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百獣の王と密林の覇者、異世界で獣人解放の旗を掲げる~誤召喚された俺たちが、奴隷以下の同胞を救って建国する話~  作者: スフィーダ


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第15話 試合

馬車で連れてこられたのは、ウィンザー王国にある闘技場。

年に一度の『武の祭典』の時以外は、騎士団の訓練場として使われている。


王であるウィンザーと共に豪華な馬車に乗らされ、連れて来られたと言う訳である。

レオンとタイガの相手は、国一番の強い将軍であり、背丈よりも大きい大斧使いであると教えてもらう。

レオンは話半分でボンヤリと聞き流しているが、タイガは熱心に聞き入っている。

特にそれとなくスキルについても聞いているようだった。


馬車は闘技場に着き、控え室で防具に着替える。

やはり身につけていないような軽さ。

だが、防御力は随一であると理解している。

それはアンナ、ロッシュに手伝ってもらい攻撃を弾く事で立証していたからである。


「じゃ、アタシは見物席で応援するから。レオン、アタシの為に頑張ってね。あー、タイガもね」

「僕にはおざなりだなぁ」



呼ばれるまでの間、タイガと連携技の確認と、もうひとつタイガの元からあった能力の確認に余念がない。

「うん、兄ちゃんとの連携も大丈夫みたいだね。僕の能力も問題は無しだね」

「そうだな。問題は殺さないように加減する事だけだ」

「本当に気をつけてよ。相手は将軍様なんだからさぁ〜」

「わかってるって、何度も言うなよ」

「本当かなぁ〜」



そうしている間にドアが開かれ、闘技場へと入る。

入った瞬間に大勢の観衆から声援を送られる。

二人の頭に『?』が浮かんでいるのを見て、案内人から『この手合わせという名の試合は、国民へ通達しており、多くの者が見に来ている』と説明してもらった。

「多くの見物人がおりますが、どうか緊張などなさらずに」

そう言ってくれるのだが、二人にとって見物人が多いのは動物園時代で慣れっこである。

逆に多い方が気合が入ると言うものである。



既に大斧を構えた将軍と後方には完全武装した特殊精鋭騎士団三十人。

「お待ちしておりましたぞ!私は当国の将軍。名をグスタフ・アイゼンラートである。レオン殿、タイガ殿のご両人は非常にお強いとの事。また特級冒険者であるならば、我と配下のものを全員相手取っても問題はありますまい!」

ニヤリと笑う将軍アイゼンラート。


グルッ、グルルルルル(あれ、確信犯だね)

「俺もそう思う」


トラの喉の奥から発せられる低い唸り声は『ランブル』と呼ばれる低周波の長距離用通信である。人間の聴覚では捉えられない超低周波の二十ヘルツ以下が含まれている。

この唸り声で連携が可能になると、何度も何度も練習していた訳だ。

また二人だけでの内密の話もできると言う利点も当然ある。




―― レオン 対 将軍グスタフ・アイゼンラート ――


「なるほどなぁ、将軍、アンタの言うとおりだ。俺たちは神国と戦争をおっ始めるんだ。こんなところで躓けねぇよなぁ」

「そう言うことだな。わかってるじゃないか」

「じゃ、そろそろ始めるか?タイガも準備は大丈夫だな?」

「僕はいつでもいいよ」

「って事だ。かかってきなよ将軍。後ろの騎士さん達もな」

「その心意気やヨシっ!では、アイゼンラート、参るっ!!」

グルルルルルルル(僕は騎士をやる)

タイガの言葉に頷き、将軍のほうへと向き直る。


大斧を振りかぶり、一気に距離を詰めてくる。

「来たか、『フレイム・バリア(火炎障壁)』」


ガキン


将軍の一撃はレオンのスキルにより弾き返される。

その隙に次のスキルを唱える。


「『クリムゾン・ケージ(紅蓮の檻)』、どうだっ!」


炎で囲いを生成し、将軍の動きを封じるのだが、

「フンッ!『身体強化!』」

将軍は身体強化により得た力で、炎の囲いから飛び上がって抜け出す。


「こちらの番だっ!」

大斧はレオンに向かって顔面、腕、足へと斬撃を繰り出して来る。

それを腕のガントレットで防御していく。


「防御だけとは、舐めてるのかっ!」

「いいや、舐めてなどいないぞ。『|ロアー・オブ・インフェルノ《地獄の咆哮》』」


近づき攻撃を仕掛けていた将軍をレオンの咆哮と同時に、炎の衝撃波を周囲に放ち、至近距離にいた将軍を一瞬で吹き飛ばす。

「おぉ、なかなかのもんだな」

「将軍、アンタもな。そろそろ本気を出してもいいか?」

「――なっ!?」

「将軍、死なないようにしとけよ。『|ストレングス・インシネレート《剛力炎化》』、『マグマアーム』。いいな、避けろよ」


ストレングス・インシネレートで、一時的に肉体を炎で覆い、攻撃力・防御力を大幅に向上させ、マグマアームで腕の炎を高温の溶岩状に変化させる。

将軍の目の前で、手ごろな石を手に持つとドロドロと溶け流れて行った。


「もうひとつ、『ブレイジング・フィスト』。これでいいだろう。大サービスだぜ」


ブレイジング・フィストは、拳に炎を圧縮し、爆発的な破壊力を叩き込む技である。


将軍の正面へ立ち、炎をまとった腕を後方へと引き、腰を屈めながらも視線は将軍から離さない。

右足に力を入れ、一気に蹴り、将軍へと拳を叩きこむのであった。




―― タイガ 対 特殊精鋭騎士団 ――


「さて、兄ちゃんは大丈夫だろうけど。どうやって倒そうかなぁ~」


口調はノンビリとしているが、視線は三十人の騎士達の立ち位置を把握するように動かす。

(ふむ。まず、あの位置からあそこまで移動後に……。それとシャドウ・ベールは使わない方がいいよね。姿を見せながら戦ったほうが見栄えがいいだろうしね)


タイガの頭脳は超高速でフル回転し始める。


「じゃぁー、行っくよぉ~。 『|フォッグ・オブ・ウォー《戦場の霧》』、『シャドウ・パペット(影の人形)』」


フォッグ・オブ・ウォーで、特殊精鋭騎士団の連携や判断力を鈍らせる。これにより全体が混乱してしまった。

その後、シャドウ・パペットにより、特殊精鋭騎士の影を意のままに操り、同士討ちを行わせた。

このスキルは短時間しか有効ではないが、それでも三分の一の特殊精鋭騎士が倒れている。


「さてと、『シャドウ・ステップ(影走り)』っと。ホイッ、ホイッ、ホイッっとね」

シャドウ・ステップで、騎士たちの影の中を一瞬で移動し、現れては首筋を殴りつけて昏倒させていく。

騎士達はどこから現れるのかわからないために、戦々恐々の状態になっている。

だが、流石に特殊精鋭騎士団と呼ばれるだけあって、影が後方にならないように太陽の光を背に受けるように体制を変えて行った。


「おぉ、頭がいいねぇ。それじゃ、これはどうかな?『ダブル・アサルト(二重襲撃)』」

要するに分身の術である。

だが、タイガのスキルは単なる分身を作り出すだけではない。

本体と幻影が時間差なく同時に敵を襲うものである。


先程のシャドウ・ステップで影から飛び出し、倒しては影の中へと潜り込む。

数度繰り返し、特殊精鋭騎士団の面々を襲うのであった。



タイガがすべての特殊精鋭騎士団を倒し、レオンの方へと振り向くと、大の字に倒れた将軍。その頭髪からはブスブスと煙が立ち上り、鎧も数か所、溶けている。顔は幾筋もの裂傷。

レオンはと言うと、肩を回しながら、首をコキコキと鳴らして立っているのみ。

その顔は、つまらなそうであった。


ガルル、グルルル(兄ちゃん、弱かったね)


「おーい、タイガ、終わったからこっち来いよ。それで会話する程のもんじゃねぇだろ」

「それもそっか。そっち行くよ」



「兄ちゃん、せっかく連携技をいっぱい練習したけど、使うこともなかったね」

「そうだな。でも、この国で一番強いらしいぞ」

「ふーん。そうなんだ」



「おい、おい、そんなことを言われたら、俺の面子が立たねぇじゃねぇか」

「おっ、将軍、生きてたか。よかったな」

「あぁ、最後に加減してくれたんだろ?あぁ、死んだ婆様に手招きされる夢を見たぞ」

「ハハハ、ほら、手を貸すから立ちな」

「あぁ、スマンな。ヨイショっと」



手合わせと言う名の試合が終わり、見物人からは盛大な拍手と歓声。

みなの健闘を称えてくれる声援まで聞こえて来た。


治癒魔術師が将軍グスタフ・アイゼンラートの所へ来るが、先に自分の配下から先に治癒して欲しいと追い払う。

「おい、火傷もケガもあるんだ。先に治してもらいな」

「いいや、先にやるべきことがあるんでな」

「やるべきこと?」


レオンもタイガも変な事を言うと不思議そうな顔をしていたのだが、将軍は二人の前に跪く。

その姿に闘技場内は静かになるのだった。


「女神ヴィータリス様の使徒であらせられるレオン様、タイガ様。流石でございます。我ら世界一の特殊精鋭騎士団と自負しておりましたが、お二人の力の前では一切通用しない事がわかりました。我ら一同、お二方に少しでも近づけるよう精進する所存でございます。どうか、我ら世界の国々をお救いくださいますよう、お願い申し上げる!」


静寂の後、ウワァァァァァーとの大歓声。

将軍は跪いたまま、臣下の礼を崩すこともなく、後方の騎士達も同様に二人に臣下の礼を取っていたのである。

ふと見上げるとアズーラ・フォン・ウィンザー王とその家族も立ち上がり拍手をしているのが見える。


「なぁ、タイガ。俺、やりすぎたかな?」

「だから言ったじゃないかっ。僕は知らないからねっ!」

「そんな事を言わずになっ、この状況を変える知恵を出してくれよ」

「はぁぁ~、仕方ない兄ちゃんだ」


将軍を打倒したレオンも弟には弱いのだった。

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