第9話 両親の前で報告
それからしばらくした秋の暑い日に、マコの家の庭でバーベキューをするというので、ウチの家族も呼ばれていった。
広い庭にドラム缶型のコンロを置いた盛大な焼き肉。
俺が行くと、ウチの父ちゃんとマコの父ちゃん、オレとマコで庭にテントを立てた。
寝る用のヤツじゃなく、座る程度のヤツ。オレとマコはその中で肉を食ったりジュースを飲んだりした。
腹が膨れると、どっちが少ない指で指立て伏せを出来るか競争した。10回は伏せられないと出来たことにならない。
オレが親指と中指だけでやったら、マコは親指だけでやりやがった。悔しがっていると、酔った父ちゃんたちに呼ばれてオレたちはテントから出て行った。
マコの父ちゃんはオレを近くに呼んだ。
空手の師匠だ。今まで何度怒られたことか。
何かで怒られるのかと思ったら、こんなことを言ってきた。
「リュージ。お前、マコと将来を誓い合ったんだって?」
どうやらマコが自分の母ちゃんに言っていたらしい。
オレは平然と応えた。
「押忍。そうです」
「覚悟があってのことか?」
そりゃお互いの心が大事だし、マコと遊ぶのに覚悟も何もない。大丈夫だと思った。
「押忍。覚悟あってのことです」
そう言うと、ウチの母ちゃんは苦笑いをしながら
「子どもが言うことですから……」
と言う言葉に、マコの父ちゃんは片手を上げて制した。
「聞いての通りです。私もリュージを息子のように思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます」
そう言って、ウチの両親に握手を求めた。ウチの父ちゃんはすでに出来上がっているのか、楽しそうに手を叩いていた。
マコはと言うとモジモジしながら真っ赤な顔をして地面をつま先で蹴っており、芝生に小さな穴をあけていた。
この時、オレはまだ大人になっても一緒に遊べるんだなぁ。ぐらいにしか思っていなかった。