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Final Footage「Valentine Day,Verdict Day.」

『聞こえていますか、マイグラント。

 あなたの活躍により、この世界は自らを縛る枠を越えました。

 残った宇宙の広がりも、空を照らす星々も、もう間もなく消え去るでしょう。

 マイグラント。

 せっかくですから、この世界最後の景色を二人で見届けませんか?

 待っています、マイグラント』
































 草創の平原

 白い光の中で傷が修復され、何の力か弾薬が補充されつつ、降下し、越えて、やがて着地するとそこは、空に月と太陽が同時に浮かび、足下を薄く水が覆う平原であった。

 正面に、背を向けた逆関節の二足歩行兵器が見える。明らかに機械である外見ながら、装甲が淵源を思わせるような蒼に染まっており、やや有機的な印象を受ける。

『見てください』

 兵器からフィリアの声がする。促されるままに彼女の視線の向こうを見やると、巨大な光の塊が虚空に浮かんでいた。

『この世界で死んでいった、数多の生命……その遺志を運んだ夢見鳥たちが集っています。綺麗だと……思いませんか』

 白い蝶の群れが向かっていく中で、フィリアは右手に、複数の銃器を強引に繋ぎ合わせたような異形の銃を生み出す。

『人はかつて、デートと称してこういった、感傷的な景色を想い人と共に眺めていたと言います』

 そして一歩ずつ方向転換し、フィリアはこちらへ向く。

「マイグラント。あなたは私の願いを叶えてくれた。新たな形を失ったこの世界に、歪みを与えてくれた。ですから……」

 右腕を上げ、銃のチャージを開始する。蒼光が漏れ出し、束ねられた銃器がスライドして変形し、凄まじいプラズマを形成し始める。

「私とあなた、どちらがこの先へ進むか……私たちお馴染みのコミュニケーションで、決めるとしましょう」

 垂直跳躍から銃を向け、トリガーを引く。凄烈なエネルギーの奔流が解放され、飛び退いて躱す。

「あなたはどんな世界に生きたいですか?私は……そう、あなたを孕みたい。マイグラント、私の手を離れて飛んでいってしまうあなたを、私の胎に閉じ込めて、永遠に私の伴をしてほしい」

 跳躍の硬直へアサルトライフルを撃ちながら左に移動し、フィリアは右肩から大型のレーザードローンを一機展開する。それは彼女の背後に追従しながらレーザーで弾丸を迎撃しつつ、背後へのブーストを行いながら着地し、こちらから離れるように滑り始める。

「もしかして、手加減していますか?舐められたものですね……」

 二連四連装ミサイルを放つと彼女は左肩の淵源の蒼光で形成する全方位球状シールドを展開して守られ、そこに重ねた六段三連装ミサイルもそれに阻まれる。

 反撃に異形の銃器からプラズマの奔流が吐き出され、偏差射撃も軽く切り返したブーストで躱すが、弾けたプラズマで少しだけ削られ、だが後隙にミサイルを撒き散らしながら高速接近し、アサルトライフルをバースト射撃してドローンの行動を固定しながら、シールドに負荷を与えていく。

「あなたの常套手段ならお見通しです……!」

 フィリアは後退しながらも左腕の装置を起動し、プラズマで形成した爆導索を振り回し、こちらの蹴りに合わせて大きく飛び退きながら振り下ろしてくる。生命エネルギーのバリアで身を守りつつ右に飛び、軌道上に複数のプラズマ爆発が起こっているのがわかる。

 そのまま三角に動いて距離を詰め、強化パイルバンカーを構えながら噴射剤をやや多めに消費して瞬間的ブーストをより速く行い、ノンチャージで当ててシールドの耐久に強く負荷を与える。フィリアは反射的にドロップキックをこちらに直撃させて位置を離しながら打撃を行い、レーザードローンで牽制しつつ離れていく。

「やはりあなたは強い……あなたの闘いを、誰よりも傍で見てきたのに……これほど、あなたという存在が遠いなんて」

 異形の銃器からノンチャージでプラズマ光線が連射され、こちらの直ぐ側で爆発して削ってくる。

 離れながら連射を中断してチャージを開始し、威嚇のように爆導索を振り回して待ち構える。敢えて深追いせずに両肩のミサイルをそれぞれ間隔を開けながら発射してシールドを削りながら、リロードの合間でバースト射撃を行って燃やしていく。

「ふふ……私は今、追い詰められている。その事実が……堪らなく嬉しい……!」

 真正面からブーストして突進し、フィリアがチャージし終えたプラズマの奔流を繰り出そうとするが、狙いに気付いたのか射撃体勢を解き、右にブーストしてから飛び上がり、高い垂直跳躍能力でこちらを飛び越えていく。だがこちらも即座に噴射を止めて反転しながら瞬間的ブーストを連続で行ってフィリアとの距離を詰め続け、強化パイルバンカーをチャージしながらアサルトライフルで直接シールド発生装置を狙う。

 バースト射撃の三弾目が装置を射抜いて小爆発で粉砕し、フィリアがその瞬間に胴体連結からのバリアを生じさせながら斜め後方に飛び上がり、異形の銃器のトリガーを引く。それを躱しながら最接近して生命エネルギーと赫々たる炎の衝撃波を起こしてバリアを剥ぎ取った上で大きく体勢を崩させ、そこに強化パイルバンカーを捩じ込んで撃針で胴体部を貫通させ、爆発させる。

「有り得ない……こんなことは……」

 狙い澄ました一撃でフィリアを吹き飛ばし、彼女は堪えつつも崩れ、機能停止する。

「なんて、あなたと戦うのに奥の手が無いとは……思っていませんよね?」

 上空から何かが落下し、フィリアの機体を叩き潰す。

「マイグラント、私にとっての特異点(まれびと)……」

 先程の機体の大きさを二回りほど上回る巨体の新たな機体がその威容を現し、身体の各部から蒼光が漏れ出す。

 フィリアの新たな姿は純然たる二足歩行兵器であり、四つの銃器が連結した籠手のような、奇怪な武装を両腕に施している。

「これは私の……あなたという存在への挑戦。あなたという存在を、傍で見てきたからこそ分かる……あなたは最初から、言葉など不要だった。初めから戦場(ここ)だけが……魂の居場所だったのだと」

 フィリアはブースターを吹かして瞬間移動にも近い高速で接近し、胴体コアから蒼光を解き放って広範囲を衝撃とともに焼き尽くす。

「全てを滅ぼし、焼き尽くすこと。それが人間の持ちうる最高の可能性であり、最大の存在意義……人間が人間らしくあること、それこそが、自然淘汰の完成形、とびきりのイレギュラーなのだと」

 こちらが発した赫々たる炎と争いながら、彼女から生じた力場が触れずともこちらの表皮を侵食していく。

「あなたを討ち、そして私こそがイレギュラー……特異点になってみせる!」

 瞬間移動で後退しながら両腕からレーザーをマシンガンのように乱射し、回避に専念するも何発かが掠め、淵源の蒼光で視界を妨害しながら一瞬で眼前に現れ、籠手からのレーザーが集結してブレードとなって右手で薙ぎ払ってくる。咄嗟に強化パイルバンカーで受けつつ、左手で突き返される。左側への瞬間的ブーストで躱したところへ、頭上で両腕を交差させてブレードを振り下ろす。しかし慣れていないのか、振り下ろした後に硬直したところを、一段階チャージした強化パイルバンカーを叩き込んで後退させる。

 慣性のまま瞬間移動で距離を離しつつ再び左手でレーザーを連射し、右手をブレードにしたまま振って光波を飛ばしてくる。再び回避に専念しながらミサイルを連続で飛ばし、その度に攻撃を中断しながら瞬間移動で回避する。

「これまでの闘いから思うに、あなたの闘いは良くも悪くも、そのパイルバンカーに偏っています。細かい削り合いに終始しながら、相手の見せた僅かな隙を一気に広げて、一撃で仕留める……」

 浮遊したままレーザーを乱射して、力場と合わせて強引にこちらを削り取ろうとしてくる。

「ええ、あなたは例外です。枠に嵌ったあの世界に辿り着いた、規範を焼く白い鳥……そもそも私が届かないことなど百も承知です。

 勝ち方には拘りません。あなたに勝ちたい……私を動かすのは、ただの好奇心です……!」

 機を窺ってレーザーを躱しながら、アサルトライフルをバースト射撃する。瞬間移動で躱され、その一瞬にロックオンせずにミサイルをばら撒く。再度真正面から一気にブーストして突撃し、フィリアは変わらずレーザーの乱射で迎撃し、こちらは身体から発する炎と突進の勢いでレーザーを弾きながら圧をかけるとフィリアは瞬間移動で右に逃げ、右手をブレードに変えながら斬り掛かってくる。そこにロックオンしていなかったミサイルが着弾し、その瞬間に一段階チャージした強化パイルバンカーを撃ち込んで吹き飛ばす。

「ふふふ……」

 フィリアは予想外の攻撃に笑みを溢しながら、着地する。

「こうして刃を交え、あなたと生命を削り合うこの感覚……あなたはどうですか、マイグラント?私とのデート、楽しめていますか?」

 重厚な装甲部がパージされ、身長と肩幅こそ変わらないがややシャープな外見となり、淵源の蒼光を放つコアパーツがかなり露出した状態へと転じる。更に左腕の籠手が右腕の籠手へ移動して合体し、代わりに左手には垂直二連アンダーバレル式のマシンガンが握られ、そして肩の武装が顕になる。

「滅びの白い鳥……あなたの翼をへし折ってみせる!」

 フィリアは飛び退きながら両肩の十六連装ミサイルを撒き散らしながら後退し、左手のマシンガンを連射する。マシンガンは実弾とレーザーを同時に発射し、素早い弾速と相まって独特のダメージを蓄積してくる。ミサイルは高速かつ凄まじいホーミングを見せるが、如何せんその速度の故に距離を詰めると明後日の方向へ飛び去っていく。こちらも両肩のミサイルを斉射しながら最後のマガジンとなったアサルトライフルをバースト発射していく。するとフィリアが右手の籠手から一斉にブレードを生み出し、巨大な三叉槍のようになり瞬間移動を絡めながら突進刺突を繰り出し、地表を滑るプラズマが拡散して削りながら、通り過ぎたフィリアがこちらの頭上で右腕を掲げて溜め、刺突こそ受けるものの、溜めからの振り下ろしは斜め右上に飛び退いて躱し、最後に溜めからの振り上げを繰り出し、間合いの外に出る後退を狩るように、軌道上に巨大かつ強力な光波が放たれ、それの直撃を受けて体勢を大きく崩される。

「マイグラント……!」

 フィリアはその隙を逃すまいと接近し、コアから淵源の蒼光で衝撃波を起こしてこちらを巻き込みながら吹き飛ばす。

「これで……!」

 再び右腕に三叉槍を形成して突進するが、こちらは咄嗟に生命エネルギーを転化したバリアで受け止め、しかしフィリアはそれを承知か否か通り抜けて距離を離しつつ、ミサイルを発射してくる。

 そちらへ反転しながらこちらも最後のミサイルを放って両肩の武装をパージして軽量化し、フィリアは瞬間移動でミサイルを避け、移動先に置いてアサルトライフルをバースト射撃し、フィリアの左肩のミサイルポッドを破壊する。爆破に怯みつつもリロードの終わったマシンガンを連射し、こちらもアサルトライフルをフルオートに変えて連射し、撃ち切ってすぐマズルを掴んで棍棒のような握り方に変え、マシンガンを躱しながら瞬間的ブーストで徐々に距離を詰めていく。そしてリロードに入った瞬間に猛然と距離を詰め、フィリアは右腕を三叉槍ブレードにして迎撃し、その刺突を躱しながら炎上させたアサルトライフルをフィリアの右肩に投げつけ爆発させ、ミサイルポッドを破壊する。フィリアが再び溜めから斬撃を繰り出そうとするところに燃料を一気に使って詰め寄り、蹴りでマシンガンを飛ばす。斬撃の直撃を咄嗟のバリアで受け止めつつ、それでも激しく押し込まれ、姿勢が崩れる寸前で飛び退く。

「わかっていますよ、マイグラント。あなたは、ここからが強いんです……!」

 フィリアが踏み込みながら切り払い、上半身を屈めて避け、素早く姿勢を戻して右拳で頬を殴り、フィリアも負けじと左拳を返してくる。それを強化パイルバンカーで弾き、フィリアは瞬間移動で退き、瞬間移動で詰め、移動中に溜めを終えて即座に振り下ろし、それを受けて大きく削られながら下に押し込まれ、再び瞬間移動で溜めの隙を潰しながら全力で薙ぎ払い、光波ごと直撃してパワードスーツを貫通して胴体を深く斬り裂かれ、再び隙を潰しながら溜め斬り上げを繰り出そうとする。

 その瞬間に生命エネルギーと赫々たる炎を混ぜ合わせた衝撃波を解放してフィリアの姿勢を崩し、フルチャージした強化パイルバンカーで彼女の胴体を貫通し、撃針を射出して連鎖爆発に巻き込み、フィリアのエネルギーが体内で暴発、輝きを増していく。

「流石……は……私の……マイグラント……」

 機体の損傷限界に達したフィリアが、右手を伸ばしながら爆発四散する。

「それ……でも……」

 破損し、機動力を失った胴体が浮遊したまま、フィリアはなおも言葉を紡ぐ。

「愛して、いますよ……」

 かろうじて頭部だけを動かし、視線を向けてくる。

「ですが……願わくば……あなたの行く末を、共に見たかっ……」

 動力を喪失し、完全に機能停止する。

 フィリアの絶命を契機に、光の塊が解け始める。中から現れたのは、白銀の巨龍だった。

 巨龍はこちらを受け入れるように両手を差し出し――
























イカれた世界。

イカれた規範。

闘い続ける歓びに……

ある意味で汚染された、停滞した世界。


それを踏み越えて、辿り着いた。

燃え盛る川の、更に向こう側。

全てを焼き尽くす、滅びの白い鳥。


終わりのない戦いを手放して、我々は進む。

死ねば終わる、理不尽な戦場へ。

いつか終わる、最強の探求へ。

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