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第67話 逃げろ〜!

会場の歓声が聞こえる。

ピーピーと囃し立てる声。

だが、その声が徐々に静まり返る。


師匠がイラついた顔で近づいて来た。

前にもあったこんなシチュエーション。

あれは師匠の道場でマコにハグを決めてるときだったな。

厳密に言えばあれはハグじゃねーけど。


でも今回は逆だ。あの時はオレが上。今はマコが上。

危険を察知したオレはマコの背中の帯を摑んで抱きかかえバックステップを切った。


「リュージ、テメー。また娘をたぶらかそうってのか!?」

「いえ師匠。マコと将来結婚させて下さい」


「バカか。テメーらにはまだ早い」

「そうかもしれませんが、許されなかったら強引にさらって行きます」


「なんだと?」

「例えばこんな風に」


オレは、マコを連れて人垣ひとがきをかいくぐり、師匠の前から逃げた。


「リュージ。捕まっちゃうよ! それに大会は?」

「うるせー。久しぶりに会えたんだから大阪の町をデートしようぜ」


「……分かった」

「へへ」


照れながら答えるマコに、オレは笑って返した。

師匠後ろで構えていた。


「すーーーーはーーーー」


大きく深呼吸をして、オレの後頭部目掛けて利き手の中指と人差し指をつけたものを打ち下ろす。


「きえーーーい!!」


しかし、オレたちは駆け抜ける。何事もなかったように。


「な、なんでリュージにできて、オレに出来んのだ?」


そこに大師匠が近付く。


「雑念が多いのよ。あのリュージのように真っ直ぐな心を持たんと。もう一度修行の仕直しじゃな」

「お、押忍」


「思い出すのぉ寅道。ああやって逃げて行った男がいたのぉ」

「いや、先生。それは……」


そんな二人のやりとりの中、オレたちは出口に向かって走り抜ける。

だが後ろから師匠の怒号が聞こえた。


「おい、止まれ! リュージ! やっぱり許さんぞ! オイ、お前ら! 大会なんてどうでもいいからあいつらを追え!」

「お、押忍!」


突然、周りが全員敵になる。

ゾンビみてーにあっちからもこっちからも道着を来た連中がオレたちを捕まえてこようと追いかけて来た。


出口の扉。

そこに一人立っていた。


「全く、待ちくたびれたぞ。ホイ!」

「テツ。サンキュ!」


テツが投げ渡したのは駅中のコインロッカーのカギ。

そこにはオレとマコの着替えが入ってる。マコの服はテツと選んだものだ。

今までの謝罪の意味も込めてプレゼントにオレが買った。


「悪ぃ。テツ。後は頼む」

「オッケー。しかしテメーの勘違いでみんな振り回されたな。オレならそんなことしねーな」


「うっせぃ」


テツは中に入り込んで入り口のカギを締めた。

追いかけて来た連中は、そこで足止め。

カギを開ける頃には完全にオレたちを見失ったろう。


その後、オレとマコは大阪の町をデートした。

久々に空手から開放されて楽しい時間。


テツはその間、大会会場に置き忘れた荷物をかき集めて持って来てくれてた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



その後は話さなくても分かるだろ?

オレも強化選手として天心志館に編入。

世界大会では夫婦で金メダルをとったって話題になったから覚えてるよな。

マコとオレは子どもの頃のように二つの優勝を飾った。


テレビで「白井両選手が二人で金メダルを勝ち取ったー!」ってやつ。

マコの親父さんは今では孫にデレデレだけど、それまでにはかなり意地悪されたよ。


だけどテツも協力してくれてオレたちは晴れて18で結婚することが出来たんだ。

いいやつだよなぁ。オレの大親友。

感謝と尊敬しかねぇよ。テツにはよ。


でもまぁ、なんだ。例え話が長くなっちまったけどよ。

テツってのは最後にそう言ったんだよ。


キミの婚約者のテツが、キミと弟さんが歩いてるのを見て浮気と勘違いして婚約解消って言ってるって、その話なぁ。

今から呼び出して、大阪で言ったあの言葉を伝えてやろうと思うんだ。

だから、もう少し時間をくれよ。

今電話するからさ。

長い間ご愛読ありがとうございました!

短編とは違った終わり方にしてみました。


近々、番外編を掲載予定です。

そちらもよろしくお願いします!

(*- -)(*_ _)ペコリ

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