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Critical Footage9-1「黄昏に燃ゆる滅びの羽」

『マイグラント、次のミッションです。

 大氷壁の崩壊、そしてレールキャノンを巡る攻防により、アースガルズ側は兵力を大幅に欠いています。

 この機を逃さず、ガイア製薬よりも先に世界樹に到達してしまいましょう。

 樹海深部の状況は、ガイア製薬も把握しきれていません。そのため、城塞突破の時よりも更に慎重に、先遣隊を送り込んで調査せざるを得ません。

 その点、私は予め樹海深部の情報を集めています。アースガルズの強敵の大半は世界樹内の拠点に用意されており、樹海深部は防御が極めて薄くなっているようです。

 伏兵や罠に警戒する必要はありますが、ここは一気に駆け抜けたほうが安全でしょう。

 マイグラント……もうすぐ、私の目的を明かすときが来ます。

 あなたには、どうか私の伴をしてほしい……

 いえ、今感傷的になっても無意味でしたね。

 慎重かつ大胆に……目的地を目指しましょう』
























 世界樹・樹海深部

 大氷壁を越えた先にある営巣地に作られた格納庫より外に出ると、樹海は黄昏に飲まれようとしていた。眼前により大きく聳える世界樹によって光が大きく遮られ、遠くが既に昏い闇に覆われている。

『周囲に敵性反応無し……ガイア製薬も、野生生物も、アースガルズも、樹竜も……何もかもが、見当たりません……』

 フィリアが怪訝な声色でそう言う。

『何か……不気味です。……ですが、ここで立ち止まるわけにも行きません』

 頷きで返し、ブーストで樹海を進んでいく。

『マイグラント……テュールから渡された情報を元に、あなたのパワードスーツを強化しています。もう既に感じているかもしれませんが、機動力も、反応速度も、筋力も、全て向上しているはずです。

 エネルギー駆動効率も改善され、今までよりもビーム兵器や魔法も使いやすく、残弾も増加しています』

 静寂に包まれた樹海の中に、ブースターの噴射音だけが鳴り響く。

『間もなく世界樹ですが……こうも呆気なく辿り着いてしまうとは……』

 瞬間、レーダーに敵影が映り、けたたましいアラートが鳴り響く。

『ッ……!?最大級の脅威……!怨愛の修羅です!』

 前方に巨大な火球が落下し、こちらは反射的に生命エネルギーをバリアに転化して衝撃を弱め、着地する。凄烈な爆発によって周囲の木々が消し飛ばされ、飛び散った赫々たる炎が燃え移る。

 炎の中から現れたのは予測通り、片耳の少女だ。昏く澱んだ金色の瞳をこちらに向けてくる。

『……託すか否か。ここで決めるべきだ』

 変わらず男の声が聞こえる。

『くっ……怨愛の修羅……明らかにこちらを狙って来たようです。逃げる……とてもその隙があるようには見えません。覚悟を決めましょう、マイグラント……!』

 こちらが身構えると、少女も六連装を左手に、脇差を右手にそれぞれ構える。

『……行こう、ありのままの世界のために』

 少女が力み、爆炎で加速して突っ込んでくる。

『怨愛の修羅、来ます!』

 初戦と同じように胴体部を接続し、生命エネルギーを変換する。少女が脇差を突き出し、その切っ先をバリアで受け止める。尋常ならざる威力によって貫かれるが、本体にまでは届かずに構え、フルチャージしたパイルバンカーを撃ち込む。しかし少女は脇差を手放しつつパイルバンカーの先端を右手で塞ぎ、射出された杭を握り締めて射出の勢いで吹っ飛ぶ。吹き飛びながら立て直し、爆炎が滾る籠手を装着した左手で杭を握り締め、炎を通して槍にし、着地しながら投げつけてくる。

『馬鹿な……!?あれを素手で受けて投げ返すなんて……!?』

 瞬間的なブーストで躱し、左肩からレーザービットを全て放出し、パイルバンカーに杭を再装填しながら前方へ飛び込み、大型ショットガンを撃ち込む。少女は地面に落ちた脇差を何らかの方法で右手に呼び戻し、ビットのあらゆる方向からのレーザーを異常な挙動で全て躱しながら、左手から細い熱線をばら撒いて牽制してくる。当然ショットガンの弾丸など掠りもせず、逆に熱線は地面に当たった瞬間に小爆発を起こして衝撃を与えてくる。

『……レーザービットか。前に戦った時よりも感情を読み取れるな』

『マイグラント、冷静に……あれだけの高速機動、長時間維持できるはずがありません。必ずあなたが一撃を叩き込むチャンスが来るはずです……!』

 少女は確実にレーザーを回避しながら熱線を撃ち返してくるが、それ以上の攻撃を仕掛けようとはしてこない。そこで右肩のエネルギーシールド投射器を起動し、非実体のシールドを射出する。少女は構え、しかしそれでもレーザーの被弾を躱しながら脇差をシールドに投げつけ、それを擦り抜けて眼前に現れる。予測してショットガンを合わせると、脇差の一撃で破壊され、こちらは飛び退きながら残されたトリガー部を投げつける。少女は身体を翻して投げられたトリガーを踏み台に飛び込み、振られた脇差に右拳を合わせ、拳先に魔力を集中して硬質化させ、弾き合う。その影でフルチャージとなったパイルバンカーを突き出し、あちらの左拳と射出された杭が激突する。続けてこちらが右足で蹴り上げ、あちらの左拳を跳ね上げながら、そこに戻ってきたビットたちが一斉にレーザーを叩き込む。少女は拳を蹴り上げられたことでは動きを示しつつも、レーザーの直撃に晒されていることにはまるで反応を返さず、脇差でこちらの右脹脛を貫こうとする。咄嗟にリロード中のパイルバンカーを間に差し込んで阻みつつ、互いに姿勢を戻してパイルバンカーを押し切り、ビットを回収すると少女が受け身を取って着地し、仕切り直す。

『……君を前に一歩も退かず、ここまで打ち合えるとは』

『大丈夫、落ち着いてください、マイグラント……

 まだあなたは戦える……!』

 一気にブーストして接近し、蹴りを振りかぶる。脇差を合わせて弾こうとするが、こちらは足ではなく右手を繰り出して受け止め、そのまま至近距離で生命エネルギーを変換した衝撃波を叩き込む。凄まじい威力によって視界が歪み、その影でパイルバンカーをフルチャージして間髪入れずに叩き込み、遂に射出した杭を直撃させる。少女の胴体を貫通し、勢いで押し込んで間もなく展開して連鎖爆発を起こす。

『よし!』

 爆風が晴れ、少女の姿が顕になり、そして杭が貫いた穴が塞がっていく。

『傷が……!』

 フィリアが驚きの声を上げ、無表情だった少女がほんの少しだけ笑みを浮かべる。

『……楽しくなってきたか?ああ、僕もそう思う。彼は相応しいのかもしれない……!』

 少女が全身で力み、赫々たる炎を噴き上げて全身に纏う。

『出力が……計器をオーバーフローしている……!?』

『……死力を尽くそう。僕たちもそれに応える』

 少女は宙返りし、左拳を突き出しながら爆炎を噴出させて突進してくる。瞬間的なブーストで右に躱し、後隙を狙って即座にパイルバンカーを突き出す。しかし少女の姿は消え、一瞬でこちらの頭上を取って左拳を振り下ろしながら急降下してくる。右肩からシールドを投射しながら反射的なブーストで後退し、着地で生じる凄まじい爆炎をシールドが肩代わりし、ビットを展開してレーザーの発射を開始する。少女はもはや躱すことすらせず、レーザーは纏う炎に阻まれて消える。そして脇差を地面に突き刺し、渾身の力で振り抜いて地面に巨大な熱波を走らせる。飛び上がって躱し、そこに二体の分身が飛ばされ、斬り掛かってくる。左右に切り返したブーストで避け、本体が瞬間移動で詰めつつ凄まじい量の真空波を率いながら舞うような連撃を繰り出してくる。生命エネルギーを転換したバリアで受け止めるが、余りにも凄まじい物量と威力故に容易にバリアを貫通して攻撃が届き、パワードスーツの装甲が悲鳴を上げる。

『マイグラント……!対衝撃限界が……!』

 猛烈な斬撃の嵐の中、少女は脇差を一層力を込めて振りかぶる。明らかに動作の終端であり、こちらに止めを刺さんとする高威力の一撃であるとわかる。

 攻撃を受けつつもチャージしていたパイルバンカーを突き出し、残る魔力と生命エネルギーとを一気に射出装置に凝縮し、彼女の刃が届くよりも先に杭を射出して再び胴体を貫き、吹き飛ばす。

 ブースターの推力を維持できずに降下して着地すると、踵で堪えた少女に追撃として杭が連鎖爆発を起こし、片膝をついて沈黙する。

『動きが……止まった……?』

『……反撃……しないのか?』

「……」

 男の声に少女は答えない。

『……そうか。異論はない』

 纏う炎に包まれて少女の姿が消え、その場に脇差と左手の籠手が残される。

『敵性反応、消失……マイグラント、流石に消耗が激しい……このまま世界樹に突入するのは厳しいと考えられます。

 一旦安全を確保し、補給物資を受け取ってください』

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