第3話 連呼
生まれたての光の輪は不気味に光り辺りを終末色に染めている。
「どういうこと?なにがなんで協力できない?」
「呼んでいるんだ。ゲーリオが。僕の心にささやいているんだ。」
まいった。マツは思った。友の心がゲーリオの思想に刺激されデッドボーイズシステムと
共鳴してしまったようだ。友の心がここまで弱っていたとは思っていなかった。
触れれば崩れるくらいギリギリの所で保っていた心の均衡が一気に崩壊し、ゲーリオの思想に飲み込まれてしまった。
「まずいまずいまずい!まずいぞ!」人間パニックになると同じ言葉を連呼してしまうらしい。この光の輪に影響されて友と同じようなやつらがたくさん湧くかもしれない。
今の俺の力ではこの場をどうする事もできない。しかしやるだけの事はやってやろう。
「おいっ!しっかりしろ!」友の顔を2,3回ひっぱたくが、正気には戻らなさそうだ。
逆に、光がなかったその目に光が宿ろうとしている。どす黒い深い闇の光だ。
身の危険を感じたマツは友の襟首を放し、辺りを見回した。
いつか友を正気に戻らせる方法が見つかった時、その手助けになるような、記憶を呼び戻すことができるような物はないか部屋の中を物色した。
不気味な光が辺りを染める中、その光を反射して輝いている物があった。
「ガラスの瓶?・・・香水だ。」女性の体や羽を模ったマリアと天使の羽のようなデザインである。友がゲーリオと共鳴し、おかしくなっていく中でマツは少し安らぎを感じた。
と同時に友の趣味にも少し距離を感じたのである。
マツはその小瓶をもって部屋を出た。友は依然おかしくなりながらだんだんと狂気を増していく。「いつかまた会えるときまでグッバイ!」そう友に声をかけ走りだした。
マツが自宅辺りまで帰ってきたころ、不気味だった空はまだ薄暗かったものの、いつもの平常を取り戻そうとしていた。いつの間にか光の輪も消えていた。
ゲーリオ・マッシブの死を経ていきなり発動したデッドボーイズシステム。それに共鳴し
狂ってしまった友。マツも右に左に脳を揺さぶられ疲れていた。一服しようと思ったが
ちょうどタバコを切らしていたので最寄りのコンビニに寄ることにした。ここにはお気に入りの店員がおり、マツの行きつけとなっていた。いつもタバコを買っているのだ。今日もニコニコのあいつはいるかな?
「よっ、兄ちゃん!タバコくれ」
「いらっしゃいませ!いつものこちらでよろしいですか?」
そうそうそうと頷き、いつものルーティンを終わらせようとしたマツは目を疑った。
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