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百獣の王と密林の覇者、異世界で獣人解放の旗を掲げる~誤召喚された俺たちが、奴隷以下の同胞を救って建国する話~  作者: スフィーダ


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第22話 交渉

翌日の昼前に、騎士と豪華な服を着た貴族がやって来た。


元首全員集合で交渉人と話すのではなく、連合国としてはウィンザー王国のアズーラ・フォン・ウィンザー王、ウィンザー王国の次に広い領土を持つ砂塵の国と呼ばれるサハラド王国のガザン・アル・サハラド王。

そしてレオンとタイガの四名である。


「初めましてですな。私はシルヴァン神国の公爵位を持つ、バルタザール・ド・モンジャールである。交渉役として参った!」

「「「「…………」」」」

「なぜ、黙るのか?挨拶すらできぬのであろうか?」


「おい、貴様、さっきからその態度はなんだっ!?おいっ!返答次第では、その汚い首を切り落としてやろうか!」


サハラド王がモンジャール公爵の胸倉を掴み、机越しに前後に揺さぶる。


「や、や、やめろっ!や、やめてくれ。わ、わかった謝る!」

「次に舐めた口を叩いてみろ。即、殺すからな!」

「わ、わかった。それで休戦交渉なのだが……。なぜ、ここに『半端者』がいるのか教えて貰おうか」


その言葉にレオンとタイガの空気が変わるのをウィンザー王とサハラド王だけが気づく。


「公爵よ。一度だけ言っておくぞ。いいか?次に彼らの事を『半端者』と呼んだ瞬間に、連合軍全百万の総力を持って、シルヴァン神国を滅ぼす!これは冗談ではない!我が右手を上げ、シルヴァン神国へ向けて振り下ろした時、貴様らの国の生きとし生きる者はすべて死に絶えるであろう。よいか?気を付けて発言するのだな」

「――なっ。わ、わかったのである」



交渉の材料として、捕虜となった三万の兵士を率いていた隊長クラス五人を連れてくる。


「い、嫌だぁぁぁー。国に帰るのは嫌だぁ!」

「お、お助けを!何卒、私を御国に亡命させてください」

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」


泣き叫びながらの隊長たちを連れて来るのだが、様子がおかしい。

それでも捕虜は返さなくてはならない。ましてや亡命などさせる訳にはいかない。


公爵の前へと連れて来られても、まだ『嫌だ、帰りたくない』と騒ぎ立てる。


「ふんっ、このシルヴァン神国の恥さらしがっ!貴様らの首は国に帰るまでだ。一族郎党、すべて処するからな。覚悟しておけっ!おい、こやつらを連れて行け」

「はっ!」

公爵に同行していた騎士に命じると、隊長クラス達全員をどこかへと連れて行った。


国に帰れば家族全員が死罪になるのがわかっていたのだろう。

だから、あんなにも泣き叫んでいたのだろうとレオン達も思うのだった。


しかし、捕虜は返す条約がある。

その代りに優位な交渉ができると言うものだった。


「さて、公爵よ。そちらの賠償としては、緩衝地帯の全面放棄でよかったな?あとは、シルヴァン神国の全資産の半分を賠償金として支払うと聞いているが?あとは魔鉱石が産出される鉱山も我らに譲渡するとのことだったがな」


ウィンザー王が話した内容は、なにもかもブラフである。


「なっ、そんなことは聞いておらん!」

「では、国に戻り確認すればよかろう。さぁ、帰るがよい!我らも多忙の身であるのでな」

「い、いや、昨日の役人はすでに殺し……。いや、なんでもない。昨日の交渉に向かわせた役人からの報告では、そのように聞いておらん」

「だから、国に戻って確認せよと言っておるだろうがっ!さぁ、どうするのだ?」


ウィンザー王は言いながら、ゆっくりと右手を上げていく。


「ま、待たれよ!ウィンザー王。わ、わかった。しかし、緩衝地帯の全放棄と魔鉱石の鉱山の譲渡だけは勘弁してくれないか」

「ほぅ、そちらの国は他国へ攻めに来た挙句に、負けて休戦協定の交渉に来た。しかしながら、交渉材料のすべてが嘘偽りであったと言うことであるのだな。うむ、貴国の考えは理解した。我らにも矜持と言うものがある」

「…………」

「交渉は……、決裂である!全軍、進軍の用意をせよっ!」


ウォォォーーーーー


百万の兵士の雄たけびは、空気を振るわせ、足踏む音は地鳴りを伴って地面を揺らし続ける。


「ま、待ってくれ!いや、お待ちください。で、では、緩衝地帯の七割。賠償額は参加国に対してお支払いさせて頂く。ま、魔鉱石については、本年度の算出分を譲渡させて頂く。そ、それで勘弁願いたい」


「では、一度我らだけで話し合う必要がある。暫くは、別場所で待機願いたい。あぁ、国に帰らずともよい。茶と菓子も用意してあるのでな。ゆっくりすれば良かろう。おい、公爵殿を持てなせ!」

「はっ、承知致しました。公爵様、どうぞこちらへ」


半ば強引に騎士に連れられて、別のテントの中へと押し込まれていた。



「プハッ」

「クックックック」

「愚か者だな」

「本当にねぇ。おっと、声が大きいかな?」


テント内は笑いを噛みしめている四人。

ウィンザー王は吹き出し、サハラド王は高笑い。

レオンは呆れたように言い放ち、タイガもレオンに同意する。


「しかし、ウィンザー王よ。悪辣であるなぁ」

「悪辣とは心外であるぞ、サハラド王よ。あれくらい言えばよかろう」

「まぁ、確かにな。さて、レオン殿、タイガ殿はどう思われる?」

「タイガの意見が俺の意見と思って聞いてくれればいい。タイガ、話してくれ」

「わかった。まず、さっきのウィンザー王の交渉内容と国に帰らせないのは流石だとしか言えないよ」

「ハッハッハ、神の使徒様に褒められるとは。帰ったら自慢できますなぁ。それで?」


「うん、僕の想像だけど、緩衝地帯は八割でも通りそうだね。賠償額と魔鉱石については、僕たちでは価値がわからないからね。なんとも言えないよ。そうだ、公爵を呼び戻したらね、思いっきり苦いお茶を出してくれないかな」

「苦いお茶を?なぜでしょうかな?」

「まぁ、まぁ、そこは見てのお楽しみって奴だよ。そこでね、みんな耳を貸してくれる?」


タイガの口元へレオンもウィンザー王もサハラド王も耳を近づける。


「って、ことだよ。わかった?そうなると、連合国にとって得なことだらけじゃないかなぁ」

「……、ウィンザー王よ、先ほどは悪辣と言って申し訳なかった。本当の悪辣な考えは神の使徒であったわ」

「サハラド王よ。私も同じ思いだぞ」

「二人共、失礼しちゃうなっ!」


ハハハハハハハ



別場所で待機させられていた公爵が再び交渉の席につく。


「あぁ、余も喉が渇いた。おい、皆に美味い冷茶を持て」


騎士に命じると、すぐに冷茶を持って来る。

公爵以外は、一気に飲み干すが、公爵は手に取らない。


「公爵よ、どうした?我らの茶が飲めぬのか?毒など入ってはおらぬ。そんな事をして何になると言うのだ。額に汗もかいておるではないか。さぁ、胃の腑を冷茶で冷やすが良い」

「う、うむ、頂こう。…………むっ!?」

「どうした?」

「い、いや、少々苦く感じたもので……」


そのまま一時間ほどはのらりくらりと公爵の話を交わしていたのだが……。


「――グッ」

「どうした?」


公爵は胃のあたりに手を当て、顔を少し歪めている。

何度も何度も胃の辺りをさすりながら、ウィンザー王を睨みつける。

徐々に顔が青くなってくる公爵。


「さて、交渉の詳細な箇所を詰めようか」

「ま、待って欲しい。あ、明日に変更してもらいたい」

「何故だ?理由を聞かせてもらおうか。先ほども申した通り、我らは暇ではないのだ。それにな、血気盛んな兵士が多い、これ以上の待機をさせると我が命に逆らって、貴国を責めるやも知れんがなぁ。どうする?延期か?続けるか?うん?どうなのだ?」

「わ、わかった。交渉を続ける」



結果、緩衝地帯の八割をレオン達が貰い、賠償金は連合国での頭割りとなった。

魔鉱石についてはレオンもタイガも不要とのことで、これも連合国で分けることとなった。


シルヴァン国が払った賠償額は魔鉱石と合わせれば、シルヴァン神国の国家予算五年分に相当するようだった。

交渉も終わり、公爵は胃を抑えながら、這々の体で帰って行った。


もう、テント内は大爆笑である。

公爵は毒を盛られたと思い、早急に国へ戻り解毒薬を飲むことだろう。


しかし冷茶には毒など一切混入させていない。

緊張し、空きっ腹で苦くて濃い冷たいお茶を流し込めば胃が驚き、ちょっとした胃の違和感を感じてしまう。

おまけに見た目もドロドロとしているために、毒物入りの茶と思い込んだのも一因であった。



「では、早速にでもレオン殿たちの街に高く立派な外壁工事を行いましょうぞ」

「なんだか悪いな」

「何を仰る。我らの方が得をしておりますよ。戦も短時間、死傷者もおらず、結果的には多額の賠償金と貴重な魔鉱石が手に入ったのです。外壁や屋敷くらいは安いものです」


そう言うウィンザー王と他の王たちの顔は本当に嬉しさ満載の顔つきであったと言う。

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