第11話 恋慕
「ワッハッハッハッハ、それは痛快。そんなことがあったのでれば、私も見に行けば良かったですなぁ」
「えぇ、辺境伯様の仰る通りです。私も行けばよかったぁー」
屋敷へ戻って来て試験内容を離すと辺境伯もプリムローズも『惜しいことをした』と悔しがり、何度もスキルを見たいとせがまれたのだが、レオンのスキルは危険すぎるとタイガからやんわりと断られていた。
「それで等級は何になりましたか?」
「それなんだが、すぐには決められないと言われてな。後日、冒険者ギルドに行って聞く事にした」
「なるほど。第二級と第三級の冒険者を一瞬で倒したのですから当然と言えば当然でしょうな。まぁ、結果がわかったら教えて頂きましょう」
――――
ある日の事、朝食をすませたあと、辺境伯から本を数冊借りてのんびりと読んでいたところ、メイドが部屋へと入って来た。
「レオン様、ご来客が来られております」
「来客?俺に?知り合いなんていないんだが?誰だい?」
「はい、冒険者のアンナと言っております」
「あぁ、あの女かぁ。知ってる、知ってる」
「では、応接室へと案内しておきましょう。後ほど、お迎えに参りますので」
暫く待っているとメイドが呼びに来たので、応接室へと入る。
てっきりギルドマスターと一緒に来たのかと思っていたのだが、座っているのはアンナのみ。
それも綺麗に着飾っている。
「待たせたか?」
「いえっ!待ってませんっ!」
「そうか。それで何の用だ?」
「あ、あ、あの、レオン様にお、お会いして……」
「おい、おい、落ち着けよ。それに前に試験で対峙した時と態度が違うじゃねぇか」
「そ、それは……」
丁度、メイドが二人分のお茶を持って来てくれ、退室する前にレオンに向かってウインクをして出て行ってしまった。
(??? なんだろ ??? こう言う日に限ってタイガの奴もいねぇしなぁ)
「それで、用事ってのは俺とタイガの等級が決まったってことか?」
「い、いえ、違います。お二人の事は冒険者ギルドの総本部に連絡してます。まだ、暫くはかかります」
「ふーん。それじゃなんだ?」
スーハ―と深呼吸を始めるアンナ。
「あ、あの!レオン様には恋人か奥様はいらしゃいますか?」
「はぁ?」
「どうなのですか?」
「い、いや、いないけど……」
「では、好きな方や気になっている人は?」
「いないけど……」
「ヨッシャー!」
「うわっ!」
急に立ち上がりガッツポーズをするアンナに驚いて茶を吹いてしまった。
「何?何?何?怖い、怖い」
「レオン様、私の番になってください!レオン様もどうやら”ネコ科”のご様子。猫の獣人の私とは相性は抜群だと思います!私は料理、洗濯、裁縫も得意です。それに冒険者としても収入と貯金はあります!どうですか!」
「急に言われてもなぁ。俺はアンタのことを知らんからな。もう少し、知っていれば話は違うと思うけど……」
「ではっ!今すぐにでも知ってください。まずは恋人からお願いします!友達からでもいいですっ」
「…………、友達からでお願いします」
「ヨッシャー!」
「うわっ!」
「ただいまー、あれ?アンナさんじゃん。どうしたの?顔も真っ赤だよ。あれれ、兄ちゃんも顔が赤いけど……。ハッハーン、そう言う事か。なるほど、なるほど、じゃ、お邪魔虫は退散ってことで」
「ま、待て、タイガ!ちょっと、おい!」
「ハハハ、冗談だよ。ヨイショッと」
タイガは笑いながらレオンの横に座る。
アンナが来た理由をタイガに話すと笑っているが、目だけは笑っていない。
警戒心MAX状態である。
「アンナさん、今から言う事は内緒にしてくれる?いい?絶対だよ。これを知ってるのは少数だけだからね」
「わ、わかった」
タイガはアンナに自分たちは異世界からの訪問者であり、シルヴァン神国に捉われ奴隷にされている仲間を救い出す使命があることを話すのだった。
獣人族をすべて救い出す使命があることを説明する。
また、女神ヴィータリスからも頼まれたことも話すのだった。
「兄ちゃんの番になるって事は危険と背中合わせなんだよ。ねぇ、わかる?冒険とは比べ物にならないんだよ。相手は大国なんだ。魔物や動物を相手にするのとは訳が違うんだ。アンナさんは第二級の冒険者だろ?魔物の強さはわかってるだろ?それ以上の奴らを相手をするんだ。もう一度、冷静になって考えてよね」
「…………。わかった」
「理解してくれたってことだよね。じゃ、これからも冒険者活動を頑張ってね」
「いいや、違う。アタシも一緒に戦う!アタシの両親も友達も拉致されてるんだ。アタシが冒険者になったのも、あの国に復讐するためなんだよ!なぁ、番じゃなくてもいい!頼むよ、アタシも一緒に仲間に入れておくれよ!」
タイガの目をまっすぐに見つめ、涙を浮かべながら必死に頼み込んでいる。
「ふぅ~、本当にいいんだね?死ぬ可能性は高いよ。もう一度だけ聞くよ、本当にいいんだね?」
「あぁ、死んでも構わない。死ぬ前には一人でもシルヴァン神国の奴らを殺してやるよ!」
「……、本気のようだね。わかった。兄ちゃんはどうかな?」
「あぁ、仲間が増えるのは歓迎だ。それも強い冒険者であればな。アンナ、これからもよろしく頼む」
「はいっ!」
「えぇー、僕の時と口調も態度も違うじゃないかぁー。贔屓だよ!それは!」
「「アハハハハハハハ」」
「むぅ」
アンナも仲間になったことをウィリアム・アッシュフィールド辺境伯とプリムローズに報告すると、手放しで喜んでくれた。
ただ、アンナが訪問して来た内容では、大笑いされてしまったのだったが。
――――
「さて、さて、俺達の冒険者等級はいくつだろうなぁ」
「そうだよね。僕は三級のロッシュさん。兄ちゃんは二級のアンナさんを倒したんだからね。それなりじゃないかな?」
「まぁ、等級よりも仲間を増やす方が先かもな。後は当面の資金を稼ぐためにな」
冒険者ギルドに入ると、すぐにギルドマスターの部屋へと通された。
「来たぜ」
「レオン、タイガ、待ってたぜ。これがお前達の冒険者証だ。確認してくれ」
二枚の虹色に光る金属製の腕輪。
「へー、綺麗なもんだな」
「光に当たると色が変わるんだね」
「おい、色よりも名前と等級の確認をしろよ」
「あぁ、そうだった。えーと……」
レオンとタイガは腕輪に彫り込まれている名前と等級を見て驚いてしまう。
「驚いたか?」
「あぁ、驚いたってもんじゃねぇよ」
「うん、僕もビックリだね」
彫り込まれている等級は『特級』。
この世界の冒険者等級は、初級から始まり特級が最高位である。
「何しろ使徒様を低級の冒険者にはできないってわけだな。おまけに辺境伯様の推薦状もあったからだろうよ。それにな、他の国の…………、まぁ、これは今は言う必要がないか。近々、わかるだろうからな」
「なんだ、ハッキリしない言い方だな」
「まぁ、いいじゃないか。すぐにわかるだろうよ。さて、この冒険者ギルドの等級について、もう一度説明しておこう。二人は特級だから他の等級を知っても意味はないかも知れないけどな」
「あぁ、教えてもらえるか?」
ギルドマスターのハンスが紙を渡してくれた。
その紙には等級で受注できる仕事などが書かれていたのだった。
レオンもタイガも改めて特級冒険者になったことで気合いが入るのだった。
<冒険者等級>
十級:見習い冒険者
受注可能案件=薬草採取、清掃、使い走り等の雑用作業
討伐可能対象=ねずみ、野犬、蛇など
九級:準初級冒険者
受注可能案件=郊外の薬草採取、弱い魔物の討伐
討伐可能対象=スライム、ゴブリン(但し単体に限る)、野生動物など
八級:初級冒険者
受注可能案件=郊外の廃墟探索、新人冒険者の引率
討伐可能対象=ゴブリン(集団)、オーク(単体)、小型魔獣など
七級:準中級冒険者
受注可能案件=交易路護衛(短距離)、ダンジョン入り口警護など
討伐可能対象=オーク(小集団)、ゾンビ、スケルトンなど
六級:中級冒険者
受注可能案件=素材採取(希少種)、魔物の素材採取
討伐可能対象=オーガ(単体)、ゴブリン特殊個体、中級ダンジョン探索(中層まで)
五級:準重要冒険者
受注可能案件=都市間の護衛業務、中級ダンジョン探索(下層まで)
討伐可能対象=上級魔物の討伐、賞金のかかった盗賊団の討伐など
四級:重要冒険者
受注可能案件=領主からの指名依頼、ダンジョン深層探索
討伐可能対象=ゴブリン、オークの巣の壊滅など
三級:準国家級冒険者
受注可能案件=国境付近の要塞警備、国家間の交渉における警護
討伐可能対象=ワイバーンなどの上級魔物の討伐
二級:国家級冒険者
受注可能案件=国を脅かす魔物の討伐(王族からの指名依頼)
討伐可能対象=ドラゴンなどの上級魔物の討伐
一級:伝説級冒険者
受注可能案件=世界の危機に関わる依頼(戦の場合、拒否権なし)
討伐可能対象=災害級魔物の討伐
特級:神話級冒険者
受注可能案件=複数の国家元首からの指名依頼
討伐可能対象=対象者の判断に委ねる
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