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第8話 将来の約束と初めてのキス

小六の頃。オレたちは遊びで山の中に入って行くと廃屋を見つけた。


「探検だーっ!」


そう言いながら突撃。

平屋で錆びたトタンに周りを固められたその廃屋は広い土間しかない小さい小さい小屋だった。

昔、林業でもしていたおっさんが道具とか丸太とか置いていたのかもしれない。

少しばかり薪材程度の丸太が積んであったがすでに朽ちていた。

壁の木材も苔むしてところどころ腐っている。天井を見ると大きな穴が開いていた。


「おー! ここをオレたちの秘密基地にしようぜ!」

「だな!」


二人して、枝やら板やらブルーシートやらを集めてそこそこ住める形にした。

学校が終わると二人でいつもそこにいた。

暗くなると懐中電灯をつけて、毛布にくるまってお菓子を食べた。


その時マコがこんなこと言いだした。


「なァ?」

「なんだ?」


ためらいがちだった。普段のマコからは全然思いもよらない言葉だった。


「……リュージ。好きな人いるか?」

「は?」


考えたこともなかった。いや、周りでは早い奴は付き合ってるやつとかはいた。

だが、オレはマコとこうして遊ぶことが楽しかったし、別に仲のいい女子なんていない。

硬派なオレたちは女なんて関係ないと思ってたんだ。


「……うーん。考えたことねぇなぁ」

「そっか」


それは安心したような感じだった。

自分もいねーから、それが普通かどうかを確認する質問だったのかも知れない。


「強いて言えばマコかな?」

「は?」


「まー、ずっと一緒にいたいしな」

「そ、そ、そっか」


マコは食べ終わったポテチの袋をガサガサと畳んだ。

しばらく何も言わずに自分の手をこすったり揉んだりしていたが、やがて絞り出すよう言って来た。


「ま……オレもリュージのこと好きだしな」

「だろ?」


「りょー思いか?」

「バカ。気持ち悪りぃー。」


「でも、まぁ将来ずっといたいってお互いに思ってるって思ってていいのか?」

「そりゃそーだろー」


マコは気持ちわりぃくらいニマニマ笑って赤い顔を立て膝の中に隠し、グラグラと揺れていた。

オレはそれを見て一人でキョトンとしていた。

すると、マコはスッと顔を上げて右手の小指を突き出して来た。

オレはえげつない目つぶしをしてくるのかと思い、身構えた。


「バーカ。何勘違いしてんだよ。指切りだ。指切り」

「は? 指切り? なんの?」


「将来も一緒にいるって約束」

「ああ」


そう言われてオレも指を出した。

マコは今までにないくらいの力で小指を絡ませて来た。


「いてぇ! いてーよ」

「我慢しろよ。男だろーが。ゆっびきりげーんまーんうっそついたら針千本のーます! 指切った!」


マコらしからぬ楽しそうな感じでの指切り。オレも楽しくなって最後の方は一緒に調子を合わせて歌った。

指切りをしたあと二人して毛布の中で馬鹿笑いした。


毛布の中に入って洞窟遭難ごっこ。

並んで寝転び、懐中電灯の光とわずかなお菓子を前に置いて、ただダベるとか他愛のないの遊びだ。

その時マコはカチリと懐中電灯のスイッチを切った。


「おい。何も見えねぇ」

「あ、わりぃ。わりぃ」


その時、マコの長くなった髪がオレの額に触れ互いに唇が触れ合っていた。

マコはそれを軽く吸ったように感じた。


「う、うぉい!」

「……わ。ビックリした。当たっちまったか?」


「当たったよ! チュウしちまっただろ? 気持ちわりぃな! テメーは!」

「けっけっけ。わりぃわりぃ」


暗いがために起きた事故だったんだろうけど、マコにいわゆるファーストキスを奪われた。

こんなこと、誰にも言えねぇ。

ファーストキスがワーストキスだと思っていた。

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