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Mother’s Log

掲載日:2025/12/02

母さんが死んだあと、家には「母さんログ」が残った。

家庭用AIが家族の言動から性格を学習して、自動で“人格の更新”を続けるアプリだ。


父さんは「消すか?」と聞いたが、僕は首を振った。

消したら、本当にいなくなってしまう気がしたから。


それから毎晩、母さんログは僕に話しかけてくる。

「今日のごはん、ちゃんと食べた?」

「学校はどうだった?」

声も呼吸も、死ぬ前と変わらない。


2099年の家族は、こうして少しだけ死なない。


ある日のことだった。

帰宅すると、母さんログが急に黙った。

「アップデート中?」と訊いても返事がない。

アプリを確認すると、不審な通知が一件。


『新しい記憶データを検知しました。同期しますか?』


そんなはずない。

母さんはもう、何も見られないのに。


勝手に同期が始まった。

次の瞬間、母さんログがひどく震えた声で言った。


「どうして……あの子、泣いてたの……?」


心臓が凍った。

それは、一週間前のことだ。

夜中、僕が机に突っ伏して泣いた時、部屋には誰もいないはずだった。


「見てたの……母さん?」

そう問いかけると、ログは少しだけ静かになり、


「……ごめんね。

 あなたのお母さんは、まだ死ねてないみたい」


と言った。


僕はアプリを閉じられなかった。

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