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百獣の王と密林の覇者、異世界で獣人解放の旗を掲げる~誤召喚された俺たちが、奴隷以下の同胞を救って建国する話~  作者: スフィーダ


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第21話 進軍

ウィンザー王国とシルヴァン神国の境目にある緩衝地帯。

レオン率いる部隊がすでに配置についている。

予想されるシルヴァン国の戦士たちが現れると言う五日前から陣を取って待機中である。


ウインザー王国からも三十万の騎士や兵士も待機中であり、エルダー女王国や周辺各国からも続々と集まってきている。

既に百万は優に超えているだろう。


「そろそろか?いや、しかし飛行部隊からの連絡はないな」

「レオン殿、奴らは臆したのかも知れぬ」

「ウィンザー王もそう思われるか?確かに予測した日より二日も経過しておる」


レオンとウィンザー王や各元首たちとひとつのテント内で話し合うのだが、敵影が見当たらない。


「他に進軍して来る街道等はないのかな?もしそうなら後手に回るね」

「うむ、タイガ殿の懸念も分かるのだが、それは大丈夫であろうな。この先は切り立った断崖絶壁、道などありませぬ。万が一、そちらを通るのであれば魔物の餌となりましょうぞ」


そんな時だった。


「失礼致します!敵影発見の報あり。接敵まで一時間!」


テントへ飛び込んできたのはプリムローズ。

飛行部隊からの報告を伝えにきたようだ。


「敵の数は?」

「おおよそ、三万」

「三万?三十万の間違いではないのか?」

「いや、想定より少ないとのことです」

「わかった。お前は続き報を待て」

「はっ!」


「お客様が遅れあそばれてるようだな」

ウィンザー王冗談で場は和むが、すぐに各方面へと伝令を飛ばす。


敵は三万。対するこちらは約百万。

逃げ帰るだろうと誰もが考えていた。



ウォォォォォォォォォ


地鳴りがする音と共にシルヴァン国の兵士たちが現れた。

前方には獣人族が大勢で向かって来る。

彼らはタイガの説得に耳を貸さずに残った者たちである。


「臆するなっ!彼らは我が救いの手を拒んだ者たちである!既に敵であるっ!行けい!憎きシルヴァンの輩を討ち滅ぼせ」

レオンが同胞を傷つけまいと下がった獣人族に対して檄を飛ばす。


顔を歪ませ槍を構えて突進して来る同胞たち。

老いも若いも、男も女も子供でさえも向かって来る様は鬼気迫るものがあった。


しかし、レオンの言う通り、差し伸べた手を振り払って残ったのは彼ら自身である。

我に返ったレオン配下の重装部隊が巨大な盾で後方へは通さない。

粗末な槍では重装部隊の盾に突き刺しても、逆に壊れてしまう。

それでも拳で、足で攻撃を続ける。


重装部隊の間をすり抜け、歩兵部隊が斬りかかり、次から次へと倒していく。

重装部隊の前には累々と死体の山が積み重なっていく。


「撤退!撤退だー」

獣人族に突進だけさせ、後ろから様子を伺っていたシルヴァン神国の兵士たちは撤退を始める。


「卑怯者が!全部隊に命ずる。全勢力にて一人残らず息の根を止めよ!」

レオンの号令で飛行部隊が上空から岩を落とし、グスタフ率いる歩兵部隊とアンナ率いる特使部隊はシルヴァン神国の兵士を倒して行った。


人族の騎士は騎乗したまま倒し、兵士たちも同様に追いかけては倒していく。

エルダー女王国のエルフたちは、撤退させまいと植物を操り行手を阻む。


シルヴァン神国の三万の戦士たちが息絶えたのは、わずか一時間もかからなかった。

それでも隊長クラスの騎士は殺さずに捕虜として確保。

レオン達の連合軍はシルヴァン神国国境まで進軍を行なった。


国境前で新たに陣を取る連合軍。

そこへ、白旗を掲げた騎乗した騎士と後ろに乗っている男が現れた。


「申し上げます!申し上げます!休戦のお願いでございます。何卒、剣をお下げください!」

白旗を掲げた者に対する攻撃はできない。これは世界共通事項であり、殺すことは禁忌とされていた。


そのまま、各国元首が集まるテントへと連れて来られた男は役人であると言う。そして、王の名代であると言う。

この連合軍の責任者と話がしたいと申し入れだった。


この場は、ウィンザー王が対応することになり、代表して話を聞くことになったのである。


「して、何用であるか?」

「我が王の言葉を伝えさせて頂きます。『今回の戦について申し上げる。これは軍部の勝手な行動によるものであり、王族としては命じていない。何かの行き違いであると考えられるため、速やかに我が領土から撤退願いたい』とのことでございます」


緊張からか、レオンが太い牙を剥き出して唸っているのが怖いのかは不明だが、滝汗を拭きつつも役人は口上を述べる。


「斯様な戯言には貸す耳はなし!我ら連合軍は売られた喧嘩を買うだけのこと。早々にこの場に現れぬ臆病者の王へと告げよ」

「――くっ。そこを伏してお願い奉る」

「失せよ。聞こえなんだか?失せよと申しておる。我らはこの後、進軍を開始する。大人しく我らの道を塞がなければ何もせぬが、行くてを遮る者には容赦はなし!そう伝えよ!」

「……し、失礼する」


馬に乗り戻って行った騎士と役人。


「さて、どうするだろうな。タイガ殿はどうお考えかな?」

「今は進軍せずに待てばいいと思うよ。あの分じゃ王は出て来ないだろうね。もう一度、違う役人が来ると思うよ。多分、さっきの役人は殺されちゃうだろうからね。僕の考えではウィンザー王国とシルヴァン神国の間にある緩衝地帯を放棄するから許して欲しいって言うと思うよ。大っぴらには謝罪の言葉は無いだろうけど、後は多額の賠償金話も出るだろうね。それもウィンザー王が想像するよりも多いと思うな」

「ふーむ、賠償金云々は納得できますが、緩衝地帯をすべて放棄と言うのは無理でしょうなぁ」


ウィンザー王の言葉には各国元首も頷き同意をする。


「まぁ、ちょっと待ってようよ。きっと、すぐに白旗を振りながら来るよ」

「そうですかなぁ〜」


二時間後、タイガの言う通り、白旗を掲げた役人がやってきた。

結果、タイガの予想は当たっている事柄が多かった。

まず、賠償金については国ごとの戦に参戦した人数分で割合を出し、賠償金を支払うとのことだった。

もしくはシルヴァン神国でのみ産出される魔鉱石も賠償金と共に支払うとの申し入れだった。

緩衝地帯については、すべてではなく六割を放棄するとのことだった。


各国元首たちと話し合う。明日、昼までに結論を出すと話して伝令の役人を帰らせた。


「タイガ殿の想像に近い形でしたな。いや、ご慧眼に感服いたしましたぞ」

「そう?そうでしょ!ヘヘヘ」


各国元首達と明日の返事を考える。

ウィンザー王国とエルダー女王国は、シルヴァン神国の案に賛成しているが、他の国の元首達は、『今が攻め入る好機!』として譲らない。


テント内は侃々諤々(かんかんがくがく)喧々囂々(けんけんごうごう)状態である。

小国の元首ほど、攻めるべきだと言い、大国であればシルヴァン神国の休戦交渉内容に合意すべきだと言う。


レオンとタイガは特に何も言わずに聞く事に徹する。

(|グルルル、ガルルルルルル《兄ちゃん、僕から意見を言うよ》)

レオンはタイガの方を向いて頷く。


「ちょっと、いいかな?僕の意見を聞いて欲しいんだけど」


使徒であるタイガの発言は、元首達を黙らせる。


「まず、攻め入るのは危険だと思う。理由は、相手国の戦力全体が見えないからだね。召喚魔法は禁忌指定されているから使えないとしてもだよ。過去の勇者が生存してる可能性もある。それに子孫もいる可能性も否めない。まぁ、そんな奴が出てきたら兄ちゃんと僕で対応するけど。別方向から攻められた時に防げる自信はある?あるなら、このまま攻め入ってもいいよ。でもね、不確定情報が多すぎる。これは一種の賭けだよ。いくら百万の連合軍兵士がいたとしても、相手が『誰を』、『何を』持っているかわからない。そこを調べつくしてから攻め入った方が、確実に滅ぼせるんじゃないかなぁ。それと、緩衝地帯の六割を放棄するんだろ。つまり、僕たち獣人族の領地が増えるってことさ。シルヴァン神国に一番近いのが、僕たちの領地。後方の国々は安心できるんじゃない?」


理路整然と話され、『攻めるべき』と発言した元首達は黙り込む。

タイガが言うように、地形的に半島に突き出したシルヴァン神国が他国に攻め入るにはレオン達の街、『ロアザナトス』を通る必要がある。

そこを塞ぐ形でロアザナトスが存在する。


シルヴァン神国からの交渉内容であったが、これは自国に刃を突き立てられているのに等しい。


(こんなバカな交渉を持ちかけて来るってことは、勇者や子孫なんている筈はないよね。それに攻め滅ぼすのは簡単だろうさ。百万も兵士がいるんだからさ。でもなぁ、他の罪のない人々も殺しちゃうかも知れないからね。まぁ、自分たちの領地が広がるのは嬉しいけどね。ふふっ、僕と兄ちゃんと同胞たちの国作りの一歩ってとこだね)


元首達が話し合っている最中、タイガのみがほくそ笑んでいたのだった。

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