第18話 戦力
ロアザナトスの街が完成してから一年が経った。
すでに辺境の街、タングと見劣りしないくらいの大きな街へと発展していた。
当初は小さく囲っていた壁も徐々に広げ、今やかなり広大な街になった。
トントントン
「入れ!」
ガチャ
「失礼します!諜報部隊長ロイヤル、入室いたします!」
「おぉ、ロイヤル!久しぶりだな」
「はっ、レオン様、タイガ様、留守ばかりで申し訳ございません」
「それは仕方ないだろう。諜報部隊なのだ、国にずっといる方が無意味ってもんだ。それで、どうした?」
「はっ、ご報告をしたいのですが、各部隊長にも情報連携をさせて頂きたいのです」
「わかった、タイガ!」
レオンに声をかけられ、タイガは低く唸りだす。
いつもの『ランブル』と呼ばれる低周波の長距離用通信である。これであれば、獣人の部隊長に聞こえているだろう。
ただ、人間のグスタフは別の部隊長が声をかけて呼んでくるだろう。
レオンとタイガはロイヤルと一緒に会議室へと入り、部隊長たちを待つ。
会議室に入るとすぐに全部隊長も順次入ってくる。
「旦那、緊急ってことだが何があった?」
「グスタフ、まぁ待ってくれ。ロイヤルから説明してもらうのでな。さぁ、ロイヤル、全部隊長が集合したぞ。報告を頼む」
「はっ!我が諜報部隊が一年以上かけて調査した内容をご報告いたします。現在、シルヴァン神国では進軍の準備をしております」
「本当か!?」
「はっ!、また我らが同胞も王都へと集められております」
「……そうか。敵の規模はわかるか?」
「戦士は約十万。同胞が約二万です」
「「「「「――なっ!?」」」」
会議室は静まり返ってしまう。
「ロイヤル、その同胞たちは全員が戦士なのか?」
「いいえ、半数が非戦闘員です」
「つまり、肉壁にするって事か……」
「おそらくは」
「それで進軍してくるのはいつ頃だと予想している?」
「はっ、このままであれば十日前後かと予測されます」
攻めて来るまでに猶予はない。
「各部隊長、部隊の戦力は?ざっくりでいいから教えろ」
諜報部隊 … 二百二十名
重装部隊 … 二千四百名
特殊部隊 … 八百十名
歩兵部隊 … 二万五千七百名
補給部隊 … 千三百名
医療部隊 … 七百五十名
飛行部隊 … 四百名
合計 … 三万千五百八十名
「十二万と三万か……。厳しいな。ちょっと待ってろ。すぐに戻る」
レオンは会議室へ出て行き、二十分程度で手に書状を持って戻って来た。
「アヴィス、配下と共に書状を全世界へ届けろ。まずはウィリアム・アッシュフィールド辺境伯だ。次にアズーラ・フォン・ウィンザー王とエルフのエルダー女王国へ届けろ。他の国には両国の王へと預ければいい。行けっ!」
アヴィスはレオンの書状を受け取る。
「次!特殊部隊長アンナ!」
「は、はいっ!」
「お前はロイヤルと行動をともにしろ。ロイヤルから同胞の詳しい場所を聞き、見張りの奴らを無力化せよ。タイガ!お前はアンナに同行して、救出した同胞たちを連れてこい」
「「了解!」」
「タイガ、お前はシルヴァン神国はどのルートから進軍すると思う?」
「そうだね、あの国から僕たちのところまで街道は一本しかない。普通に街道を通ってくるとは思えないな。ウィンザー王国の国境に向かって左側が僕たちの領地。右側は林になってる。
僕の予想では右側の林の奥から来るだろうね。それもかなりの遠回りをして来るだろうね」
「俺達の国とは事を構えたくないって訳か」
「多分ね。だから重装部隊と歩兵部隊を三班に分ける必要があるね。特に林側を厚めに配置。中央の街道には緩衝地帯のギリギリに配置すればいい。それと飛行部隊の一部を高高度から進軍ルートの確認をしてもらう」
「ふむ、後は後方支援の補給部隊と医療部隊だが……。医療部隊は二班に分けろ。ハゼル、お前が優秀だと思う人材を戦地で待機だ。残りはここで待機。タイガ達が救い出して来た同胞を治療せよ。補給部隊長ヴォルペス、お前は糧食の手配だ。とにかく集めまくれ。あと、我ら領地での農作物も供出を頼め。いいか?無理やりに出させるなよ。住民達の分は余裕を持って確保させておけ!それと医療部隊への魔法薬の手配もだ」
「兄ちゃんはどうするんだ?」
「俺か?決まってんだろ、前線に行くんだよ。タイガ、お前も同胞を救い出したら俺の所へ来い!」
「わかった」
「以上だっ!全部隊は五日後に作戦通りの場所へと移動せよ!」
「「「「「オォォォォーー」」」」」
――――
飛行部隊であるアヴィスはハヤブサの獣人である。
時速三百km以上であり、鳥種族の中でも一番の速さを誇っている。
その速さは新幹線に匹敵するほどである。
辺境伯のウィリアム・アッシュフィールドにレオンからの書状を渡すと、すぐにウィンザー王国へと飛び立つ。
城門前に降り立ち、レオンの書状を見せると王の執務室へと案内された。
「ご苦労。それでレオン殿からの書状とな?」
「はっ、こちらでございます。まずは書状をお読み頂き、その後、我らが主からの伝言をお伝えいたします」
「わかった。そこに座って待っててくれ。……………………。アヴィスと言ったか?この書状はいつお書きになられたものだ?」
「はい、つい先ほどでございます。我らの同胞からの報告後にすぐお書きになられておられました」
「ふむ。これは大変な事であるぞ。して、レオン殿からの伝言を聞かせて貰おう」
「はっ、その前にお人払いを願います」
「わかった。だが、宰相だけは同席させるが、よいな?」
ウインザー王は宰相のみを残して全員を執務室から出す。
アヴィスの対面に王が座り、横に宰相が立つ。
「では、主からの伝言をお伝えいたします。伝宣!」
すかさず、ウインザー王と宰相はその場に跪き、頭を下げる。
伝宣は神の使徒と認定されたレオンのその言葉が、レオンそのものになるからである。
いくら、王よりも格下であっても、跪座を崩すことは許されない。
雑音を立てず、私語を慎み、レオンの言葉を一字一句聞き漏らさないという真剣な姿勢を示す必要がある。
「王、ウィンザー。書状にも書いているが、これより十日以内に敵国シルヴァン神国が進軍するとの事である。現在、判明している敵の総力は約十二万である。そのうち同胞が二万。だが、二万の同胞は我が配下の者により、早々に救出することとなっている。手段は説明する暇はない。御国でも総力を持って対応してくれるのを期待している。また、各国への書状も持たせている。御国より各国へと送っていただきたい!以上である!」
「はっ、このアズーラ・フォン・ウィンザー、恐れながら、謹んでお受けいたします」
その言葉の後立ち上がると、次にアヴィスが跪く。
「ご助力、我が主にかわりまして感謝申し上げます。では、私はエルダー女王国へと赴きます」
「うむ、ご苦労」
アヴィスが出て行ったあと、ウィンザー王は各大臣とともに閣議の間にて戦準備の命令を下す。
すでに辺境伯であるウィリアム・アッシュフィールドは、騎士達を向かわせていることだろう。
「他国に後れを取ってはならぬっ!急ぎ隊を編成し、辺境伯領の先にある緩衝地帯へと送り込めっ!これこそ好機である!」
「「「「はっ!承知いたしましてございます」」」」
当日のうちにウィンザー王国からは三十万の騎士、兵士が一路戦場になる緩衝地帯へと進軍を始めた。
ウィンザー王、エルダー女王国からの連絡を受けた各国戦準備を行い、馬車を走らせ緩衝地帯へと向かう事になった。
広大な緩衝地帯には数日もしない間に、騎士、兵士、私兵等が多く集まり、埋め尽くされるであろうことは想像に難くないのであった。
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