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Footage11「神を喰らう白雷」

『マイグラント、これより世界樹第二層・ミーミルの攻略に移ります。

 私が確認したところでは、第一層では未だフレス・コピーとガイア製薬の戦闘が継続しており、そこに私たちへの追撃を諦めたラタトスクの残りが投入されているようです。

 ですが……ガイア製薬が樹海で展開していたほぼすべての戦力が投入され、中でもやはり、トール、ヘイムダル、テュールの三名が別格の戦果を挙げており、そう遠くなくここまで到達する可能性が高いです。

 今までと変わらず、私たちは上を目指しましょう。

 世界樹まで到達したとなれば、ガイア製薬は本社の戦力すらここに集中させてくる可能性もありますから……』
























 世界樹内部・第二層ミーミル

 隔壁の上で補給と換装を終え、先を見上げる。

『残るアースガルズの戦力は、へレノール、エイクスュルニル、そして頭目たるヴィゾヴニル』

 何も躊躇うこともなく上昇していく。

『大半が初見の相手ですが、フレスとラタトスクの件もあります。あちらが数の暴力に頼ろうとする傾向が無いとは言えませんので、警戒を緩めないように』

『……』

 上昇を続けていくと、突如としてノイズが走る。

『やあ、君の同胞、へレノールだ。

 世界樹の観光は順調なようで嬉しいよ。

 だが……悪いが、君の旅路はここで終わる』

『頭上より高速接近する敵性反応!来ます!』

 戦闘機形態のへレノールが体当たりをするようにこちらのギリギリを通り抜け、反転して上昇して高度を合わせ、人形態に変形する。

「城塞で戦った時よりも遥かに、決意と殺意に満ちているな。そういう、本物の箔は簡単には手に入らない」

『へレノール……』

「ああ……君の声は懐かしいな、フィリア」

『マイグラント、私は……ようやく彼の正体に気付きました。それに、最初の闘いであなたを渡り鳥と呼んだ理由も』

 へレノールと共に上昇しつつも、あちらはまだ臨戦態勢に入っていない。

『マイグラント、彼はあなたと同じ……私の下に流れ着いた、狂人です。あなたの四人前に……そして樹海での戦闘中、謎の大爆発に巻き込まれて行方不明となっていました』

「君が……君たちが、怨愛の修羅と呼んだあの少女。あれが起こした爆発に、私は巻き込まれた。それからずっと、私は……」

 間もなく上昇限界に到達し、離れて各々広い足場に着地する。

「同胞。私の願いを聞いてくれないか」

『マイグラント、耳を貸す必要はありません。彼は敵です』

「私のこの身体も、フィリアに貰ったものを自分で改良していった結果だ。特に周波数を合わせずとも、彼女の声は私にも聞こえる。

 フィリア、君にも聞いてほしいが……君たちは、この世界を歪ませ、せっかくの輪廻のシステムを破壊しようとしているのだろう?

 それを、止めてくれないか」

『マイグラント』

「同胞」

 言うまでもないと左腕のパイルバンカーから蒸気を発すると、へレノールは頭を振る。

「残念だ、同胞。やはり君は、この世界を滅ぼす危険因子だったようだ。

 この世界の正常な夜明けのために……消えろ、特異点!」

 へレノールがブーストで飛び出し、それに応えるようにこちらも全速力で突撃する。こちらは右手のアサルトライフルを、あちらは左手のビームマシンガンを撃ち合い、擦れ違ってから向かい合う。

「所詮君は狂人、人の言葉しか解さないだろう」

 右にホバー移動しながら左肩の二連四連装ミサイルを発射し、アサルトライフルを垂れ流して牽制する。へレノールは飛んで動きながら同じく左肩のエネルギーシールドを展開し、右肩の二連ミサイルを発射する。しばらく進んだ後、分裂し、複数の光波ミサイルになって追尾してくる。

「私には特別な智慧がある!夢見鳥が私には見えるんだ、語りかけてくるんだ!」

 連続で瞬間的なブーストを行ってこちらに高速で接近しつつ、左手のマシンガンを乱射する。それを迎え撃つように生命エネルギーを衝撃に変えて解放し、そしてへレノールも咄嗟に同じように胴体部から衝撃波を起こして相殺し、右腕と一体化したレールガンを発射してくる。淵源を思わせる蒼光が迸り、蛇が進むような独特な軌道で、回避したこちらの右脇腹を抉る。こちらもそこから二連続の瞬間的ブーストで詰めつつ、チャージしていないパイルバンカーを直接叩きつける。あちらも瞬間的ブーストで回避しながら、そのままの勢いで大きく距離を取って戦闘機形態に変形して飛び立つ。

「同胞、教えてくれ。この世界は、ひたすら闘いに満ちている。それは私たち狂人が、夢見に飽いて望み続けてきたことだろう?」

『黙ってください、へレノール。マイグラントは私とともに、この闘いを最後まで生き抜きます』

「だとすれば君は、その得体の知れない飼い主のために、ここまで命を張って闘い続けてきたのか?下心か同情なのか知らないが、君の力をそんなことのために消費するなんて勿体なさ過ぎる」

『マイグラント、もう一度言いますが、耳を貸す必要はありません。排除してください』

 へレノールが高速で頭上を通過し、ミサイルをばら撒きながらレールガンを撃ち込んでくる。ミサイルこそ回避と迎撃が間に合うが、レールガンによる射撃の異常な軌道に確実にダメージが蓄積していく。

「私たちはいつも間違いを犯す。

 それはどうしようもないことだ。

 だが今から成すことが間違いだと知ってなお、歩を進める者がどこにいる?

 私たちは私たちだけで生きるべきではない。

 私たちは夢見鳥の導くままに、終わりのない闘いに身を浸すべきだ!」

『……』

 フィリアが沈黙し、再びへレノールが向かってくるところで右肩からレーザービットを展開しつつ、正面からブーストで特攻して蹴りを叩き込み、姿勢を崩させて強制的に人形態に戻させ、脚部でブレーキをかけて踏みとどまってくる。間髪入れずに猛追し、チャージしたパイルバンカーを叩き込む。発射まではいかずとも杭が射出され、間一髪でへレノールはエネルギーシールドを展開し、本体への直撃こそ防ぐものの、強烈な威力によってシールド発生装置が限界を迎えて破却される。その隙を潰すようにへレノールが再び生命エネルギー衝撃波を解放してこちらを吹き飛ばし、無茶なチャージ動作とともにレールガンを三連射してくる。こちらは切り返しを含めて一発ごとに高速で左右にそれぞれ瞬間的ブーストを行い、三発全てを回避する。

「もう読んだか……!」

『マニュアルエイムによる正確無比な偏差射撃……それにエネルギーの指向性がふらつくように調整したレールガンを合わせ、驚異的な命中率を確保していた……というわけですか。流石は……』

「私の同胞だ」

『私の渡り鳥』

「正直驚いているよ。私が明確に押されている状況だ。城塞の時から思っていたが、まるで君に致命傷が入らない。速度では間違いなく私が勝っているのに、だ」

 稲妻のような速度で二連続で瞬間的なブーストを繰り出し、こちらの意識外から最接近して蹴りつけてくる。対応が遅れてよろけたところにマシンガンを注ぎ込み、その全ての直撃を受けつつも次いで繰り出されたレールガンの射撃を咄嗟に張ったバリアで弾きつつ、パイルバンカーを展開し、へレノールは分かりきっているとばかりに接近と同じ速度で離れていき、そこで待機していたビット全員で彼の右肩の武装を撃ち抜く。

「くっ……!?」

『マイグラント!』

 パイルバンカーをフルチャージにしたまま、燃料の許す限り連続でブーストして一気に肉薄し、一瞬だけ注意を逸らしたへレノールの胴体を狙って杭を射出し、過たずに貫いて吹き飛ばす。彼が堪え、両足で粘るが、展開した杭が連鎖爆発を起こし、大破させる。

「君は既に……私には、届かない高みに居たのか……」

 遺言とともに、へレノールは爆発四散する。

『へレノールを撃破……ようやく静かになりましたね、マイグラント。

 彼はどうやら……この世界のあり方を、肯定していたようです。

 終わりのない戦い……天国の、外側……』

 破壊されたへレノールの機体残骸に歩み寄り、レールガンの破片を掴み上げる。

『同じ夢を見ていたとしても、それに対する感じ方は意識体それぞれで異なります。

 あなたは……いえ、あなたが本当は何を目的としているのか、それは私の目的が果たされる瀬戸際でわかるはず。

 それまでは、その沈黙を尊重します。

 さあマイグラント、第三層へ向かいましょう』

 頷きで返し、上昇を再開する。

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