第一話
「いいですか。貴方は日本からイン・シーへの最初の留学生であり、外交的な意味でも大きな意味があるんです。くれぐれも悪目立ちの無いようにしてくださいよ!」
西太平洋上に浮かぶ一隻の船の中で加賀見恐守は若干の船酔いを感じながら、出発してから5回は言ったであろう言葉を繰り返す。
「はいはい。建前の話はいいって。大体、どう目立たないようにしろってんだよ」
少年は窓の外を眺めながら言う。窓の外にはリジニア半島の先が小さく見えていた。おそらく正面の窓からは既に陸が大きく見えているだろう。
「あのですねぇ、ここは船の中だからいいですけど港に着いたら建前なんて言葉は絶対に使わないでくださいね。向こうに少しでも怪しまれるような行為はしないでいただきたい。上が私に同行を任した以上、何かあった時の責任を負うのは私になるんですからね!」
「へぇ、大人の世界ってのも難しいもんだな」
加賀見は、握りしめた拳を振るうのを堪えながら、自分を嘲笑うその少年を睨みつけるのだった。
10年前、突如として太平洋の中央に巨大な大陸(後にイン・シーと呼ばれる)が現れた。
人工衛星によって伝えられた新たな大陸の存在は一挙に世界中の話題となり、すぐさま世界各国から調査団を派遣され、自分たちとは全く異なった進歩の仕方をした文明を発見した。そして、言語が酷似しているという点からその大陸との外交のほとんどが日本に任されることとなった。しかし、言語の不自由が無いという極めて良好な状態からしても、その極めて異質な文化から、外交は困難を極めた。
そもそもとして…誰も信じなかったのだ。突然大陸が現れ、偶然言語が一致し、その上…
「つきましたよ!」
船のスタッフがそう言う。
「有り難うございます」
そうお礼を言う加賀見を尻目に、少年は早々と船を降りた。
「ちょっと、待ってください」
早足で歩いていく彼に追いつこうと、加賀見も小走りになる。港のすぐ前の広場ではパレードの様なものが行われていた。宙を舞う水。木の葉を吹き上げる風。中央で踊る人々の手に合わせて、水や木の葉は動いている。
…その大陸で、魔法が当たり前に使われているだなんて。
霧岾達也
〈西暦2045年1月4日9時48分 南都大学魔法学部第二グラウンド〉
グラウンドはいつもの張り詰めた空気とは違い、生徒たちの話し声で溢れていた。ただ、そこまでおかしいことでも無い。この学校で無事に進級することができた。その喜びを昨日の始業式の際に改めて実感して、皆緊張が緩んだのだろう。実際に俺もそうだった。入学してからの一年間、俺は退学にならない様に必死で努力を続け、テストに合格してきた。進学できたと知った時にはそれこそ舞い上がる様だった。だからこそ周りの奴らがここまで気を緩めているのもわかると言う物だ。
「次、近藤遼さん」
生徒たちのざわめきの中でも、先生はよく通る声で一人一人の名前を呼んでいく。
今行われているのは体力測定の魔力検査だ。と言ってもそこまで厳密に審査する訳じゃなく、教師が見ている場で魔法を放ち、その威力と持続時間によって大まかな魔力量を図ると言う物だ。去年の時は今の様に実力でクラス分けがされておらず、自分たちよりも遥かに格上の奴らと合同でやった為、圧倒的な力を見せつけられて入学早々絶望するやつも多かっただろう。
「次、紺野枯須さん」
その言葉に、俺は違和感を感じる。
その疑問の真偽を確かめる為にグラウンドの中央を見る。先生に呼ばれて出てきたその顔を俺は知らなかった。俺は隣にいた久留須に聞いた。
「なぁ、あんな奴居たか?」
すると久留須は半ば呆れた様に俺に言葉を返してくる。
「お前、昨日の始業式の時の理事長の話聞いてなかったのか?」
「いや。寝てたわ」
当然の様に返す俺に対して久留須は大きなため息を一つついてから俺に言った。
「あのなぁ、あいつは今年から俺たちBクラスに転校してきた転校生だよ」
「転校生?」
「あぁ。この学園では特定の条件が揃った上で転校試験に合格できれば他校からの転校も可能らしい。ただ、そのテストは入試の時よりも更に難しいから、転校してくる奴はごく稀にしか居ないがな」
「ほぉーん。にしても随分と変わった名前だな」
俺は改めてその転入生…紺野枯須の方を見る。
左手を前に出して魔法を出そうとしているところだった。紺野が歯を食いしばり左の手首辺りを強く握ると、手のひらの先から勢いよく炎が吹き出した。
(火炎魔法。結構高火力だな…)
炎はかなり大きいがその分精密な操作はそこまで出来ない様だ。この学校の入試は魔法の才能があればそこまで難しい物でもない。おそらく魔力量が多かった為に合格になったのだろう。紺野が出した炎はなかなか消える気配を見せず、魔力量は最高点となった。
〈同日13時26分 南都大学食堂〉
「よう、紺野って言ったけ?」
昼休み、俺は例の転校生に声をかけていた。
「え、どうも…」
「俺の名前は霧岾達也。お前と同じクラスだ。休み時間の間学校を案内してやろうか?」
「え!良いんですか?お願いします!」
そう言うと紺野は半分ほど残っていたカレーを一気に平らげると、目を輝かせて手を引いてきた。
「さあ、行きましょう!」
(こいつ、割と子供っぽいな…)
そうして俺は紺野に様々な学校の施設について教えていく。
クラス用教室。多目的室。グラウンド。マジックルーム。図書館。自習室。
どれを見ても紺野その規模に驚いていた。
「すごいだろ、さすが世界…いや、大陸一の大学だよな!」
つい、世界一と言ってしまう所だった。まあ、俺やこいつからしたら別に違和感はないだろうが、間違った情報を教えると言うカッコ悪いことはしたくない。
「ですね!」
紺野は俺の心配とは裏腹に明るい声で言う。
「そんじゃ、そろそろ教室に戻るか!」
「はい!」
〈同日13時55分 2ーB教室〉
「はーい、席に座ってー授業始まるよー」
委員長の山内が言う。新学期初日なので、普通の授業ではないと思うのだが、どんな授業をするんだろうか…
前のドアから伊澤先生が入ってくる。
「えー、みんな…これからゲスト講師の方が来ます…失礼の無いように…」
「ゲスト講師って誰ですか?」
隣の席に座っている紺野が聞いてくる。
「いや、俺も知らない」
俺たちはそのゲスト講師を待つがいくら待っても来る気配がない。先生も焦り始めた。
「ちょっと、先生見てくるね。山内さんよろしく」
そう言うと、先生は教室の外へ出て行った。しばらくの間教室が静まり返る。と思っていたら、突如窓の外で轟音が響いた。
「へ?」
「爆発音?他のクラスが魔法の実習をしてるのか?」
「いや、今の時間はどこも実習なんてしてないはず…」
ガッとドアが開く音がして、見知らぬ人が入ってくる。胸のバッチから警備の人だという事はわかった。
「君たち。すぐに逃げて!襲撃だ!」
「襲撃?なんの?」
「良いから!」
その人の緊迫した声から危機を感じ取ったのか、皆最低限の荷物を持って教室を駆け足で出ていく。紺野も自分の荷物を持つと「逃げましょう」とだけ言って出て行った。俺もあわてて教室を出て皆と同じ方向に走って非常口へ向かう。
〈同日14時2分〉
非常口から外に出た瞬間皆が安堵に包まれる。建物の方から、まだ聞こえてくる轟音の中周りを見渡していると、一つの事に気がついた。一気に体に寒気が伝わってくる。
「なぁ、委員長。紺野は?」
そう、俺が聞くと山内も紺野がいない事に気づいた。
「そういえば、教室を出てから見てない…」
「まさか…!」
俺は、紺野に非常口の場所を教えていなかった事を思い出した…
「ちょ!霧岾!」
気がついたら俺は校舎の中へ入っていた。紺野がまだ脱出できないのは俺の責任だ。だとしたら、俺が助けないと…
「紺野!紺野!」
そう叫びながら建物の奥まで入っていく。
「紺のっ!」
突如、校舎の壁が崩れ落ちて、俺の目の前に、一人の少女が現れた。その目はまるで道端に転がる小さな石のように俺のことを見つめていた。
「魔人っ!」
(まさか紺野はこいつに…)
そんなことを考えていると、そいつは一気に距離を詰めてきた。俺は急いで掌に熱を集中させ、拳に炎を纏った。一気に最高温度まで火力を上げる。
(火傷とか気にしてる場合時じゃねぇ!)
俺は無我夢中で、目の前から迫ってくるそいつに拳を振るった。が、その拳は空を切る。
「っ!」
気がつくと、そいつは俺のすぐ横にいて、俺の無防備になった俺の腹部に拳を入れてくる。その拳に当たった反動で俺の体はものすごい勢いで壁に叩きつけられる。
「バケモンすぎんだろ…」
意識が朦朧としてくる。火傷した右手がズキズキと痛む。目の前の魔人はトドメを刺そうと、また拳を振り上げた。防ごうとするが、身体が言うことを聞かない。
死を覚悟した。けど、いつまでたっても最後の一撃が俺の体に当たる気配がない。朦朧とする中そいつの姿をなんとか見る。振り上げたそいつの腕は血を流していた。
俺は恐る恐るそいつが睨みつけている方向を見る。そこには、右手に何かを持って構える紺野の姿があった。
紺野枯須
〈西暦2045年1月3日14時35分 南都大学理事長室)
「おー来たか!」
扉が開けられるとすぐに中からそんな声が聞こえてきた。
一昔前の映画にとかに出てきそうな、以下にもファンタジーな雰囲気の部屋。奥の窓から差し込む西陽の逆光によって、棚に置かれたインテリアが鈍く輝いている。
「ようこそ。南都大学へ!」
奥の椅子に腰掛け微笑んでいるのがこの大学の理事長、江良樹だと思われる。
「いやー、まさか日本からの初の留学生がうちの大学に来てくれるとは、嬉しい限りだよ!この南都大学は僕の曽祖父の代からやっていてね…」
江良樹は満面の笑みで話している。だが、その声の節々からは、喜びとは別の何か違った感情があるということが分かった。
「理事長、少し落ち着いてください。まずは自己紹介をするのが先ですよ」
声をかけたのは俺たちをこの理事長室まで案内した、女性職員だ。
「ああ、すまない。マナーがなってなかったな。一応伝えられているとは思うが…私の名前は江良樹忠雄だよろしく!」
すると、女性職員も江良樹の隣に行き、自己紹介を始めた。
「私の名前はメアリー。理事長の秘書を務めています」
俺は隣にいる加賀見に目配せする。こちらも自己紹介をするべきだろう。まず加賀見が前に出た。
「加賀見恐守です。日本より留学生の護衛と、この国の文化について学ぶように指示されています」
「そうですか。お宅はうちなんかよりも北都の方が興味があるとばかり思っていましたが…」
「ちょっと!理事長!」
「ああ、すみません。自己紹介を邪魔してしまいましたね。続けてください」
理事長は、先ほどから続けている不気味な笑顔を止めることなく、こちらを見てくる。
俺も一歩前に出て加賀見と並ぶ。
「紺野枯須。留学です」
自己紹介が終わると俺らは理事長の机の前にあるソファーに座らされた。
「さて、簡単にこの大学の説明をしようかな」
江良樹は俺たちの前のソファーに腰掛けると、運ばれてきた紅茶を少し飲み、メアリーに入れさせていた。
「この大学は名前に南都とついている通り、この南都で最大の大学だ。特にうちの魔法学部は、国中から魔法の名手が集まって来て、魔法を学んでいる」
「最大という自信があるなら、俺がくるのもまさかではないんじゃないか?」
「ちょ、紺野さん!」
「ハハ、まぁそちらの方が偏差値だけで大学を選ぶはずないでしょう?別に留学生を送る必要はないわけですしね」
江良樹は相変わらず紅茶を飲んではメアリーに入れさせるのを繰り返している。
「うちの大学は優秀な生徒が集まっていますので、軍から応援要請が来ることも頻繁にあります。“魔王軍”の情報もよく入ってきますよ」
「なるほどね、要は軍人学校替わりってわけか」
「いやいや、そのような要請はよっぽどで無い限り受けてないよ」
「あの…そろそろ施設についての説明に行きたいのですが…」
メアリーの言葉を聞き、江良樹は壁にかけられている魔力時計を見る。
「確かにそうだな。それじゃあ私は仕事があるのでここまでだ。後はメアリーに聞いてくれ」
そう言うと江良樹は部屋の奥にある自分の机に戻って行った。
「それじゃあ、私について来て下さい」
俺らが立つのも待たず、メアリーは部屋を出て行った。俺もすぐにその後を追う。加賀見はソファーに置いていたアタッシュケースを慌てて持ち上げ、ついてきた。
クラス用教室。多目的室。グラウンド。マジックルーム。図書館。自習室。
さまざまな教室の場所について軽く説明された。
「さすが南都最高峰。構内も広いですね」
「そうだな」
構内見学は小1時間ほどで終わった。
「以上が構内の主な施設です。最後に非常口の場所だけ改めて確認して置いて下さい」
目の前に2枚のマップが出される。俺と加賀見はそれぞれ一枚ずつそれを取る。
「随分多いんだな、非常口」
「ええ、万一のことを考えてです」
メアリーは相変わらず笑顔を崩さない。
その後、詳しい授業内容について軽く説明され、学校に関する説明は終わった。
「それでは、明日からよろしくお願いします」
そう言うメアリーの顔は先ほどと同じ笑顔だったが、こちらに背を向けた一瞬、笑顔が消えた様に見えた。
〈西暦2045年1月4日13時30分 南都大学食堂〉
「よう、紺野って言ったけ?」
昼休み、同じクラスの生徒に声をかけられた。名は霧岾達也。構内を案内してくれるらしい。
昨日と全く同じルートで構内を紹介される。ただ、霧岾はメアリーと違い口数が多く、会話は面白かった。
休み時間が終わるとすぐに教室に集められた、特別授業だとからしいが…
「今日、始業式なのにもう授業するんですか?」
「うちの学校は結構厳しいからねー」
俺が聞くと霧岾は苦笑いをして答えたが、何となく時間を気にしているようだ。
「そっか…」
5分ほど前に担任が教室を出てから、誰も入ってこない。何かトラブルがあった可能性もある。教室内の他の生徒もその事を気にしているようだ。
耳を澄ます。遠くで人と人が争い合う声が微かに聞こえる。中には銃の発砲音のようなものも…
(銃…?)
突然、外で爆発音が響いた。教室内も騒がしくなる。警備員の指示に従い皆逃げていく。
俺も逃げようとした所で、こちらに向かって来る一つの足音に気づいた。
「マジか…」
教室の周りに誰もいないことを確認し、インカムを耳につける。
「加賀見、聞こえるか?」
〈同時刻 町外れの空き家二階〉
「はい、加賀見です」
『お前、今どこにいる?』
その質問を待っていましたと言うふうに、加賀見は答えた。
「大学の裏山です。いつでも撃てますよ」
加賀見はスナイパーだ。日本からは常に紺野から目を離さないように言われていたため、南都大学の全体を一目で見ることのできるこの裏山から、常にスコープで構内を見ていた。
『構内に“魔人”がいる可能性が有る。そいつを俺が外に連れ出した隙に撃て』
「なるほど、わかりました。ただ、くれぐれも周りの人間にはバレないようにして下さい」
『わーかってるよ』
そう言うと紺野さんの方から足音が聞こえてきた。もう動き始めたようだ。
「全く、もう少しちゃんと物を頼めないもの出すかね」
そう言ってみたものの、紺野は聞いていないようだった。
「たっく…」
ため息を溢しながら加賀見はスコープを覗く。
〈同日14時13分 南都大学構内〉
紺野は構内を歩いていた。あの後外の騒ぎにかき消され、足跡が聞こえなくなってしまったため、目視で探しているのだ。
教室のあった二階から階段を上がり、三階を探す。二階から紺野を呼ぶ声が聞こえたが、返事をするわけにはいかない。なるべく足音を立てないようにしながら廊下を進んでいく。丁度中央階段の前に来た所で、下の階から轟音が聞こえてきた。
「霧岾か…」
紺野は階段を飛び降り、音もなく着地する。目線の先には、大きくえぐれた壁に寄りかかる霧岾と、それに攻撃をしようとする人影があった。
紺野は懐から9ミリを出し、その人影に向ける。
パシュっという音が小さく鳴り、人影の肩からどす黒い血が流れる。
「外傷はつけられるが…この程度じゃあ怯みはしないか。さすが魔人」
魔人は紺野の方に顔を向けると、凄まじい力で地を蹴り、紺野との距離を縮める。それに対し、紺野も一歩前に出る。
「ただ、魔人の中では頭の悪い方と見た」
大きく腕を振りかぶり、無防備になった魔人の腹に銃口を当て、引き金を引く。
今度ははっきりと傷口を確認できた。傷口の周りの服が溶け、その下の皮膚から血が滲み出ている。
(傷自体は作れるが、致命傷にはならないか…)
魔人は紺野のことを強く蹴り、距離をとった。
(他の人間が来る前に片付けたいが、どうやって撃てる位置まで誘き出すかな…)
紺野がそう考えていると、魔人は先ほどの速度のさらに上の速度で紺野の横に来ると、その勢いのまま壁を蹴り、紺野に体当たりをし、壁についていたドアを破り、教室の奥の窓も割り、外に飛び出した。
「マジかよ…」
空中に浮いた紺野を魔人は上から殴り、地面に叩きつけた。
(とんだパワープレイだ)
「せめて反対側に出てくれてたら良かったんだがな…」
外には出れたものの、出た場所は丁度建物に隠れて加賀見の位置からは見えない場所だった。
魔人はまた拳を振り被り、落ちてくる。
紺野は先ほど同様、無防備な腹に銃口を向け、引き金を引く。が、その弾丸は魔人の左の掌によって受け止められた。魔人は勢いを落とすことなく、右手の拳を振り下ろす。
爆音とともに地面が大きく抉られた。周囲に土煙が舞う。
「さっきより威力が増したな。やっぱ魔法を使うとここまでのことができるのか?」
「肉体強化と防御、両方使ってたはずなんだけど…」
魔人は自分の左の掌と、土煙の中の人影を交互に見ながら言う。
「…お前、喋れたんだな」
紺野は弾の切れた銃を捨て、魔人に殴りかかる。魔人も、それを受け止め殴りかえす。そこから殴り合いが始まった。魔人からの攻撃を受けながら、紺野は少しずつ後ろに下がる。
気づけば、紺野は校舎の端の方まで来ていた。
(後3歩って所か…)
紺野がまた後ろに下がろうとした所で、魔人が背後に回った。拳に力を入れている。
(この距離なら直接当てることはできない。と言う事は…)
「何となくだけど…これ以上は行かせない」
「勘が、良いんだな…」
紺野は左手の袖を軽く引っ張った。そこからは、銃口のようなものが現れた。
「だが、運は悪かったようだ」
紺野がそういうと、袖から炎が放射された。
「っ!」
魔人は思わず後退りをする。
「加賀見、撃て」
紺野はインカムにむかってそう言う。
『了解』
校舎の影から出た魔人の頭を、裏山から飛来した弾丸が貫通する。
魔人は鈍い音をたてて倒れた。
「やっぱ、弱点は人間と殆ど変わらないんだな」
紺野は、袖につけた火炎放射器でその魔人の死体を焼きながらそんな事を言う。
〈同日同時刻 南都大学別館屋上〉
ハルは、目の前の戦闘が決着したのを見届けると満足したように、顔に笑みを浮かべ、校舎の中に戻って行った。
突然の新シリーズとなりすみません「ゲームアフターデス」の最新話は次の日曜日、この作品は6月25日に更新します。