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星、自然、環境

どっちが正解? 自然保護活動 植樹と除去そのジレンマ

作者: 池畑瑠七

 数年前の話だが。

 ジレンマ、ってあるとおもう。

 どっちも正しい。でもあちらを立てれば、こちらが立たない。

 結局どっちがいいんだろう?

 そんな体験を書きます。


 以前所属していた団体で毎年参加していた、他のNPO活動の定期行事があった。

 植樹祭だ。火山灰質の荒涼とした山、その斜面の崩落を防ぐため、バッコヤナギっていう荒れ地にも逞しく根を下ろす木を栽培し、植樹していく活動をしていた。

 ある時期になると大勢の参加者を募って一斉に斜面に植えるのが植樹祭だ。毎年定期的に実施されていて、順次そのエリアは拡大していた。

 

 数年前に植えられた柳はしっかりと根を張って、その周りに植物を集めグリーンスポットを作り出している。そこには昆虫とか鳥や野兎とかがやってきて、また新しい植物を養っていく。

 グリーンスポットは幾年かすると草木が がっしりと地面を捉えるようになり、山肌を守る自然の擁壁となっていく。そんな風に、とても地道で長い長い道のりの活動だ。


 当日の作業はこんな手順だった。


 下界の畑で栽培し袋分けされている苗。急傾斜の斜面を作業現場まで参加者が手分けして、スコップや筧と共に運ぶ。

 養生のため柵にする竹も割って束ねてあるから、力自慢の参加者はそれらも一緒に運び上げる。

 

 足下が火山灰の砂礫地だから、凄く歩きにくい。軽めのスニーカーだったりすると、靴の中はあっという間に砂まみれだ。慣れた参加者は登山用のしっかりした靴を皆履いている。道なき斜面を、バランスとりながら一歩一歩慎重に登る。


 指定の作業地に着いたら。


 砂礫地の中にくい打ちして、割竹でもって5m四方位の柵を設ける。

 その囲いの中にスコップで30センチほどの穴を、等間隔に掘っていく。

 穴に一本ずつ苗を植える。このとき余計な葉っぱをしごきとる。、葉っぱは腐葉土と共に穴に投じて、埋め戻す。

 葉っぱが沢山ついたままだと根付く前に水分を余計に蒸散させてしまって木が弱るから、植える時には少ししか残さないんだそうだ。

 その埋めた葉っぱも、養分になるんだって。

 苗の根元をしっかりと踏んだら、そこの作業は終わり。


 子供も大人も砂まみれになって汗まみれになって、一緒に作業する。強風が吹き晒す荒れ地だから、空模様もあっという間に一変する。

 開始時は快晴だったのに、作業中に霧(雲)がかかったり、雨がぱらついたり。

 逆に、曇天で作業が楽だなーって思っていたら、カンカン照りで汗まみれ。そんなのはしょっちゅうだった(笑)。


 2時間ほどで作業が終われば、自然観察をしながら斜面を戻る。トン汁とご飯の炊き出しを受け取って、皆でそこらへんに座り込んで食べる。

 山の空気と美しい景色をおかずに、作業の疲れが吹っ飛ぶ和やかなひと時だった。



 そのNPO活動と同じエリアで、別のNPOも自然保護活動を行っていた。そちらの活動にも、時期は被らないが参加していたことがある。

 それは、「外来植物の除去」を行う活動だった。


 この山には固有の生態系があり、ここでしか見られない在来植物や昆虫などが多く生息している。それは学術的にも大変貴重なものらしい。

 

 だが、近年の温暖化による生息適応圏の拡大や登山・入山者の増加などによって繁殖力のとても強い外来植物がどんどん入り込んでおり、固有の在来植物を駆逐してしまう勢いで、勢力を広げているのだという。

 

 これまでは、気温が低く厳しい環境だったため生息できなかったはずの植物や昆虫たちが、気温上昇によってどんどん標高が上の方まで生息可能エリアを広げているというわけだ。


 固有の貴重な生態系を守るために。勢力が強すぎて在来種に害為すという、本来この地にあるべきでない外来植物を、一本一本根っこから取り除く。

 エリアを限定し定期的に一斉に実施する訳だが、在来種を傷つけないように気を配りつつ小さな手シャベルで行うためこれもまた人海戦術でしか為し得ない、とても地道な作業だった。


 

 こういった外来植物の種は、鳥や動物が運んだり、登山者の服や靴に付着した土などからも持ち込まれたりする。

 そう、「土」。

 ここで、キーワードが出てくる。「土」だ。


 植樹祭で植えるバッコヤナギの苗には、下界の畑の土が沢山、付着しているじゃありませんか!

モチロン腐葉土にも。それを同じ斜面に植えるのだから、う~ん、あとは・・・推して知るべし。


 ありゃりゃ。これは大きな矛盾を生む。

 斜面の崩落防止、環境保護の為に植える柳。その苗の土や作業者の靴に付着してたりする外来植物の種が、斜面で勢力を広げ在来植物を駆逐してしまうのだ。

 

 それをまた、環境保護の為に除去する・・・。

 

 見事な「いたちごっこ」が生まれてしまう。

 実際、その二つのNPO団体さんはあんまり、仲良くはないらしかった(笑)。でもどちらも自治体から補助金を受け熱心に活動をしていたと思う。



 うーん、で、結局どっちを優先すべきなの? とても素朴な疑問だった。

 どっちも大事なことだ。うまい折衷案はないのか?


 土を持ち込まないよう配慮して、植樹をすればいいのか。凄い難しいことだとは思う。

 外来植物が繁殖しても崩落防止に役立つなら、目くじら立てなくてもいいのか。でも貴重な生態系は、早期に駆逐されてしまうだろう。

 

 温暖化が進行し益々その速度は早まるだろうから、手作業の除去は焼け石に水、と言えば残念ながらそうかもしれない・・・。



 こういう矛盾、探したら幾らでも出てくるだろうなあと思う。


 今のわたしに、良い答えは見つからないので、純粋に疑問に思ったことだけを連ねました。


 皆さんは、どう思われますか?



 という事でなんか、尻切れトンボなエッセイになりました。


 なんだスッキリしないな、と最後までお読みになってお怒りになる方や、専門知識がおありでしっかりした見識をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが。

 

 先に謝っときます。

 参加者目線でしかなく、知識が薄い部分については なにとぞご容赦くださいますよう(;´∀`)。






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― 新着の感想 ―
[一言] いつもありがとうございます。 今回のお話の中の問題は、とても難しいですね。 私は、自然環境に関する専門的な知識は一切無いので、どちらがどうとは軽々に申し上げられませんが、ただ、どちらの団体さ…
[良い点] 植樹と、外来植物の駆逐、どちらも正解だと思います。 植林のための肥料に外来種の種子などが混じっていても仕方ないです。 それだけを理由に植樹をやめるなら、そっちの方が問題です。 動物でも…
[一言] 沖縄在住ですが…… 此方のあまりにもワイルド過ぎる動植物相手にしてると たかが人間如きが上から目線で環境保全なんて発言はお笑い草なんですけどね 日当たりや肥料探して本当にゆっくりだけど根っ子…
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