1話 自分以外の誰か
「さーてと、今日は何しよっかな」
青年はそう言って、部屋に入った。全体が薄青く光るその部屋には大量の立方体-ダイスが浮かんでいる。
彼は無造作にその1つに触れる。中から糸のようなものを取り出すと、別のダイスに繋げた。
「神だってサイコロ振りたくなるときはあるよ。最近ヒマなんだよな~」
「ロキ!こんなところで何をしてる?」
乱暴に扉が開かれる。飛び込んできた男を見てロキと呼ばれた青年は慌てた様子で糸を断ち切った。
「いいじゃんこの部屋に入るくらい。観てただけだよ」
「いいわけないだろ。イタズラ好きのお前だ、なにするか分かったもんじゃない」
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ヴー、ヴー、ヴー、ポケットから振動するスマホを取り出す。
電車の中だが、上司だと面倒だ。
「はい」
その時起こったことは、うまく説明出来ない。俺の体は電車の床に沈んでいった。と言えばいいのか。ともかくこの世界がゲームのバグのように、俺は虚空へ投げ出され、、、そのあとは覚えていない。
ランタンの炎が部屋を照らしている。
「あ、起きましたか」
ツインテールの少女が顔を覗き込んでいた。
「どうしたら空から落ちるようなことになるんですか。スバル·エルフォルクさん」
「ん······俺の名前か?」
「違うのですか?名刺に書いてあったのですが、、、もしかして覚えていらっしゃらない?」
俺は······俺は電車から落ちて、、いや、空から? 起き上がり、両手の感触を確かめる。俺が俺でないような、そんな感じ。俺は誰だ。不安が頭のなかを駆け巡る。突然、頭のなかにひとつの単語が浮かんだ。
「転生、、、だよな?」どこでこんな言葉が出てきたのだろう。いつ知ったのだろう?
「てんせい?とりあえず顔洗って落ち着いてください。青白い顔してますよ」
渡された水桶に自分の顔が写っている。
「······イケメンじゃん、俺」
「何言ってるんですか」
スバル·エルフォルク、職業「モンスターハンター」、ユニークスキル「モンスタートーカー」。
俺の名刺にはそう書いてある。いろいろわからない。
「誰、、、なんだ?君は。どういう経緯で俺はここにいるんだ?ここはどこなんだ?」
「エリィって言います。一度にたくさん説明しないでください」
と、エリィはその可愛い顔を困ったふうにかしげた。
「あの、、、歩けますか?買い物のついでに話しましょう」
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「ホントに何も覚えてないんですね」
「ああ、何も。要塞都市クレア、それがこの町の名前か?」
「そうです」
どうやら俺はやっぱり違う世界に来てしまったようだ。魔法の使える、、、異世界に。
転生ものの作品を描くことにしました。ちなみに転生ものは読んだことありません。こんな感じかなって適当に書きました。これからもよろしくお願いします。