第十話
「勇者討伐おめでとうございます魔王さま!」
クラッカーと共に祝う声が魔王を祝福する。
「おお、あ。ありがとう」
俺がなんで勇者討伐なんていう事を成し遂げたかというと、それは少し前にさかのぼる。
「魔王さま、クジの売れ行きは好調です」
ゲルト君が満足そうに報告をあげて頷く、うむ資金の回収も順調だし文句なしの成果である。
「そうかそうか、それは良かった、ではこれからマロンのところに行って今日の報告を聞きにいってくるぞ」
俺がそういってドアを開けて店に入るとマロンちゃんが暗い表情で駆け寄ってくる。
「店長ぉー、暗いテンションの勇者がきちゃいました対応お願いいたしぁぁすぅ」
「なんだとぉ! まかせておけぃ!」
マロンのその報告を受けて気合いを入れて自らにバフをかけて気合いをいれる、ついでに甚大な被害を予想して結界の準備をさせる、そして気合いれて望むとそこにはー。
「ずーん」
口でそういいながら涙を流している勇者がいた、やつれて覇気がひとかけらも感じられないが宿命的な力を感じるので間違いなかった。
「お客様どうされましたか? お店の迷惑になりますので退店お願いいたしますでしょうか?」
刺激せずに低姿勢で相手のでかたをみる。
「あんたが店長?」
こちらに顔を向けると目が涙で泣き腫れてヒドイ顔になっていた。
「あんたとこのクジ、魔王クジってあるよね?」
「ええ、まあそうですが?」
「俺、勇者なんだよね?」
なんじゃこいつ、初めて対峙したがなんかタチの悪い酔っぱらいみたいだな?
「だから魔王って名のつくものは調べているわけ」
「はぁ、こちらとしてはインパクト重視でつけただけの名前ですので、なんのへんてつもないただのクジですが、、、」
「それはもう知ってるさ、かなりのクジを買い込んだからね、問題はその後だ」
そういうと勇者は水をグイっと飲み干し言葉をつづける。
「その後お金使いはたして色んなところから非難され、あきれ果てられ、ある事ない事言われて皆から愛想つかれて転落人生さ、どうしてくれんの?」
ええ、勇者ともあろう者がそんな事で人生転落するの? という言葉をグッと飲み干しマロンちゃんに警備のひとたちを呼ぶように目配せする、と数分後に駆けつけた警備の兵たちに両脇を抱えられ連れていかれたのが事の顛末である。
そして時間は今にもどる。
「いやー、俺もまさかクジで勇者が転落人生送るなんて予想外だったよほんと」
俺がそういうとにゃんくるが嬉しそうにはしゃぐ。
「けどまあ、おかけでアレコレ勇者用に考えてた軍事予算浮いて助かったにゃー」
ゲルト君もうんうんと頷く。
「私も勇者用につんでいた訓練のスケジュールを緩くできるので兵士たちの休息も思ったよりとれて満足です」
マロンちゃんも喜んでいた。
「あのお店もあれからなんか口コミで広まってめっちゃ人気になったしね☆」
うんうん、良いね良いねと俺はそういって1つの提案をする。
「皆聞いてくれ、俺は人間を軍事で征服するのはやめにしようと思う、勇者ですらあんなに愚かなのだから、普通の人間はもっと愚かだろう、だから今回のクジ作戦のように、戦うことなくやっていく作戦にしようと思うがどうだろうか?」
その提案に沸き返る皆達、さすがです魔王様と嬉しそうにうなずく。
それから数百年後、表向きは魔王一向は自らの領地でおとなし暮らしているように思えたが、経済面で人間達を操るようになっていた、それがきっかけで魔族と人間が仲良く暮らす世の中((多少の衝突はあるものの))になっていたという。
これにてめでたしめでたし?