ルート選択
「うーーーーーー申し訳ないッス!!」
リリが何度目かになる謝罪を言いながら俺に抱き着いてくる。
「分かった! 分かったから!! もういいから!」
「肝心な時にルルを守れなかったなんて情けないッスよ!!」
気絶から目を覚ましたリリは先程からこんな感じで手に負えない。
「いいって! 不意打ちだったし気づかなかったのも無理ないって!」
「え? いやサソリには気付いてたッスよ?」
「は?」
サソリに気付いていたのに攻撃食らったのか?
「なんでまた?」
「あのサソリが出ようとした場所に、ミニチュアハタネズミがいたんス!」
「……なんだって?」
「ミニチュアハタネズミッス!」
聞いたことが無い名前だが……、
「あ、知らないッスか? 荒野に住む手乗りサイズのハタネズミなんスけど……」
「すまん、わからん」
「そ、そうッスか……」
ちょっと肩を落としたリリに、
「で、その何たらネズミがいたから……」
「ミニチュアハタネズミッスよ!!」
速攻で修正が入る。
「ああ、分かった分かった! ミニミニハタネズミな?」
「ミ・ニ・チュ・ア、ッス!!」
「ミニチュアハタネズミな? で?」
「そうそう、あのサソリが地中から出ようとした場所にいたから、それを庇ったらハサミでこうバーンっと」
身振り手振りも交えて力説してくれる。
「なるほどな。 それで出現に気付いたけど避けられずに……ってことか」
「そうなんス。 でもおかげでルルを守ることが出来なくて……本当に申し訳ないッス!!」
「ああ、もうそれはいいから! それにだな、俺はその考え好きだぞ?」
「ッス?」
頭を下げていたリリが疑問符を浮かべつつ顔を上げる。
「命の危機にあるものを助けようとするその気持ちだ。 それに俺も同じことをしたかもしれん」
「え、エへへ~……そ、そうッスか?」
「ああ、でも、それでも無理はするな? それで大怪我したら温厚な俺でも怒るからな?」
「おん……こう……?」
リリが嘘だと言わんばかりの顔を見せる。
「いや、なんでそんな顔? 今回も怒ってないし、俺温厚だよな?」
「え、いや~ど、どうッスかね?」
確認する俺に後ずさるリリ。
「おい、なんで少しずつ後ろに……」
「あ、わ、私ちょっと見張りに!」
リリが走って逃げだした!
それを唖然と見送る俺。
(何で逃げたし!? お、俺怒ってないんだけど?)
ポン!
不意に肩を叩かれ……振り返るとライオンだ。
「どうした? ぼーっとしているようだが……」
「あ、ライオン。 聞いてくれよ! 俺って温厚だよな?」
「……」
ライオンの奴、俺の一言で黙りやがった!
「お、おい。 なんで……」
「思い出せルル。 お前が初めて俺の家に来た時の事」
「ん? ライオンの家に初めて行った時の事?」
確か疫病の解呪で訪れたんだよな?
熱があるからって家に行くと、確か家の中で……中で……裸で……
「ぐぁ!!」
「思い出したか? そうだ、お前は来て早々家の扉を叩きつけて破壊し……」
「変なもの思い出させるんじゃねーよ!!!」
目の前にいるライオンの鳩尾に拳を回転させながら叩き込んだ!!
身長的にも丁度良く、正拳突きよろしく綺麗に入る!!
「ぐふっ!!」
ライオンがくの字になって地面に倒れこんだ!!
「ったく!! 折角忘れてたのに、しょーもねーもん思い出させやがって!!!」
「うぐぐ……ち、ちがう、そっちじゃ……」
「うるせぇ! 暫くねてろ!!」
倒れているライオンの後頭部に踵落としを食らわせて黙らせる!
全く!! 暫く一人で頭冷やして落ち着くか……思い出した記憶もまた忘れねーと……。
遠くからそれを見ていたリリ。
(や、やっぱり温厚じゃないッスよー!! いきなり拳が出て……トドメに踵落としなんて……。 に、逃げてよかったッス)
ちょっとだけルルが怖くなったリリだった。
そんな感じ(?)で休憩を挟みつつ、俺達一行は国境沿いの山脈迄辿り着いた。
山脈はなだらかな傾斜に始まりそれが長く登り坂になっている。
目の前にはそれに連なる登山道の登り口が見えていた。
「一応……登山道はあるみたいだな?」
「ふむ、ここの山道はどうなっているだろうか?」
地図を見て見るが……登山道が途中から二手に分かれ、一方は山頂へ、もう一方は中腹を抜け山脈の向こう側へ出るルートの様だ。
「どうしようか……最初の予定だと、山脈を完全迂回するんだったよな?」
「ああ、確かそう聞いている」
ウィルが答える……どうやらそのコースでララに説明を受けたらしい。
「でも山脈抜けた方がはえーんだよなぁ?」
一刻も早く行ってほしいと言ってたし急いだほうが良いんだろうが……。
一応メンバーにも聞いてみる。
「何か意見があるか?」
「俺はルルに従う! お前が溶岩の中といえば溶岩の中でも……」
「ああ~はいはい! ウィルはちょ~っと落ち着こうねー」
ウィルはノエルに背中を押されて連れられて行く。
「……え、えっと、なんだ。 『蒼月斜光』の方はどうだ?」
「俺達はお前さんについていくだけだ。 お前さん達の護衛が仕事だからな」
ゴンズが答えた。
つまりどっちのパーティも俺に任せるという事か。
「よし! 出来れば早めに着きたい。 登山道から中腹を抜け山脈の反対側へ抜けよう!」
俺の決定でララの提示した迂回ルートではなく山道ルートを進む事となった。
しかし道に詳しくない俺が決定したのが後々仇となる事を俺はこの時知らなかったのだった。




