Critical Footage4‐1「イニシャライズ・フォートレス」
『マイグラント、起きてください。
次のミッションは、前回の成果に伴うものです。
樹海の深部への進行を妨げるように作られた、アースガルズ随一の堅牢さ・巨大さを誇る“城塞”……
樹竜による防衛線が破壊された今、好機と見たガイア製薬は“城塞”を陥す作戦を立てました。
私たちは前回のように友軍識別機能を欺瞞し、ガイア製薬の一員としてこの作戦に乱入します。
まずは、城塞の前方にある防衛線を突破します。
大量の大砲や迎撃装置、兵力が集中しており、いくらあなたでも正面突破は極めて困難ですが……ガイア製薬の二足歩行兵器群を盾にして、迂回、防衛線最奥に配備されている、指揮官を排除することで敵軍を沈黙させたいと思います。
マイグラント。このミッションは必ず成功させてください。これが失敗してしまえば、ガイア製薬は恐らく、またアースガルズとの削り合いに終始することになる……
確実な遂行を、お願いします』
世界樹 アースガルズ城塞・防衛線
樹海の上をブースターを噴射しながら進むと、既にガイア製薬が大量の二足歩行兵器群と、十何体もの四脚機兵が展開しており、アースガルズ側の防衛兵器……古風な大砲や、投石機、弩砲に加え、ガイア製薬の機体残骸から剥ぎ取ったのだろう機関砲や、ロケットランチャー……と撃ち合っている。
「時代遅れの獣どもが……!」
パイロットの声が無線で聞こえ、間もなく最前線にいた四脚機兵が大砲の直撃を受けて大破する。
『マイグラント、防衛線は非常に強固ですが……右端は兵器の配備が薄く、配置されている兵力も少ないようです
迅速にそちらへ向かってください』
ブースターの勢いを更に増して地表へ突撃し、左腕に装着しているパイルバンカーを暖機する。木と鉄板を合わせて形成されたバリケードに到達したのに合わせてパイルバンカーを打ち込み、それを粉砕して突っ込む。
「うわああああ!?」
突如としてバリケードが吹き飛んだことに驚いたアースガルズの兵士たちが転け、こちらは無視して突き進む。
「ガイア製薬の機体が一機抜けた!内部の陣形を防御態勢に!」
『マイグラント、アースガルズが指揮官周辺の防御を固めようとしているようです……アースガルズの歩兵用装備ではあなたの装甲は貫けません、このまま指揮官まで突貫を!』
獣人たちの合間を抜け、時には真正面の獣人をタックルで激しく吹き飛ばしながら、城塞の正門前に立ちはだかる指揮官のところまで到達する。
勢いを緩めず、指揮官まで真っ直ぐ突進すると、指揮官の獣人の姿が明らかになる。巨大な機械仕掛けの斧を持った雄牛の獣人で、全身に纏う鎧も明らかに先進的なパーツが紛れ込んでいる。ブースターの勢いをつけたままパイルバンカーを突き出し、指揮官は斧の刃部分をチェーンソーのように高速回転させて縦に振り下ろして激突する。
『これは……ガイア製薬の上位特務機体のバリエーションの一つが持っている兵装を改造したものですか』
押し切られて右に押しやられ、ブースターで慣性を殺して着地し、指揮官と向かい合う。
「お主、ガイア製薬の者ではないな?傭兵か?」
『マイグラント、早急に殺してください。長引けばそれだけ、雑魚の相手もしなければならなくなります』
「樹竜を撃滅したのもお主か……」
指揮官は両足をしっかりと踏みしめ、爪先の鋼鉄製スパイクを打ち込んで構え、背面に複数配されたブースターで急加速し、勢いをつけて斧を薙ぎ払う。こちらはブースターの逆噴射で斜め後方に飛び退き、左肩の二連グレネードキャノンを撃ち込む。が、指揮官は図体からは考えられない速度で反応し、左半身側のブースターを噴射して避け、そのまま背面全てのブースターを起動して空中のこちらへ突進し、そこで胴体部を自身を接続して生命エネルギーを衝撃波として解放し、指揮官を地面に叩き落とす。そのまま右手に持っていたバズーカを構えて発射し、指揮官は咄嗟に左腕で防御する。バズーカの弾頭は着弾と同時には起爆せず、先端が彼の装甲を貫いてから一拍置いて連爆する。
「明らかに兵装が独自規格だ……!聞こえるか、本部!ガイア製薬の中に第三勢力が混じって……」
爆風から退いて無線を開いた指揮官の腹にブーストからの蹴りを極め、姿勢を崩したところにフルチャージしたパイルバンカーを解放し、彼の胸部を粉砕しながら貫通させる。
衝撃で吹き飛ばされ、指揮官は倒れたまま続ける。
「目的のない……突出した……個人……こやつは……危険だ……!」
間もなく、指揮官は息絶える。
『防衛線指揮官の撃破を確認。ガイア製薬の情報網へ流しておきます。
近くに補給物資を送りますので、城塞内部の攻略に備えておいてください』