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王都到着


草原を走り王都に近付くにつれ、その大きさが際立ってくる。


(で、でけぇ!)


俺のいた村のどれくらいの広さがあるか分からない。

ガキの頃から駆け回った山の広さぐらい……いや、もっとでかいわ。



王都を目指し駆けて行くと、やがて大きな跳ね橋が見えて来た。

その向こうには巨大な門が見え、その向こうは城下町の様だ。


王都は大きな谷に囲まれ、その侵入は容易ではない様に見える。

唯一の道は谷に掛かる跳ね橋だろうが、それを上げれば攻め入ることは厳しいだろう。



跳ね橋に辿り着いた俺は早速門にいた王国兵に走り寄る。

走り詰めではあるが長年の旅で鍛えられていた為、俺は息を切らせず話しかけた。



「へ、兵士のおっさん!」

声を掛けて来た俺を胡散臭そうな目で見てくる兵士。

薄汚れたガキとしか見ていない様だ。


いつもなら気に食わないと喧嘩を吹っ掛けるところだが、今の俺はそんなことはどうでも良かった。


「た、助けてくれ。 俺の師匠が魔族と戦ってるんだ!」

「魔族だと?」


一層疑う様な……厄介そうな目を向けてくる兵士。


「ああ、本当なんだ!! 師匠は俺を守る為残って戦ってるんだ! 頼む、どうか助けを呼んでくれ!!」


兵士は一瞬考えたものの、


「駄目だな。 そんな証拠もないし、大体魔族が何故わざわざ襲ってくるんだ?」

「それは俺が『聖者』なんてスキルをもらっちまったから……」


俺は声を落とす。


そう、俺のこのクソスキルの所為……つまり師匠は俺の所為で……。


落ち込みかけた俺だったが、そんな場合じゃない事を思い出す。


「た、頼むよ! 本当なんだ、このままじゃ師匠が危ないんだよ! 腕を引きちぎられて……」

「ああ~、じゃあもう死んでるんじゃないか?  もういいだろ? そんなのでいちいち兵は出せないよ」

「そ、そんな! 頼む! お願いします!! どうか!!」


俺は……生まれて初めて土下座をした。

人に頭を下げるなんて……今まで一回もなかったのに。


それでも……どうしても師匠を助けて欲しかった。



「しつこいな。 あんまりしつこいと無理矢理追い払うぞ!」


しかし、現実は非情だった。

その後も兵士にしがみついて頼み込んだ俺は、仲間を呼んだ兵士達から寄ってたかって蹴られ、殴られ……気が付くと跳ね橋の袂に倒れていた。


いつの間にか夜になったのか、空は暗くなっている。

城下町の明かりがここまで届く為、辺りを見る分には支障が無い。



俺は痛む体を無理矢理起こす。

顔はパンパンに腫れ、腕や足が数か所折れているようだ。

口の中に硬いものがあり、吐き出すとそれは折れた歯だった。


「う……うぅ……」

悔しくて涙が出る。

痛みなんてどうでも良かった。


ただ師匠を……師匠を救ってほしいだけなのに!!


暫くそうしていたが、腰の杖を取り出すと自分に向ける。


「神の名のもとに祝福を。 の者に癒しと平穏を……『ヒール』」


杖がボゥと淡く輝き、体から痛みが薄れていく。

回復魔法により動けるまで回復した俺は、これからどうしようと途方に暮れた。


(俺だけでも戻るか?)

そんな考えもよぎるが、どちらにしろ俺がいる事で魔族が来るのであれば師匠が危ない事に変わりはない。



「くそったれ!! どうすりゃいいんだよ!!」


バン!!


俺は地面を殴りつける!

手に痛みが走るが構わず殴り続ける。


バンバンバンバン!!!





「あらら~? 何か嫌な事あったの?」


急に俺の後ろからのんびりした声が掛かった。

振り返ると、青い髪をショートにした少女だった。


こざっぱりした格好に、厚手のコートを羽織り、背中にはその少女に似合わない様な大剣を背負っている。



振り返ったが……俺は再び地面に目を落とす。

そんな少女に興味はないしどうでも良かった。


少女の手前地面を殴ることはやめたが。


(もう……何をすればいいかわかんねー。 俺って師匠がいないと駄目なんだなぁ……)


もう……疲れた

師匠と……みんなを助けたかっただけなんだけどな……



俯く顔を俺の長い髪が垂れて覆い隠す。

そして俺が見つめる地面に一滴、また一滴と雫が垂れ跡を付けていく。


(フフ……ここ数年で、俺がこんなに泣くなんて……弱くなっちまったな)

自虐的な笑いさえ浮かんでくる。




バサリ!!


大きな羽ばたきが聞こえたと思うと、トンっと何かが落ちて来たような音がした。



涙が浮かぶ目を音のした方に向ける。

そして……俺は目を見開いた!


「お、お前……」



それは黒いカマキリヤロー。

師匠が……食い止めていたはずの……魔族。



師匠の声が蘇る。


『お前が王都に着くまで必ずこいつはここに留めておこう』


そいつが……ここに来たって事は……。



「お~ま~え~」

俺の中で怒りが膨れ上がる。


「俺の師匠を~~」

立ち上がると杖を構える。


「どうしやがったぁぁぁぁぁ!!!!」

叫びながら飛び掛かった!!



こいつは……こいつだけは許せねー!!!

絶対に倒す……いや、殺してやる!!



怒りで目の前に赤いフィルターが掛かったようだ。

赤一色の世界。


その中で黒い……お前だけは!!!







気付くと俺は地面に転がっていた……。


起き上がろうとして気付く。


(ははっ  俺……左手が無いや)


起き上がる為地面に手を置こうとして左手が無かった。

腕の途中から無くなっている。


色の戻った世界。

でも俺の腕から出ている液体は赤い色のままだ。


右手を使って起き上がろうとする。

杖が邪魔でそこに置くと、右手で立ち上がろうとして……再び地面を転がる。


足もなかった。



右は足首から、左は脛から下がなかった。

血が大量に流れ出て地面に大きなシミを作っている。


(そ、そうか……俺……もう)

きっと俺は死ぬだろう。


村のみんなも死んで、師匠も死んで……誰もいない俺には相応しいのかもしれない。



俺のすぐ前まで魔族が歩いて来た。


倒れている俺の頭に向かってゆっくりと手を向けていく。



(死ぬ……だけど……なぁ!!)


俺は近くに置いた杖を咄嗟に握ると、魔族の足に叩きつけた!!!



「!!」


不意打ちに魔族が慌てて距離を取る!


「クックク! ざ、ざまぁみやがれ! 一発は……入れてやったぜ……」



警戒した魔族は遠くから俺に向かって腕を向けた。

あの光線が出て……俺は今度こそ死ぬだろう。


(親父、お袋、ごめん!  それと師匠……そっち行ったらぶん殴って、それからワンワン泣いて困らせてやんよ!)





「うんうん、君は頑張り屋で素質があるね~」


唐突に明るい声が聞こえ……、


(え?)


俺と魔族の間に立つ人影。

さっきののほほん少女だ。


俺の方を向いてニコニコ笑顔を見せている。


そしてその後ろからは……、


「ば、か……に、げ、ろ。 う、うしろ」



魔族の腕から光線が発射された……。


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