Footage6「樹竜狩り、再び」
『マイグラント、次のミッションです。
前回はへレノールの依頼に従い、ガイア製薬へ攻撃を行いましたが……今回は、樹海中部に散在している樹竜を撃破したいと思います。
……わかります。確かに城塞街道のミッションでは、怨愛の修羅に手酷くやられましたが……今回は出撃寸前まで索敵を行います。
もし危険を察知すれば、すぐにあなたを回収し、ミッションを中断します。
樹竜は城塞街道とは異なり、殆ど野生化しているため、複数を一気に叩くことは出来ません。そのため、テュールと戦闘した地点から至近距離に存在する一体を撃破します。
よろしく……お願いします』
世界樹・樹海中部
『怨愛の修羅……反応はありませんね。安心しました』
フィリアの声に続き、ドローンのハッチが開き、離脱地点へ直進していく。
『目標地点まで……3……2……1……』
間もなくドローンから切り離され、樹海へ落下し、しばらく進んで着陸する。
『樹竜の位置はレーダーに表示していますが……まあ、いかんせん大型の竜種なので、見ればわかるでしょう』
歩行で目標へ向かいながら、武装を確認する。
『前回のミッションであなたが選んだ装備……それらを、へレノールから渡された魔法で強化しています。もちろん、基本のパワードスーツも魔力を随所に施してありますよ』
左腕に装着した大型パイルバンカーを見る。
『どうやらあなたはそれの扱いに慣れているようですし、何らかの思い入れがあるようです。杭射出用の火薬の威力を火炎魔法によって増強しています。それに従って杭の耐久力に難が出たため剛性を高め……』
フィリアが饒舌に武装について喋り始めるのを聞き流しながら、右手のニードルガンを確認する。装填されている大型ニードルを見ると、強烈に帯電しているのが分かる。右肩の二連グレネードキャノンは装填された砲弾に冷気と火炎が合成されているようだ。
『ということですが……マイグラント、理解して頂けましたか?……まあ、あなたなら実戦で完璧に扱えるでしょう。帰還の際にはぜひフィードバックをお願いします』
応えるようにブースターを展開して噴射し、高速移動を開始する。程なく、木々を薙ぎ倒しながら進む、大型の四足竜が姿を現す。
『樹竜……初戦ではありますが、既にこの世界に順応しているあなたならば……』
真っ直ぐ向かってくるこちらに対し、樹竜は咆哮しながら左前足を叩きつけ、地面から大量の根を槍のようにして突き出す。ブースターの噴射を止めながら身体を横向きにして前部の減速用ブースターを吹かして左へ回り込み、樹竜の側頭部目掛けて二連グレネードキャノンを発射する。弾速の速い下段の砲弾が素早く届いて冷気を爆散させ、続く上段の砲弾がそこに激突して爆発を起こす。樹竜は怯みつつも、姿勢を崩しながら右前足で空中を薙ぐ。軌道上に木々を高速で生やして壁を形成しながらも躱し、ニードルガンをバーストモードに変えて右前足首に五本のニードルを撃ち込んでスパークさせ、強制的に筋肉を硬直させる。
その隙に距離を詰めずにパイルバンカーをチャージし、突き出して爆発させ、杭を撃ち出す。樹竜は右前足が硬直したまま、しかし本能的な危機感故か頭部を避け、右肩口に受け止める。杭が深々と突き刺さった瞬間、一気に展開して光を発し、爆発して更に奥へ貫通して大爆発し、右前足を引きちぎる。
樹流は悶えながら後退し、表皮と背中に住まう苔と植物が一気に活性化し、根を絡ませながら右前足を模す。そこへ即座に二連グレネードキャノンを撃ち込んで破壊しつつ、樹竜は背中の木々を広げて翼のようにして、当然のように飛び立つ。
『マイグラント……あまり上昇されると目立ちます。早く殺していただけると幸いです』
羽撃きながら空中で大木を生成し、弾幕のように降り注がせる。左肩の六段三連装ミサイルを斉射して真正面の大木だけを破壊していき、樹竜が咆哮で威嚇したところに、二連グレネードキャノンを撃ち込んで口内を氷結させ、爆砕したタイミングで肉薄してフルチャージのパイルバンカーを顎下から撃ち込み、鼻先までを貫いて離脱し、杭の爆発によって頭部の半分以上を失った樹竜は落下していく。
追って降下し、樹竜が地表に激突すると同時に着地する。
『樹竜の絶命を確認。……結局、怨愛の修羅の気配は無し……お疲れ様です、マイグラント』
『樹竜の撃破、ありがとうございました。
魔法を搭載した武装の使用感は如何でしたか?
……強敵との戦いでなければ利点も弱点も把握しにくい、でしょうか……?
わかりました。次は……アースガルズの幹部に強襲を仕掛けましょう。
目的を果たす以上に……あなたの目的を知りたいのです』