第2話 斜めの視線
マツにいきなり誘われて面食らってしまった。頭の中を整理する必要があった。
僕はこの部屋に引きこもっている、いわば引きこもりだ。
誰にも会いたくないとかそういうんじゃない。ただ何をするにも自分より優れた人間がいる。そう思うだけですべてが億劫なのだ。このイマジンプレイヤーも僕より適任な人がいるだろうし、どうしてマツは僕に頼むのだろう。そんなことを考えているとマツが言った。
「お前は暇暇暇の暇野郎だ。この部屋でパソコンポチポチしながら日銭を稼いでいる。
それを悪いとは言わない。けど、こんなもんじゃないっても思ってる。もっと素晴らしい世界があることも知ってる。なにせお前が幼稚園の時に書いた絵がまだ俺の中に残っている。あの絵は未来を切り開く勇者の絵だった。」
イマジンは危険なゲームだ。登録するとイマジンと現実社会がリンクし、ゲームの中で死ねば現実社会でも死んでしまう。しかもこれは合法なんだ。
その変わりゲーム内で手に入れたものは現実世界でも手にすることができる。普通の生活では手に入らないようなものがゲームを通して手に入る。狂気と熱狂渦巻く下品なゲームだ。普通の人間はそこまでのリスクを冒してこんなゲームしない。金持ちの道楽ゲームなのだ。
「・・・そうだね。たしかに僕は願っていたし、願っているよ。この世界をぶっ壊せるくらいの力が欲しいってね。なにもかもが嫌になる瞬間があるんだ。人間の素晴らしい一面に涙することもあるけど、人間の醜い一面に吐き気がするときもある。どちらかというと最近は人間って種族に失望してるよ。」
窓から入ってきていた光が消えた。停電か。そこに突然、凄まじい聞いたこともない雷鳴のような音と共に不気味な紫の閃光が一瞬。窓を開けてみる。
「世界が終る・・・ははは!ははははは!」
僕は気がふれたように笑っていた。これはもしかしたら僕が望んでいた世界なのかもしれない。終末の不気味な光の環が空に浮かんでいる。デッドボーイズシステムが発動したのだ。
ゲームに関係ない者までが巻き込まれ、全男の絶滅が始まる。そのとき何かが僕の心を打った。
「マツ、ごめん。僕は協力できない。」