第6話 ピザorピッツア
ご無沙汰しております。
颯爽と駆けてゆくクノイチ250を僕は上空から見ていた。というと語弊があるかもしれない。ゲーリオと融合してからというもの僕は「鷹の目」を手に入れたのだ。この界隈で起こっていることを俯瞰して見れるようになったのだ。あのクノイチ250をズームしてみると女の子である。あの子はもしかして、同級生か?似ている。卒業して幾分か経つがあまり変わっていないようだ。思い切り道路を殴って地震を起こしてみようか。この力があれば不可能ではないが、やはり現実世界に変化を与えることはゲーム内とは違いとても体力を消耗するようだ。その力が大きければ大きいほど自分にもダメージがあり死んでしまうと。まるでゲームデータを犠牲にすべてを一瞬で無にする「リセット」のようだと僕は笑ってしまった。うまくできずに癇癪を起しコントローラーをぶん投げる気持ちが分かるだろうか。無機質な物体に人間様の能力を軽く超えられ人間という種族の誇りを嘲笑われたようなとき、人間は抵抗できない無機質な物質をぶっ壊す。なんというエゴの塊。こんな人間がごまんといるのである。僕も命と引き換えにこの世界をぶっ潰してやる。そう思ったとき、僕はやるのかもしれない。今はまだこの全能感に高揚しながら安全な場所から世界を笑っていたいものだ。まだ体が慣れていないのか少し頭が痛いな。
マツが目を覚ました。囚われの身になってしまった彼は牢屋とかそんなファンタジーな檻ではなくごく普通の一軒家に軟禁されている。それがまた身近で怖いのだ。
周りには行きつけのコンビニ店員のあの兄ちゃん、と言っていいのか、兄ちゃんだったヤツ含め女ばかりだ。俺もなめられたものだ。マツは思った。マツも男である。女の子4,5人であれば隙を見て逃げ出せるだろう。そのタイミングを待っていた。もし俺を襲ってくる奴がいたらその時がチャンスだと。
ピンポーン「こんにちはファストピッツアでーす」
こんな時にピザなんか頼んでんじゃねーよ。ふいの呼出音にマツの緊張は高まった。
支払いのどさくさに紛れて逃げ出すか。マツは一瞬の隙に玄関に走り出し突破を図った。
支払いをしているコンビニ兄ちゃんの脇をすり抜けたときピザ屋とぶつかってしまった。
読んでいただきありがとうございます。プライベートでの私用が落ち着いたらまた書こうと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。