第5話 ヤジは許さねぇ
仲間うちで草野球をしていたとき。
グラウンドが埋まっていて、オレたちは野球が出来る場所を探して自転車で走り回ると学区外にそこそこの広さの広場を見つけたので、そこでやることにした。
5対5ほどで楽しんでいたのだが、そこに地域の連中だと思われるものが自分たちがやるから出て行けといってきた。
5、6年生ほどの上級生もいたが、オレもマコも一歩も引かず、互いに試合をしようと提案した。
まぁ、お互いに遊びだから向こうも乗って来て試合をすることになったんだ。
マコがピッチャー。オレがキャッチャー。
向こうの連中はヘタクソで点差はどんどん開いた。
だが、お互いに楽しんでやっていたと思う。
試合も後半になってきたとき、向こうからヤジが飛び始めた。
ヤジはヤジで構わなかったが、それはこういうものだった。
「オットコの中にオンナがひっとり!」
オレはムカついた。メンバーの中にヒョロヒョロもやしのタカシがいたからだ。
いくらタカシがヒョロヒョロだと言ったって、盗塁を任せりゃ仲間一だ。
オメーらもそれで苦しんでるから、そう言う惑わせ作戦だろう。
こいつの足にかなうヤツがオマエらの中にいるかぁ?
女に見えるってそりゃねーだろうと思い、グローブを外して投げつけた。
「オイ! オメーら! そりゃねーだろうが!」
そう言いながら殴り掛かって行くと、そのままみんなを巻き込んで大乱闘。
結果、連中は逃げて行ってしまった。
「バーカ! 試合放棄しやがって! オレたちの勝ちだ!」
そう叫ぶと、マコがオレの上着の端を小さく握って後ろに立っていた。
「……リュージ……。ありがとな」
「なーに。いいってこった。仲間をバカにするヤツは許せねーからな!」
その言葉で仲間たちもワッと沸いた。
マコもタカシのことを思ってリーダーとして礼を言ったのかと思ったんだ。