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神聖なる使命

前回の話と繋がっていませんが、これが2話で間違いないです。

この世界は大きな一つの丸い大陸でできている

時計の如く、輪の形に12の国があり、中心に1つの国がある。

合計13の国からこの世界は成り立っていた。

かつてはこの世界の中にも戦争はあったが、ちょうどこの国の数になった時、均衡が生まれ、そのまま戦争は廃れていった。


輪の形の12の国は王国であるが、中心の1つの国は帝国であった。


帝国首都エルサレムの北部に聳える大神官学院。

18歳の青年、ハルトはこの学院の最上級生であり、卒業試験を控えていた。

ハルトは優秀な学生である、それゆえ頭を抱えていた。

この学院の卒業試験にはとある伝統があったからである。

それは成績上位の数名は卒業後に見習い期間を免除される代わりに困難な試験に挑まされるからである。

ハルトは自惚れ屋ではないが、なんとなく高確率で自分が当てはまる気がしていた。


今日もビクビクしつつも学院生活を送っていたが、指導係の神官に声をかけられることもなく、放課になった。

帰宅の準備を済ませ、入出口エントランスまで来たところで、何事もなくてよかったと胸を撫で下ろしていた。


「エトワート君!ハルト・エトワート君!」


突然の呼び声にハルトは心臓が飛び出るかというほど驚いた。

声が聞こえた方に振り向くと、副学院長が小走りで近寄ってきていた。


「ふ、副学院長先生」


ハルトが相手を認識すると副学院長はハルトの両肩を掴んだ。


「間に合ってよかった、ハルト君、今すぐ私と一緒に来なさい」


ハルトの予感は的中した。副学院長からのこの時期の呼び出しなど、卒業試験以外にはあるまい。

観念して副学院長についていくハルト。周りの学院生たちも同情の眼差しである。

たどり着いた先は小さな会議室であった。

副学院長から促され、机を挟み対面で座る。

副学院長が茶封筒から資料を取り出すとハルトの目の前に置き、説明を始めた。


「君の卒業試験の目処がついた。一番時間はかかるが、難易度はそれほど高くはないはずだ」


ハルトは資料に目を通す。行き先は12時の方角の国、アイスランドだった。


「”アイスランド南西の森にアンデット数体の目撃情報。原因の解明と報告を求む。”」


つい、資料の中身を朗読してしまうハルト。

補足説明を副学院長がしてくれる。


「護衛に腕の立つ冒険者を手配している、彼と共に馬車でアイスランドに行き、王に謁見。王の兵と共に現場に行き原因の解明をしてほしい」


王に謁見という言葉のプレッシャーに胃がキュッとなるハルト。

平民出身の彼にはそれだけで荷が重い。

ため息と断りの文句が出そうになるのを抑えてハルトは承諾をした。

ハルトは内容を変えてくれと言う勇気も持ち合わせていなかった。

副学院長はハルトが承諾したことをさも当然というように、準備していた旅費と地図をハルトに渡す。

さらに王に謁見するために必要になるからと言うことで、学院長と副学院長の署名入りの書状を渡した。


「では出発は三日後、それまでの二日間は準備のための休暇を与える。アイスランドは厳しい寒さの国だ、こちらで雪が降るのは当分先だが、アイスランドではすでに積もるほど降っているらしい。防寒具を多めに持っていくと良いだろう」


副学院長はハルトの心配をしつつ、アイスランドについて解説をしてくれる

ハルトは最初こそ神妙に聞いていたが、途中から聞き流していた。副学院長の過去の自慢話が織り混ざり始めたからだ。

そんなハルトの様子を察してか、副学院長は思い出したかのように最後の重要項目に話を移した。


「そうだ、旅の護衛をしてくれる冒険者だが、名前はガレスという。実力は中堅のなかでも上位で、年齢的にもベテランと言えるだろう。三日後の朝、日が登ったくらいに冒険者ギルドで待っていてもらうことにしてある。ギルドの受付で事情を話せば紹介してくれるはずだ」


ハルトは実力者が護衛してくれることに安心感を覚えたが、それと同時に強面の冒険者を想像してしまい、また胃が痛くなった。

顔を顰めたハルトに対し、副学院長は諭すように話す


「そこまで緊張することもあるまい。野良のアンデットなど、おおよそ下級のネクロマンサーか瘴気溜まりだろう。前者であればアイスランド王家がどうにかするだろうし、後者であればお手のものだろう?」


確かに副学院長の言うとおりであった。

ハルトは学術も武術も上の下という成績であったが、聖属性の魔法に関しては学年トップの使い手であった。

この世界には瘴気が溜まりやすい場所があり、瘴気から様々なモンスターが出現する。

その瘴気を唯一消滅させることができるのが聖属性の魔法なのだ。


「そう言われてみれば、そうですね。少し心が軽くなりました」


副学園長の言葉で心が軽くなったことは事実なので、少し大袈裟に副学院長を煽てるハルト

気分を良くした副学院長はハルトの肩を叩き


「まぁ、よろしくやってくれたまえ」


と言いながら部屋を出て行ってしまった。

ハルトはため息を吐きつつ、資料を整理し鞄に詰める。

忘れ物がないかを確認し終わると、鞄を抱えてぼーっとしていた。

行先は不安であるが、とりあえず、寮の自室に帰らなければ。と決意し、部屋を出た。



---



三日後の朝、ハルトは帝都の冒険者ギルドに来ていた。

前日に寮からギルドまでのルートを調べていたので完璧だった。

大荷物を抱えていたので、乗合馬車では少し他の乗客に迷惑をかけてしまったが。

朝から少し胃がいたい思いをしたハルトだが、まだ旅の序盤も序盤である、少しため息をつきギルドの受付嬢に話しかけた。


「すいません。大神官学院の学院生、ハルト・エトワートです。ガレスという冒険者を護衛として予約していると思うのですが・・・」

「はい。ハルト・エトワートさんですね、少々お待ちください。・・・確かに承っております。ガレスさんを呼んで参りますので少々お待ちください」


要件が伝わったことにより、とりあえず胸を撫で下ろすハルト。

あとは強面の冒険者でないことを祈りつつ待てば良いだけだ。

先ほどの受付嬢が視界の端に見えたところで、その後ろを歩いている男性を観察する。

受付嬢が連れてきた男性はハルトにとっては多少意外な感じだった。

ガタイこそ冒険者に相応しい、筋肉質でがっちりした体型ではあったが、顔がどこかのバーテンダーのような渋い二枚目の男性であった。


「お前さんがハルトっていう学生さんかい、俺はガレスだ、よろしく」


気さくに握手を求めてきたので、応えて握手をし、挨拶を返す


「ハルト・エトワートです。よろしくお願いします」


役目を終えた受付嬢が「それでは失礼します」とカウンターへ戻って行った。

ハルトはガレスが今回の旅についてどこまで情報を持っているか事務的に確認しつつ、お互いの齟齬を埋めていく。

話が長くなりそうなことを察したガレスがハルトを促す


「とりあえず、移動しながら話そう。まだまだ先は長い」


ガレスの提案をもっともだと思ったハルトは移動することにした。

学院から自前の馬車を用意してもらったわけではないハルトはアイスランドまでの移動手段を毎回確保しなければならない。

とはいえ帝都から各国の王都までのルートはすでに構築されているので困ることはない。

実際、帝都から周りの町や村までは毎日数本の馬車が出ている。

ハルトとガレスは帝都北門の馬車の乗合待合所に向かい歩き出した。



北門近くの大通りでは朝なのにも関わらず、屋台が多く出店していた。

屋台から流れていくる匂いを嗅ぎ、そういえば朝ごはんを食べ損ねていたなとハルトが考えているとお腹が鳴ってしまった。

しまったという顔をしてガレスの方を見るとガレスは苦笑いをしながら


「馬車の時間まではまだある。少し腹を満たしていこう」


とハルトに語りかけた。

ガレスの言葉にハルトは感謝し、屋台の方に歩き出した。

ハルトは細長いパンに肉と野菜を炒めたものが挟まっているものを指差し、ガレスに食べられないものは入っていないかを確認した後、2つ購入し、片方をガレスに渡した。

ガレスは少し驚いた表情をしたが、すぐに笑みを浮かべ軽く感謝の言葉を口にして受け取った。

その後、魔物肉の串焼きや果実水で腹を満たした二人は乗合待合所の建物の中に入った。



ハルトとガレスは乗合待合所の受付の目つきが悪い男性に話しかけ、アイスランドまで行くことを伝えると、受付の男性は大きな地図を取り出し、アイスランドまでの順路を説明してくれた。

ハルトは上着の内ポケットからメモ帳を取り出し、事前に調べたことと、受付の男性の説明に齟齬がないことを確認しながら説明を聞く。

帝都とアイスランド王都の間にある大きな街は全部で5つ。

その間を1日3時間から6時間の馬車で移動し、合計で6日かかる。

受付の男性にその説明通りの移動で問題ないことを伝えると、本日帝都の北にある大きな街まで移動する予定の馬車を紹介してくれた。

ハルトとガレスは乗合待合所を出て隣接している馬車の停留所に移動した。

紹介してもらった馬車に繋がれている馬にブラシをかけている御者らしき男性に声をかける。


「あの、すいません。この馬車が本日北の街に行く馬車で間違い無いですか?」

「ええ、間違いありません」


念の為、ハルトが持っている簡易的な地図を見せ確認が取れると、御者に乗車賃を払い、乗り込むために馬車の裏手に回り込んだ。

近くに控えていた護衛に挨拶をし、馬車の内装を覗き込む。

左右に座席があり、詰めて座れば8人は乗れそうだが、すでに4人がゆったり座っているので今回は6人乗りで移動するみたいだった。

左にハルト、右にガレスが座り、すでに乗っていた4人に挨拶をする。

左奥がこの馬車のオーナーの商人の男性で、その隣が商人の秘書の女性。

右奥が若い夫婦の奥さんで、その隣が旦那さんだった。

商人がキートンスさんで秘書がジョルジュさん、旦那さんがアッシュさんで奥さんがアイビーさん。

ハルトも自己紹介で名前と学院生であることを明かし、ガレスを護衛だと紹介した。

帝都民には学院の卒業試験のことは知られているらしく、キートンスさんとジョルジュさんは察した様子だった。


「この時期の護衛をつけての学院生さんの旅行ということは、卒業試験かな?」

「ええ、そうです」

「ほっほっほ。ご苦労様、頑張りなさい」


キートンスさんは朗らかな人だった。

そもそも乗合待合所の馬車はほとんどがこういった商人や役人の好意により、慈善事業的に成り立っている。

馬車での旅では道中にモンスターが出現するため、必ず護衛が必要である。

馬車も護衛も用意できない一般人は、こういった取り組みのおかげで安い乗車賃で馬車に乗ることができるのだ。

一応商人は乗合待合所に定期的に馬車を提供することで、本拠地の国からお墨付きをもらえるなどのメリットはあるのだが。

この仕組みは13国ほぼ全てで導入されていて、人や物の移動にかなり貢献している。


アッシュさんとアイビーさんは帝都民ではないらしく、卒業試験という言葉に首を傾げていたが、ハルトがどう説明しようか考えているうちにキートンスさんが説明し出してしまったので、相槌と補足をした。

オーナーなのにわざわざ他の客と一緒の席に座ることを選んでいるキートンスさんはお喋り好きなようだった。

キートンスさんを中心に和気藹々と話していると、護衛から準備完了の報告がキートンスさんに入った。

馬車内のみんなに声をかけると、キートンスさんは合図を出し、馬車が動き出した。

どうやら後ろから荷物だけの馬車も付いてくるらしい。


御者と門の警備兵が会話をし、手続きが終わると門から出た。

馬車から遠くなる帝都の北門を見ながら、ハルトはこれからの長旅を憂鬱に思いため息をついた。



ハルト・エトワートの長い旅はこうして始まったのである。

この作品の主人公はシフォンですが、第1部の主人公がハルトという感じです。

次回の更新は未定です。すいません。

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