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第65話 まだまだだ

審判からリスタートの合図。

だが神納は攻めて来なかった。

その場で四股しこ立ちの姿勢をとって両膝に手を当てニヤリと笑った。


挑発している。攻めてこいということだ。


だがそれを待っていた。


オレは結び立ちから普通に前屈ぜんくつ立ちに立ち方を変える。


会場の熱狂が止まる。そして失笑。

間合いが遠すぎるのだ。

ここから拳を出したところで神納には届かないということだろう。


傍目から見れば子どものお遊戯。

だが次の瞬間驚愕の声で会場は包まれた。


「きえーーーーい!」


神納の胸元に向けて指射を放った。

当然オレの指射は弱い。

ただの目くらましだ。


だが神納はよろめき、胸を押さえた。

なぜだと思っただろう。

驚き戸惑ったであろう。


それが貴様の敗因だッ!


前屈の立ち方は前に侵攻するのに適している。

その瞬間、オレは大きく踏み込んで空中で体を横回転し、神納の胸に利き足の踵を打ち込んでやった。


胴回し回転蹴り。


起死回生の大技だ。

大師匠と指射からの胴回し回転蹴りの練習をずっとしていた。

目くらましからの大技。

それは神納にとって最大の有効となるだろうということだった。


もっとも大師匠はこの一般的に知れ渡った胴回し回転蹴りは自分が開発した「鑿落のみおとし」と呼んでいたのだが。

大工道具であるノミのように鋭角に踵おとしをくらわせるという技だということだ。


ともかく、神納はオレの全体重がかけられた胴回し回転蹴りをくらって場外まで吹っ飛んで行った。

見事な有効ポイントに、時間切れ。


審判は戸惑っていたが、オレの方に手を上げた。


「勝者、白井選手!」


試合は終了した。

そこに、大師匠が立っていた。


「己に()ったな」

「押忍」


「だがまだまだだ」

「押忍!」


当然まだまだだ。

ここがオレの空手人生のスタートかも知れない。

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