Critical Footage13-1「All is fantasy」
『私からあなたに話せること、話しておくことはもうありません。
……ありがとうございました、マイグラント』
世界樹・最上層ギンヌンガガプ
少人数用のエレベーターから出ると、そこは地上からの蒼い光に照らされた、暗黒の宇宙空間だった。樹木の頂点とは思えないほど機械的かつ円形のフィールドで、中央に突き出た円筒状の物体の中に、淵源を思わせる蒼光で象られた、西洋風の長剣が浮かんでいた。
『あれです。あれが……私の、目的物です。
ともかく、まずは……補給しておきましょう。
何が起こるかわかりませんので』
宇宙というのにドローンが飛んできて傍に降下し、弾薬や武装を補充して自壊する。
『では……』
軽くブーストして円筒まで向かい、それに右手で触れる。
「待て」
爆発音とともに声が聞こえ、こちらが振り向くと、程なくして三体の機影が下から現れる。ブースターを吹かしながらこちらの正面に着地し、姿の詳細が見て取れる。
「遂にこの時が来てしまったか」
中央に降り立ったトールがそう言うと、右に立つテュールが続く。
「初めて戦った時に……無茶をしてでも殺しておくべきだったと、今では思う」
左に並んだヘイムダルが、ビームサーベルを構えながら加わる。
「強すぎる個人ってのは、野良犬じゃ成り立たねえのが世界の常識ってもんだ。首輪しか付いてないお前さんは、余りにも危険過ぎる」
「そういうことだ。すまないな、貴公」
トールが右手のプラズマキャノンを持ち上げ、臨戦態勢に入る。
「貴公のような猛者、願わくば一対一の決闘で雌雄を決したかった。だが、ガイア製薬の、ひいては世界の敵となれば、そんな我儘は言っていられない」
テュールも飛び上がって四脚を展開し、ホバリングを開始する。
「お前の強さはよくわかっているつもりだ。俺たちの全てを懸けて……殺させてもらう……!」
ヘイムダルが一気に突っ込み、ブレーキをかけてこちらの右側を通り過ぎながら右手の大型電磁ハンドガンを連射してくる。そちらを向いて後方に飛び上がりながら右手のアサルトライフルを連射して迎撃すると、テュールの特殊ショットガンが撒かれ、重ねてデトネイトバズーカと右肩の特殊ミサイルを発射する。バズーカを躱すとそこへ、ヘイムダルが飛び上がって流れ弾を躱しながら二連続ブーストで接近して猛然とサーベルを振り被る。バリアを発して受け止めると、それを踏み台にして飛び退き、中距離にいたトールがチャージを完了したプラズマキャノンから極太の光線を撃ち出す。寸前で回避したところに特殊ミサイルが到達し、爆破の衝撃でバリアが消失し、急接近してきたヘイムダルの蹴りを受けて吹き飛ばされる。重ねてテュールの左肩の三連装レーザーキャノンが放たれ、咄嗟に生命エネルギーを転化した衝撃波を放って相殺し、一拍遅れて頭上からトールの放った垂直プラズマミサイルが降り注いでくる。それを甘んじて受けながら、なおも接近してくるヘイムダルへ右肩の二連グレネードキャノンで迎撃し、着弾の目前で自動的に爆発させ、ヘイムダルの目算を誤らせる。
『切り札はあるものです、誰にでも……!』
回避行動から詰めようとしていたヘイムダルの動きが鈍り、そこへ一気に接近して蹴り込み、一本の撃針を囲むように三本の杭が高速回転するパイルバンカーをフルチャージして撃ち込み、ヘイムダルの薄い装甲を剥ぎ取りながら猛烈な勢いで削っていく。
「ちっ……!こいつ……!」
ヘイムダルが毒を吐きながら、緊急防御システムに任せて吹き飛ばされる。砕けた胴体部を一気に修復しながらバリアを張り、ミサイルを撃ちながら後退してトールと配置を入れ替わる。
『マイグラント、連携する相手との戦いの定石は一つ……囲まれないようにしつつ、とにかく素早く頭数を減らし、相手側の一人一人の負担を増大させることです……!』
トールは武装の重量に縛られないような異常な速度で飛びながら、左手のレーザーショットガンを連射してくる。こちらは躱しつつもアサルトライフルを連射し、左肩のレーザービットを展開してヘイムダルのミサイルを撃ち落とす。そこにテュールが特殊ショットガンをばら撒き、特殊ミサイルを重ねて、更にトールが右肩のシールド投射装置を三連射して退路を潰してくる。同時にプラズマキャノンのチャージが終わり、左肩の垂直プラズマミサイルと同時に発射し、こちらはパワードスーツから魔力対流を起こし、特殊ショットガンの子弾から飛び出る散弾を弾き返しながら、そちらへ強引に退避する。
「甘いぞ……!」
デトネイトバズーカがその先に置くように放たれ、しかしアサルトライフルのバースト射撃で弾頭を破壊し、既に展開されているビットがヘイムダルをしつこく追従して削り続ける。
そして弾頭を破壊した勢いのまま二連グレネードキャノンを発射してテュールを撃ち抜き、四脚に据えられたブースターが一基破損する。
「馬鹿な……!」
バランスを取るためにブースターの点火数を減らしながらバリアを張り、こちらから詰めつつ強化パイルバンカーを捩じ込んでバリアを粉砕し、そのままテュールの機体を粉々に粉砕する。
「そうか……俺は……ここで死ぬのか……」
ジェネレーターに誘爆して連続で砕け、最後に大爆発する。
「俺は……もっと……」
断末魔の言葉が爆発音に掻き消され、余韻に浸る間もなくトールがプラズマキャノンを放ち、狙いを外して地面に着弾させ、プラズマの爆風でこちらを削ってくる。強化パイルバンカーを放熱させながら飛び退き、変わらずレーザーショットガンを連射して圧力を強める。
「くそ、テュール……!俺より先に死ぬやつがあるかよ……!」
ヘイムダルが激しく狼狽しているが、トールは極めて冷静に攻撃を重ねてくる。
「この状況でテュールを墜とすとは……流石、例外と言うべきか?」
トールの猛攻を躱しながら二連グレネードキャノンをヘイムダルへ発射し、その一瞬で距離を詰めてきたトールがドロップキックでこちらを突き飛ばす。続けてシールドを二枚速度を変えて発射し、硬直するこちらに二枚が同時に着弾して、更に大きく姿勢を崩される。そこへビットと二連グレネードを回避して詰めてきたヘイムダルがブレードを振り被る。
「……」
トールが黙して飛び退き、生命エネルギーを転化した衝撃波をヘイムダルにクリーンヒットさせ、左腕を吹き飛ばす。強化パイルバンカーで追撃を行おうとすると、そこにヘイムダルもろとも撃ち抜くようにプラズマ光線が飛んでくる。
「トール……!?」
こちらはギリギリで制御して右手のアサルトライフルを犠牲にして逃げ、硬直したままのヘイムダルが直撃を受ける。
「ああ……そうかい……これが、運の尽き、ってヤツだ……」
間もなくヘイムダルが爆散し、こちらは滞空用の燃料を安定させるために着地し、トールも続いて降り立ち、正面で向かい合う。
「二度の不意打ちも通じないか。どうやら貴公が例外というのは、間違いないらしい」
『一対一です、マイグラント……ここなら補給はいくらでも行えますから……この戦い、全身全霊で……!』
「僕の力が、例外まで辿り着けるか……!」
トールが飛び出しつつ、レーザーショットガンを乱射する。向かって左側に回り込みながら、シールドを三連射で配置しながらプラズマミサイルを発射し、チャージして槍のようにしてレーザーショットガンを突き出してくる。左に瞬間的にブーストしながら右拳を繰り出し、胴体を捉える。しかしトールは反射的に下半身を丸めてドロップキックを当ててこちらを押しのけ、チャージし終えたプラズマキャノンを発射し、躱しながら二連グレネードキャノンを放つと反撃に撃たれたシールドに阻まれ、トールは遠ざかりながらレーザーショットガンで正確にビットを撃ち落としていく。
『レーザービットによる全方位攻撃をここまで往なすなんて……!』
こちらが距離の詰め方を見計らっている内にビットが全滅し、仕方なく左肩のレドームをパージする。
「山猫、僕の話を聞いてくれないか」
あちらがプラズマミサイルを撃ってから高速で接近し、一気に肉薄してドロップキックを構えながら殺人的な挙動で飛び退いてこちらの強化パイルバンカーの振りを空かし、そこにチャージしたレーザーショットガンを撃ち込んでくる。
「僕は正直、世界樹にも、この世界の行く末にも、強さにも興味はない。ただこうして……」
プラズマキャノンをチャージせずに連射しながら、こちらの退路を潰すようにシールドを投射し、こちらが高速で瞬間的ブーストを何度も行って攻撃から逃れながら、接近の隙を窺う。
「こうして、ただ戦っていたいんだ。だがそれは、終わりのない戦いが欲しいというわけじゃない。僕はただ、誰かとこうして競い合うのが好きでたまらないんだ」
弾切れになった左肩のシールド投射装置をパージし、プラズマミサイルも最後の発射を行ってパージされる。
「ふっ……おかしいな、直前に補給しておいたはずだが……」
好機とばかりに二連グレネードキャノンの最後の砲弾を発射してパージしながらブーストで突進を仕掛け、あちらもレーザーショットガンの最後の弾を放ってグレネードを破壊して投げ捨て、右にブーストしながら残る燃料を注ぎ込んだ高速機動でこちらの背後を取り、フルチャージしたプラズマキャノンを発射する。こちらは止まりながら反転し、慣性に抗いながらブーストを再度行って突進し、右半身で光線を受けながら接近し、フルチャージした強化パイルバンカーをトールの胴体に捩じ込み貫く。止めに撃針を発射して吹き飛ばし、連鎖爆発で決着をつける。
「ははっ……そうだな……」
落下し、そこでもう一度爆発する。
「悔いなく生きたさ……どんな人生も、終わり方はこれでいい……」
こちらも追って着地し、深呼吸のように肩を上下させる。
『ガイア製薬の隊長を全て撃破……マイグラント、まだ気を抜かないでください』
「だが……山猫。僕は負けたが……それで、ガイア製薬が世界樹を諦めたわけじゃない……」
『マイグラント、世界樹に向かってくる複数の反応……これは……ガイア製薬本社の、決戦艦隊……!?』
フィリアが驚き、トールがなおも続く。
「僕は……貴公という強者に出会えただけで満足だ……あとは……貴公の好きなようにするといい……」
機体が限界を迎え、千々に砕け散る。




