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2話 グエン

「そういえば、名前は?」

「エリィ=クラリスです。すみません、今から買い出しに行くので安静にしててくださいね」

「俺も行きます。動けますし、町を見たい」

「賛成はしないですけどね。構いません。途中で倒れないでくださいよ」


     ----------


「クラリスさ······」

「エリィでいいです」

「エリィさん。普段は何をして生活してるんだ?」

「マジック、奇術ですね。魔術が当たり前になった今、魔法なしでマジックのできる一団は私たち以外ほとんどいません」


 魔法か、、、前の世界にその概念がなかったのは覚えている。前の世界には自動車があった。そんな物事は覚えているのに、俺に関することは何も覚えていない。

「どうかしましたか?急に黙り込んで」

「いや、なんでもないよ」


「すこし昼食にしましょう」

「でも俺お金持ってないけど、、、」

「おごります」

「すまない。ありがとう」

「いいんですよ。何が食べたいですか?」

「んー、パニーニとか」

「パニーニとメロンパンひとつづつで」

テーブルの上に置いた銅貨が消え、代わりに焼きたてのパンが現れる。

 、、、すげぇな、魔法。

ん?   何か後ろから······


 何かがまばたきひとつの間にパンを奪い取り、窓ガラスを割って逃げ出した。


「「おい!待てよ!」」


飛び出した俺のあとを追って出てきたエリィはため息をつく。

「そこまでして取り返すものでもないでしょ、、、」


いや、そういえば彼は······


「魔法も忘れてるのにどうやって捕まえようとしてるんですか。<バブルランチャー>」


エリィの手から放たれたシャボン玉が小動物のような何かを包むように爆発し、辺りが水浸しになる。

「<スタン>」

そいつにかかった水に誘導されるように電撃が走り地面に落ちてきたそれを見る。


「ドラゴン、、、か?」

「まだ小さいですね。あまり金にはならなそうですよ」

「金って、売るつもりだったのか?こいつを」

「違うんですか?てっきりハンターとしての仕事をしようとしていたのかと」


そういや俺はモンスターハンターだったな。そう思われても仕方ない。追いかけたのはただ、このドラゴンの、彼の声が聞こえたからだ。


「こいつは連れて帰る」

「はぁ!?」

「何日も食べてない。アゴの骨が折れてる。話せるけど獲物が噛みきれないんだと思う」

『るせー、てめーの助けなんか借りなくても、、、』

『なんだ。意外と元気じゃん。安心してくれ、決して君をつかまえたりはしない』


ドラゴンの顔が驚愕で歪むのが分かった。

『てめぇ、俺と話せるのか!?』

「誰と話してるんですか?」

エリィが不思議そうな顔をしている。

『えっ、こういうのってみんな話せるんじゃないの?』

一人と一匹が首を横にふる。

『君、名前は?』

『グエンだ。てめぇは?』

『俺は、、、スバル。スバル·エルフォルクだ。よろしく』


     ーーーーーーーーーーーーーーーー


 その後まだ買い物をするというエリィを残し、宿に戻る。身の回りの整理をしながら、グエンに話しかけた。


『しかし何であんなことになってたんだ?』

『俺らの一族は、生まれてすぐ旅に出されるんすよ』

『ちがうちがう。ケガの話』

『い、いや、ちょっとよそ見して飛んでたら鳥にぶつかっただけだ。なんか悪いか?』

俺は苦笑するしかなかった。


      ーーーーーーーーーーーーーーー


「ただいま」

「おかえり。しかしすごい量だな」

「あなたの分もありますから。服とか。ボロボロのそれじゃあまりに見映えが悪いですよ」

「ありがとう。俺みたいな、、、見ず知らずの人を気にかけてくれて。ああそうだ、すこし食べたらグエンもすっかり元気になると思う」


「それ、私も喋れるようになりませんか?」

夕食中、唐突にエリィはそう言い出した。自分だけ会話に入れてないのが不満らしい。


「んー、やってはみる。上手く行くかは分からないよ」

右手でエリィの、左手でグエンの口に触れる。

彼らの口もとに魔方陣が現れ、消える。


『これで話せるはずだ。ダメだったらもう一度やってみるよ』

『グエンだ。よろしくな』

『エリィです。こちらこそ······』


ものすごい音とともに扉が蹴倒され、甲冑を着た者たちが取り囲むように入ってきて剣を構えた。


「やっと見つけた。フリージア=エスメラルダ=クラリス。同族を皆殺しにした者に情けの必要なし!従者ともども処刑する」

「騎士団、、、私に何の用ですか?それにこの人は関係無いはずです」

「よくもまあぬけぬけと嘘を言いやがる。全員、手をあげて外へ出ろ」


言われるとおり、手を上げて出るしかない。その時エリィさんが耳元でささやいてきた。

『スバルさん、グエンさん、私と逃げませんか?さもないと今ここで斬られます』


『でも、逃げるとさらに罪が、、、それにエリィさん、あなた何者なんだ?』

『もう既にあなたも斬られることが確定してるんですよ。私については後で話しますから』


これは、、、信用していいのだろうか?騎士団の話が本当なら彼女は殺人鬼ということになる。だが逃げなければここで殺されるのは明らかだ。


『俺はスバルについてくぜ。俺を捕まえても売らないのはお前くらいしかいないしな』


『そうか、、、一緒に逃げるよ』

「何を話している、さっさと歩け」


外はもう暮れかかっている。

「騎士さん、上!黒龍がいます!」

「騙されるとでも?何がしたいんだこの犯罪者め」

「師団長、、、ほ、本物だ······」


空を見上げる。沈み行く太陽の方向に真っ黒な龍が見えた。一見して強者と分かる邪気をまとった姿は急速にこちらへと向かってくる。


「バカな!こんなときにっ。団を半分に分けろ。住民を避難させる」


『二人とも私に掴まってください』

『おい、てめぇあれ黒龍じゃねーじゃねーか』

『確かに。龍の形をしてるけど目がないな』

『おい、どーすんだ!もう真上に、、、』

『突っ込んでくる!』


真下の俺たちに、それは躊躇なく突っ込み、視界は黒に染められた。

この時分色々と忙しいものでツキイチ更新になりそうです。気長に待って下さると幸いです。

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