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百獣の王と密林の覇者、異世界で獣人解放の旗を掲げる~誤召喚された俺たちが、奴隷以下の同胞を救って建国する話~  作者: スフィーダ


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第16話 領地

「やっと完成だな」


あの王都での出来事から半年。


ウィンザー王国はシルヴァン神国に対し、多額の賠償金および拉致被害者の開放を求めたが、相手国からは賠償金のみが支払われたと言う。

拉致被害者は、証拠のある対象者のみが返されたのだが、今までの被害者数と比較しても、あまりにも少ない。

ただ、今までとは違うのは、素直に賠償金の支払いと拉致被害者(一部であるが)を返してきたことである。

レオンとタイガが話した『召喚魔法』が使えずに、取りあえずは原因究明の為の時間稼ぎだろうとのことだった。


また、各国ともに国境と国境の中間にある土地は、緩衝地帯と呼ばれており、どの国の所有物ではない。

緩衝地帯が設けられているのは、国と国がピタリとくっついていると、戦が起きたときに即座に全体へ波及してしまうからである。

また、国境が接していると、兵士の誤射や迷い込みがすぐに相手国への侵略行為とみなされるからである。

一応、非武装地帯とも呼ばれている。


野盗が潜伏していたのは、この土地内である。

この緩衝地帯において、武装集団がウィンザー国や他国の人々の生命を脅かす行為も、シルヴァン神国を責め立てる材料のひとつである。


ウィンザー王は、拉致被害者を速やかに返すことがないのであれば、緩衝地帯の半分を自国の領土にすると宣言。

代りに捕縛したシルヴァン神国の工作員を返すことになっている。

ただし、国に返されたとしても役に立たないことは明白であった。

連日、事情徴収と言う拷問。

すでに捕縛者全員は精神に異常をきたしている。糞尿の制御もできず、挙句の果てには自分の排泄物まで口にする始末。

そのせいで全身に発疹もできている。

しかし、治癒魔法は使って貰えない。

そんな工作員を返されても処分されるだけととわかっていた。


緩衝地帯に関して、各国の承認印を押下された書面により、シルヴァン神国としては認めざるを得なかったのである。


結果、ウィンザー王国は緩衝地帯を自国の領土とすることを認めさせ、大幅に領土は拡大したことになった。

つまり、シルヴァン神国へ進軍がしやすくなったのである。

おまけにウィンザー王国にとっては、レオン達の街と国境があるので、二重の防衛が可能になったのである。



ウィリアム・アッシュフィールド辺境伯が治める領土に近い、奪取した緩衝地帯の元野盗のアジト周辺が小さいながらもレオン達の街になった。


街であるが、どの国にも支配下ではない。


住民は税収等をレオン達へ支払う事になっているが、当面の間は税の徴収は行わないこととしている。

免税であると聞きつけた人も多く訪れたのだが、この土地に住めるのは獣人族のみである。


レオンが領主であり、タイガが宰相兼軍師である。

森も切り払われ、レオン達の屋敷からは街道がよく見えるようになっている。

街道には見張り塔も随所に建てられ、不審者の監視を常時行っている。


すでにレオンとタイガの『シルヴァン神国を倒す!』とのスローガンに集まって来た獣人の数は三百人を超えている。

戦闘員は二百名。非戦闘員は百名である。当然、家族ごと引っ越してきたものも多い。


アンナは当然のようにレオン達の屋敷に部屋を陣取っている。

たまに冒険者のロッシュが、獣人族相手に稽古をつけている。


そう言えば、ウィンザー王国の将軍グスタフ・アイゼンラートであるが、この地に屋敷を構えている。

急に訪れた将軍に驚き、訪ねると『騎士団を辞めてきた。行くところがないので世話してくれ』と。

どうやら闘技場にてレオンに負けた後日、ウィンザー王へ辞表を捧呈(ほうてい)したそうだ。

各大臣や貴族、騎士団からは引き止めが相当にあったそうだが、本人の意思は固く、結果、シルヴァン神国を滅ぼすまでの間は、レオンの所へ出向と言う形で落ち着いたのだった。



「おいっ!そこっ!何を座り込んでおるのだっ!そんな体力で敵国を打ち滅ぼせると思うのかっ!」


「あー、またグスタフのおっちゃんが頑張ってるねぇ~」

「おい、タイガ!訓練なんか見ないで手伝え。この書類仕事はお前のが得意だろうがよっ!」

「はい、はーい」


レオンとタイガは新しい住人たちの受け入れ、そして部隊編成等の書類をこなしている最中である。

一応、文官として知能の高い猿の獣人がいるので助かってはいるのだが、それでも日々の書類仕事に追われていた。



「なぁ、兄ちゃん。僕たちの街に名前をつけようよ。いつまでも『獣人族の街』って変だよ」

「そうか?俺は気にしないけどな」

「そう言うんじゃないんだよ。一緒に考えて付けようよ」

「うーん、そうだなぁ。じゃ、一応、主要メンバーを集めてくれよ。そこで決めようぜ」



レオン達が住む館には大きな会議室がある。もとよりレオンが大きいために作りはすべて大きめに設計されている。

集められたのは、アンナ、グスタフ、そして隊長クラス達である。

唯一の人間はグスタフのみ。


諜報部隊長:ロイヤル(犬族・男性)

重装部隊長:タスク(ゾウ族・男性)

特殊部隊長:アンナ(猫族・女性。冒険者第二等級)

歩兵部隊長:グスタフ・アイゼンラート(人族・男性)

補給部隊長:ヴォルペス(キツネ族・男性)

医療部隊長:ロロネ(ウサギ族・女性)

飛行部隊長:アヴィス(鳥族・男性)


「集まってくれたようだな。タイガから再三言われ続けていることなのだが、この我らの土地に名をつけたいと思う。なんでも良いから考えてくれ。ちゃんと意味も言うんだぞ!」


候補として、

・タテガミ街

  意味:レオンの(たてがみ)から。

・ロアザナトス

  意味:レオンの咆哮とタイガのスキル『影』から。

・黄金の爪街

  意味:レオンの鉤爪から。

・キングズ・テリトリー

  意味:百獣の王から

・レオグランス街

  意味:レオンの名前をもじって


「タイガ、ここから選ぼうか?」

「そうだね、僕としては……。まず、『タテガミ街』は除外して」

「えー、アタシが頑張って考えたのにぃ!」

「はい、はい、アンナさんは黙っててね。センスがなさすぎだよ」

「むぅ~」


タイガは候補名が書かれた街一覧を見つめ続けている。


「うん、僕は『ロアザナトス』がいいかなって思う。これ誰が考えたの?凄くセンスがあるよね!」

「あ、あの私です」

「ロロネさん?えっ、本当!?女性ならではの感性なのかな?ねぇ、兄ちゃん、ロロネさんを医療部隊にしとくのは勿体ないよ。文官にしたほうがいいって」

「ロロネが良ければ、それでいいぞ。ロロネ、医療部隊から文官長になるか?今は手が足りんのでな」

「は、はいっ!喜んで」

「じゃ、ロロネさんに初仕事をあげるよ。みんなに街名を教えるように立札の文言と僕らの旗のイメージを考えてね。出来るだけ早急にお願いするよ」

「…………えっ?」

「頑張ってね」

「……は……い。頑張り……ます」


「アタシも女なんだけど……」

ボソッと呟くアンナは無視されている。



十日後、ロロネは住民全員への通達を行い、旗のイメージ案も複数考えたようだった。

しかし、完成の報告をしにタイガの前に現れた姿は可哀そうなくらいにやせ細り、やつれていた。目にも隈ができていたほどだった。

流石に申し訳ないと思ったタイガは、熟考していた十日間の期間分の休暇を与えたのだった。



――――

「おぉ、レオン殿からの書状だな。…………、ほぉ、街名と旗が完成したとの連絡か」

「陛下、よろしければ我らにもお教えください」

「おぉ、そうだな。街名は『ロアザナトス』。意味はレオン殿の咆哮とタイガ殿の操る『影』のスキルから着想を得たそうだ。ふむ、『ロアザナトス』か……。良き名ではないか。うむ、では宰相よ、各国へと知らせよ!新領地『ロアザナトス』の事を」

「はっ!承知いたしました!」


各国へとレオンとタイガの新領地設立と街名、旗が知らされたのである。

それを聞いた他国の獣人達もこぞって移動をし始めたと言う。


その件より三か月後、ロアザナトスの獣人は倍以上になり、戦闘員も大量に確保できたと喜んだのはグスタフである。

反して、膨大な移民の書類及び人物選定の書類に追われるレオンとタイガ。そして文官長のロロアであったのは言うまでもない。

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