通りに」
「グスタフ、歩兵部隊を完全武装させてシルヴァン神国に通じる道のすべてに配置しろ。我が領地に足を踏み入れたなら迷わずに殺せ!捕縛の必要はない」
「承知した!」
「各自!気を抜くなっ!いつ、いかなる時間に奴らが来る可能性がある。いいな!よしっ!行動に移せ!」
「「「「「「はっ!」」」」」」
――――
飛行部隊が連合国のすべての王たちへとレオンの伝言を伝えると、当初の駐留部隊よりも多くの兵士を向かわせると言ってくれる。
エルダー女王国も同様だったが、女王より提案をレオンに急ぎ伝えるようにと言われてしまった。
飛行部隊の兵士が超高速でロアザナトスへと戻り、執務室へ入ると、都合よくレオンとタイガの二人がいてくれた。
「緊急報告であります!」
「うん、言ってくれ」
兵士は女王からの提案を二人に言うと、すぐに了承し、タイガを掴んで飛んで行った。
女王の提案は、以前にレオンやタイガ達が来てくれた方法。
つまり、タイガのスキルである『ヴォイドゲート』を使い、大量の物資や兵士を送る事は可能かとのことであった。
珍しくタイガも失念していたようで、その提案を聞いた時には少し悔しそうな顔をしていた。
――――
「はーい、入って、入って。……………………。うん、これで各国の兵士と物資が来たね。あぁぁ、疲れたぁ〜」
「タイガ、お疲れ。部屋で休んでくれ」
「あっ、兄ちゃん、いたのか。気づかなかったよ。ふぁぁ、眠い眠い。じゃ、お言葉に甘えて寝てくるよ」
館へと戻るタイガだったが……。
(どうせ、部屋で作戦でも練るんだろう)
レオンだけがタイガの行動を理解しているようだった。
口では『眠い』と言いながらも、目をギラギラとしていたからであり、小脇に地図を持っていたのを知っていたからである。
「レオン様、各国元首様方を会議室へとご案内致しました」
「ご苦労」
レオンが会議室へ入ると、前回一緒に戦ってくれたウィンザー王や、エルダー女王国の女王。そしてサハラド王国のガザン・アル・サハラド王。その他にも知った顔ぶれも揃っている。
「私は初めましてですね」
「あぁ、こちらこそ」
「私は大陸の端にある『氷晶の国』と呼ばれておりますフリージア国のエルシュオン・フリージアと申します。神の使徒様にお会い出来まして光栄でございます」
「いや、此度は参戦いただき、こちらこそ感謝申し上げる」
フリージア国は大陸一番北端にあり、レオン達が暮らすロアザナトスの南方とは真逆の位置に存在している。
フリージア国は、半分が凍っており、半分は温泉が噴き出る極北の国。
氷と蒸気が幻想的で、各国からの観光客で賑わっているのだと、後日聞くこととなった。
「さて、フリージア国女王にも申したのだが、再び、各国に集まって頂き、本当に感謝申し上げる」
「「「「「――なっ」」」」」
「おやめ下さいレオン殿。あなたは神の使徒様にあらせられる。我ら王とは言えど、あなたから見れば下々の民。どうか、頭を上げてください」
「ウィンザー王の言う通り!シルヴァン神国は、全世界共通の敵。今まで、何度『勇者』と呼ぶ者に国が蹂躙されてきたか。思い返すに腹立たしい。奴らはレオン殿達の敵ではござらぬ。我ら連合国共通の敵であるのです」
パチパチパチパチ
拍手をしながらタイガが入ってきた。
「ここまで全員の考えが一致してるんだから、怖いものなんてないね。さて、現段階で入手できてる情報を共有しようか」
壁に大きな紙を貼り付ける。
それはタイガ手書きの地図である。
各国にゲートを開く為に、アチコチに上空で移動した為に、地図を作成できたと言う。
本来であれば、地図は軍事上の機密事項である。各国ともに持っているだろうが、ここまで俯瞰で見た内容ではない。
各国元首達の生唾を飲む音が聞こえてきた。
「まずロアザナトスの位置から東にある半島がシルヴァン神国。かなり広大な領土だよね。今は、陸路で僕たちの国だけを狙ってるようだけどさ。もし、これがブラフで、本当は航海で他国に攻め入る可能性も十分あると思うんだけど。王様達はどう思う?」
最初に手を挙げたのはウィンザー王。
「その点は大丈夫でしょう。今まで海路で攻めてきた事はありません。それに我が国の諜報部からの報告では軍船は古く、また少ないと聞いております」
「私からもよろしくて?」
次に発言したのはフリージア国の女王。
「海の魔物は陸の魔物の比では無いくらい強く、恐ろしいものが多くおります。そちらの対処をしつつ、攻め入ってくるのは困難かと思われます」
「なるほど。それでも一部は万が一を考慮して沿岸沿いに配備した方がいいと思うね」
連合軍の中で海に面して、海軍を保有している国は手紙を自国へと送ることとなった。
その後、陸路主導での作戦会議始めようとした時。
ドンドンドン
「入れ」
レオンが入室許可の声を出すと、入ってきたのは諜報部隊長のロイヤル。
「会議の最中に申し訳ございません。急ぎ報告の必要ありと判断致しました内容でございます」
「言ってくれ」
「はっ、先日のシルヴァン国の百万の兵士が瞬時に消えた事につきまして、どうやら種がわかった次第です」
「種?」
「はい、奴らは魔鉱石を使用した魔道具の一種を使ったようです」
「ロイヤル、全員にわかりやすく説明してくれ」
「はっ、申し訳ございません。先ほど申し上げました魔道具は、別の場所や風景を遠く離れた場所へと投影された物だとわかりました。また、飛行部隊が見た百万の兵士の装備はバラバラで、且つ、かなり使い込まれた古めかしい物と聞いております。これは私の個人的な解釈となりますが、恐らく徴兵された農民や住民達では無いかと推察いたしました」
「なるほどね。それなら先日の違和感の理由がわかる気がするよ。ふーん、そっか……。なるほどねぇ〜」
ひとり納得しているタイガを不思議そうに見るレオンと元首達だった。
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