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Critical Footage9-4「虹の橋を渡って」

『マイグラント、いよいよミンドガズオルムを撃破する準備が整いました。

 あなたには……単発式の背面グレネードキャノンを改修した、フィールド投射装置“ミストルテイン”を装備してもらいます。

 怨愛の修羅から得られた情報を元に作り出した、魔力防壁を破壊、相殺、継続的に無力化する杭型の砲弾を射出します。

 これをなるべく頭部に近い地点に着弾させてください。

 その後、ギャラルホルンで魔力対流の消滅した地点を撃ち抜き、露出した体内を一斉に攻撃します。

 それと……とても重要なことなので答えてほしいのですが、あなたは私のことは好きですか?

 ……いえ、巫山戯てはいません。籠手や脇差に宿った炎を解析したところ、通常の炎ではなく、感情に反応してその勢力を無尽蔵に高める性質があるようで……特に、愛情に強く反応すると……

 ……ええ、そうですね。あなたが私の要求に、嫌な顔一つせずに応え続けてくれたことを考えれば、これは愚問でしたね。

 さあ行きましょう、マイグラント。

 今度こそ……世界樹に到達しましょう』
























 世界樹・樹海深部

『マイグラント……必ず無事に帰ってきてください』

 ドローンから切り離され、粉砕されてそそり立つ大地の先端に降り立つ。アーチを描くミンドガズオルムの胴体が周囲を覆い、樹海を形成していた木々は無惨にも粉々にされていた。

「貴公、待っていたぞ」

 既に待機していたトールが並び、それにテュールが続く。

「山猫、こちらは準備万端だ。ヘイムダル……ギャラルホルンも万全な状態だ。どうにか、三射までなら安定して行えるようにした」

『三発……安心……とは行きませんが、多く撃てて損はありません。あとはへレノールの到着を待つだけ……』

 フィリアがそう言うと、まるで会話を聞いていたかのように世界樹から白い機影がブースターを噴射しながら向かってくる。機影は三人を通り過ぎ、大きく円を描いてこちらの隣に到達し、戦闘機状の形態からやや大柄な二足歩行兵器となって着地する。

「やあ。君の同胞、へレノールだ。

 遅くなって済まない。これを怪しまれずに持ち出すのは、少々骨でね」

 シャープな頭部から淵源を思わせる蒼い光を放ち、噴射用の補助ユニットがそのまま合体したような分厚い胴体に、細身ながらも重厚な装甲が複数配された脚部の、間違いなくワンオフであろう威容を持っている機体だ。

『マイグラント、この場の全員の回線を繋げます……

 総員、戦闘配置。ミンドガズオルム撃破作戦、開始します。

 マイグラント、まずはミストルテインの有効射程まで接近してください』

 四人が一斉にブースターを吹かして飛び立ち、こちらが先陣を切ってミンドガズオルムへ接近する。動きを停止していたあちらが、こちらを把握した瞬間に動き出し、大口を開けて突進してくる。

「動き自体は単調なのが救いか……」

 トールが恐ろしいほど高速で動き、ミンドガズオルムの喉奥目掛けて極太のプラズマ光線を撃ち込む。が、まるで効いておらず、仕方なく四人はそれぞれの方向へ避ける。

「ここは機動力が一番ある私がターゲットを取ろうか」

 へレノールが変形しながらミンドガズオルムの視界に入るように飛び、人形態の右腕に装着されていたプラズマミサイルを大蛇の目元に撃ち込む。表皮の魔力対流にそれは打ち消されるが、ミンドガズオルムは狙い通りにへレノール目掛けての突進を開始し、突き進む。

「君が撃ちやすい軌道に誘導する。準備してくれ」

 へレノールが曲芸のごとき殺人的なターンを決めてこちらへ戻り、ミンドガズオルムも釣られて戻って来る。こちらは慎重に高度を合わせ、偏差を計算してミストルテインを発射する。高速で過ぎ去ろうとするミンドガズオルムの頭部と胴体の継ぎ目に砲弾が突き刺さり、展開してその部分の魔力対流を無効化する。ミンドガズオルムは突進を止めず、しかし途中で地中に潜る。

「ヘイムダル!発射用意はできているか!?」

 テュールが叫ぶ。

『任せとけ、お坊っちゃん。山猫にやられた分もあの蛇に払わせてやる』

「どうやら地中からの不意打ちにやり方を変えたらしい。テュール、貴公が最も機動力が低い。警戒しておけよ」

 トールが続けた後、へレノールが人形態に戻りながら滞空する。

「来るぞ……!」

 露出した胴体が高速で動きながら、大地の裂け目から地中を蠢くミンドガズオルムの頭部が見える。こちらの真下で停止し、そのまま勢い良く飛び出て喰らわんとする。それを読んで全速力で逃れ、ミンドガズオルムが一瞬だけ大きく身体を地上に出して停止する。

『外さねえよ……!』

 空の彼方から凄まじい閃光が灯り、瞬きの内に到達し、フィールド発生砲弾ごとミンドガズオルムの表皮を貫いて大爆発を起こす。大気が揺れるほどの大絶叫を放ちながら衝撃によって倒れ、隙を晒す。

『今です!火力全集中!』

 フィリアの声に従い、双身式のレーザーキャノンを両腕に、三連装レーザーキャノンを両肩に装備したテュールが、その全ての装備をフルチャージで撃ち出し、顕になったミンドガズオルムの筋肉に叩き込む。続いてトールも両腕に持ったプラズマキャノンから極太の光線を注ぎ込みつつ、両肩にそれぞれ装備した三十連装ミサイルを十発ずつ三連射する。重ねてへレノールが左手の発振装置を振るって三日月状の光波を六発一気に飛ばし、そこでミンドガズオルムは身体の制御を取り戻して起き上がる。

『ギャラルホルンのエネルギー装填まで少し時間がかかる!それまで頼むぜ、坊っちゃん!トール!』

 ヘイムダルの通信に続き、へレノールが言葉を発する。

「傷が修復されていく……」

 そのまま彼が左肩の光波ミサイルを撃ち出し、六つの光の筋が動き始める直前のミンドガズオルムに届き、傷口の修復を押し留める。

「やるな、へレノール!」

 トールがフルチャージしたプラズマ光線を、ミンドガズオルムの動きに合わせながら完璧に傷口へ叩き込む。怯みもせずに敵意をトールに向け、地中を潜って向きを合わせて飲み込もうとしてくる。

「ははっ、これくらいでなくては詰まらないな」

 トールは装甲を展開し、瞬間移動と見紛うほどの超高速で脱し、傷口に肉薄して胴体部のコアの出力を急上昇させて衝撃波を起こし、余りの威力にミンドガズオルムの身体が押されて地中への入射角が崩れる。頭部を地中に捩じ込んでつっかかり、そこに詰めたこちらの右手に持ったレーザーマグナムを一発撃ち込み、着弾と爆発で更に抉る。

「順調だな、同胞」

 へレノールが上機嫌にそう言いながら、光波ミサイルを追加で撃ち込んで傷を維持する。

「油断するな」

 テュールが若干暇そうに砲身の冷却を行いながら呟き、ミンドガズオルムが岩盤を強引に破壊することで地中に潜航し、再び地中からの急襲のために泳ぎ回る。

『エネルギー装填完了だ!』

「速いな、流石だ」

『次は脳天をぶち抜きたいところだな!』

「ふっ……だそうだ、山猫。任せたぞ」

 テュールの言葉に続き、今度はトールを狙ってミンドガズオルムは地中から飛び出す。その瞬間にミストルテインを放ち、両眼の中間、大蛇の眉間に見事に当てる。

「着弾確認した、ヘイムダル」

『もちろん見えてるぜ、トール!』

 ミンドガズオルムの動きが止まっているかと思えば、トールが食まれながらプラズマキャノンを破却して強引に手で口を押し留めている。

『俺は外さねえからな……!』

 再び空の彼方から閃光が走り、過たずに貫く。着弾の瞬間にトールは一瞬で逃れつつ、落下していくプラズマキャノンを拾い直してかつ倒れるミンドガズオルムからも離れきる。

「少し肝が冷えたな」

 トールは何事もないようにそう言って、傷口が狙える高度まで上昇する。

「無茶をするなトール。俺と耄碌爺では、二人がかりでもお前の損失は埋められん」

 テュールが即座にチャージしながら並び、二人で同時に全火力を叩き込む。

「いたずらに長引かせても不利なだけだな……よし、私が極めよう」

 へレノールがそう言い、右肩のあからさまに大仰なユニットを展開し、右上半身と一体化するような超大型レールガンが姿を現す。

「さあ、ケリをつけようじゃないか……見せてくれ、君の本当の力を……!」

 恍惚に満ちたようなへレノールの声が聞こえ、銃口から凄まじく昏く眩い蒼光が放たれ、上位存在からの裁きを思わせるような輝きが柱を成し、焼き尽くす。へレノールは反動で上昇しながらレールガンを格納して右肩に戻す。

『あんなものを作るなんて……彼は変態なのでしょうか……』

 わざわざフィリアが回線を切断してまで呟く。

 が、威力は確かなもので、傷口から覗くミンドガズオルムの筋繊維は焼き焦げ、酷く損傷しているようだ。

 そして猛然とミンドガズオルムが起き上がり、怒りを顕にして咆哮する。一瞬で傷を修復し、フィールドを吹き飛ばす勢いで魔力対流を起こし、周囲を意図せずとも凄まじい魔力の嵐に飲み込み、機敏に動き始める。

「ふむ……」

 流石にトールも驚き、ミンドガズオルムがこちらを見据えて再び咆哮し、大量の隕石を召喚する。こちらが弾幕の合間を縫って動いていると、あちらが地面を捲り上げながら頭部を素早く振り、それがテュールに直撃して吹き飛ばされる。

「がぁっ!?」

 激しく空中を転がり、大地に落ちて行く。

『クソッ、一撃で機体が……!

 済まないトール、山猫……俺は撤退させてもらう!』

『テュールが作戦区域を離脱』

 開かれた回線で全員にそう伝え、トールが回避しつつも続く。

「テュールのことは気にするな。あの程度でどうにかなるようなら、そもそも第三隊長になどなっていない」

「そうだな……同胞、君の飼い主が持ってきたプランが破綻しているような気がするが、この後はどうする?」

『マイグラント、安心してください。あなたの左肩に装備された、大型兵器でミンドガズオルムの全ての装甲を撃ち抜きます……!』

 フィリアは再び回線を切り、こちらにだけ声が聞こえるようにする。

『怨愛の修羅……その炎の力を可能な限り詰め込んだ、破滅的な威力の……超大型パイルバンカー“トロヒリダエ”です。

 ブリーフィングで伝えた通り……』

 ミンドガズオルムが更に魔力を解放し、こちらの三人ごと吹雪に包まれ、ピンポイントに落雷が降り注ぐ。

「弾除けにすらならないな」

 それでもなお余裕な態度で回避を続けながら、トールがプラズマキャノンを撃ち込む。しかし圧倒的な出力の魔力対流に阻まれ、弾かれる。

「同胞、飼い主との内緒話は構わないが、なるべく早く終えてくれると助かるな」

 へレノールが左側の武装で、こちらに注ぐ隕石や落雷を弾き返しつつそう言うと、フィリアが続ける。

『炎の威力は、あなたの意思に応じて増大する……それも、愛情に強く。

 マイグラント……私たちは……!』

 フィリアが回線を開く。

『トール、へレノール両名。マイグラントがミンドガズオルムに最接近します。進路を切り開いてください』

「了解した」

「無茶を言う……だが、それでこそ君だ」

 継続してへレノールが落雷を弾きながら、トールが前方の魔法を撃ち落とし、相殺していく。

『マイグラント……!一撃で決めてください……!』

 頷きで返し、トールの拓いた道を全速力で突っ切りながら左肩の超大型パイルバンカーを展開し、左腕に接続して暖機する。加速度的に内部温度と出力が上昇していき、ミンドガズオルムの眼前に到達するときには既に、内部から赫々たる炎が溢れ出そうとしていた。ミンドガズオルムはこちらを飲み込もうと襲いかかり、その瞬間に上顎に押し当て、杭を解放する。想像を絶する空前絶後の破壊力が迸り、反動でそのまま地面に叩きつけられる。巨大な杭があちらの脳天を完全に貫通し、魔力対流が再び消失する。続く杭の大爆発で表皮を全て剥ぎ取り、巨大な穴が空いてなお、まだミンドガズオルムは暴れ狂う。

「ヘイムダル。最後の一射だ。ギャラルホルンが焼き切れてもいい、最大出力で撃て」

『任せろ、トール。動力炉高速反転、リミッター解除、出力限界突破……行くぞ、当たるなよ……!』

 前の二射を遥かに上回る威力の閃光が空を走り、ミンドガズオルムを貫く。極限までダメージが蓄積した頭部が千切れ飛び、落下する。残る胴体も力なく斃れ、切断面から夥しいまでの血を流す。

『生体反応の消失を確認……作戦は成功です』

「今回ばかりは少し疲れたな。へレノール、貴公はどうだ」

「私はそうでもない。同胞と肩を並べられた喜びのほうが勝っているよ」

 二人が軽口を叩き、へレノールが続ける。

「私はこれ以上留守にすると良くない。早々に帰投させてもらう」

 戦闘機形態に変形しつつ、世界樹へと飛び去っていった。

「山猫、協力するのは今回が最初で最後だ。アースガルズを掃討するという点で、実質的に協力しているような状況にはなるかもしれんが……それも、肩を並べて、というわけではない」

 トールはそう言い残すと、城塞方面へ飛び去っていく。

『マイグラント、お疲れ様でした。あなたを労うとともに、世界樹探索に向けての準備をしたいので、すぐに回収に向かいます』
























『マイグラント、改めて言わせてください。

 ミンドガズオルムの撃破、本当にお疲れ様でした。

 怨愛の修羅の力を解析して得た二つの武装……それが無ければ、どうやっても現状の戦力でミンドガズオルムを突破するのは不可能でした。

 彼女があのタイミングで我々を襲撃し、あなたが彼女を上回った……偶然にしては出来すぎていますが、薄氷の上を進むような、本当にか細い可能性を手に入れたんですね……

 あなたが来てくれて、本当に良かった。

 今はただ、傷を癒やしてください……』

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