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守りたい故


俺が青年に案内されて行くと、そこは集落の入り口だった。

閉ざされた柵の前で数十名ほどの人が集まっているのが見える。


近づくに連れ怒鳴り声等が聞こえてきた。


「疫病に感染したんなら此処から出ていけ!」

「そうだ! ゾンビ化したらどうするんだ!」

「此処には生き残った子供達も居るのよ!」


老若男女問わず、口々に叫び誰かを責めているようだ。


「すみません! 皆さん道を開けてください!」


青年の声に、


「ワットじゃないか? メリルさんはどうした?」

「その話は後で……今はこの方を!」


そう言って道を開くと人々に囲まれていた人が見えた。

どうやら家族のようで夫婦らしき二人と、その間に幼子の姿が見える。

夫婦はまだ若く、子供を庇うようにしながら怯えていた。


俺は夫婦に駆け寄りしゃがむと、


「大丈夫か? 疫病になったのはどいつだ?」

「お、お願いします! 殺さないで下さい!」


いきなり夫の方が俺に縋り付いてきた!


「大丈夫だ、俺が治してやるから安心しろ! それより病人は?」


夫は俺の言葉で身を離すと妻と子供に視線を送る。

すると子供を庇いながら妻が俺の方に寄ってきた。


顔色が悪く熱があるな……妻の方が病人か……

子供の方は……こっちもだな


「旦那さんか? あんたは?」

「わ、私は今の所は……」

「分かった、ひとまず二人からだな」


俺は妻と子供に杖を向けると『アンチカーズ』の魔法をかけてやる。


これで呪いは消えたはず……


「これで大丈夫だ、二人は助かる。 ただ熱で体力が下っているから安静にしてやってくれ」

「ほ、本当ですか!?」

「ああ、俺は僧侶だからな。 疫病を治せるぜ」


俺の言葉を保証するかの様に、


「お父さん! 頭痛くなくなったよ!」

「身体が楽に……」


呪いが消えて楽になったのか子供と妻が嬉しそうな表情を見せる。

心なしか顔色も良くなっている様に見えた。




二人の容態と俺の言葉で周りの住民達がざわめく。


「治っただと!」

「奇跡だ」

「何て事だ!」


俺は騒ぐ住民達に、


「これでこの人達がここを出る必要はないだろ?」


その言葉に騒ぎ立てていた住民達は互いに顔を見合わせ、


「まぁ……治ったんなら……」

「そうだな」

「ええ、そう言うことでしたら……」


そう言いながら住民達は散りながら戻っていった。




「ありがとうございます!」


夫婦と子供は俺に何度もお礼を告げると、そのまま三人でそそくさと戻っていった。



しかし……疫病者を排除する動きか……

分からないでもない……誰だって死ぬのやゾンビは怖いし、近くに家族や大事な人がいれば、その人を守ろうとするだろうしな

でもだからといって、まだゾンビでもない人を殺すなんてやり過ぎだぜ……



俺は側にいたワットと言う青年に、


「ここにいる住民は疫病にかかっていないのか?」

「え? ここにいる全員でですか?」

「ああ、この疫病は一回治せば再発はないが、掛かっていない奴がいれば今から掛かる可能性があるからな」

「そ、そうなんですか? えと、メリルさんなら知っているかもしれません」

「それならもう一度戻って聞いてみるか」


そう言ってワットと共に戻りかけた俺だが、


「あ、あの!」


いきなり声が聞こえ、見るとアルトと同じぐらいの男の子だった。


「どうした? 俺に何か用か?」

「はい、僧侶様に実はお願いがあって……」

「僧侶様じゃなくてルルで良いぜ。 それでお願いってのは?」

「それは……」


男の子はチラチラとワットに視線を向ける。

どうやら彼がいると話しにくい内容の様だ。


「あ〜、ワットだったか? 俺はちょいとこの子と話ししてから戻るから先に戻っていてくれ」

「……そうですか、分かりました」


ワットは少し男の子を見ていたが、俺の言葉に頷くと戻って行った。


「すみません、ルル様」

「様も付けないでいい。 体がむず痒くなっちまうからな」

「でも流石に呼び捨ては……」

「だったら『さん』付けでも良いぜ。 ……それより要件とやらだが、これで話せるか?」

「はい、ありがとございます」


お礼を言う子供を改めてみて見る。

アルトと同じぐらいの年齢に見えるが、アルトとよりは活発でやんちゃそうに感じた。


「僕はシュウと言います。 お願いと言うのは僕の幼馴染を助けて欲しいんです!」


子供ながらに切羽詰まった表情で必死に迫ってくる。


「幼馴染がどうしたんだ?」

「僕の幼馴染……名前をベルと言います。 彼女も少し前に熱を出してしまって……」

「疫病か? どこだ? 俺が治してやるから……」


シュウは暗い面持ちで首を横に振ると、


「彼女は此処にはいません」

「じゃあどこに居るんだ?」


シュウは沈んだ表情のまま……手を強く握りしめて言った。


「彼女はまだ街の中に居るんです」


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