第47話 衝撃の事実
マコがオレと結婚……。
それって何の話?
「あのぉ〜テツ?」
「なんだよ」
「マコには彼氏がいます。それは誰でしょう?」
「そりゃオメーじゃねーかよ。……いや、今では彼氏がいましたになるのか?」
「え?」
「まぁ、しょうがねぇ。ずっと兄妹みてぇに一緒にいたんだ。心変わりしちまってもなぁ」
「ちょちょちょちょちょっと待ってくれよ」
「なんだ?」
「なんでオレがマコの彼氏なの?」
「は? 知らねーわ。昔の小学校の連中はみんな知ってるし、親公認だろ。マコのオヤジさんなんてオマエを婿養子にしようとしてるって知らねーヤツはいねーだろ?」
「いやいやいやいや」
「なんだよ。だから分かったわ。オマエにはマコ以上に好きなヤツが……」
「ちがーう! オレはマコに片思いしてんの!」
「何言ってんの? バカにしてんのか?」
「マコには神納正十郎という彼氏がいて、本人も付き合ってるって言ってたんだぞ?」
「はぁ? 神納って空手のかよ。んなわけねーだろ。そいつが勝手にオレの女みたいなふうに言ってただけじゃねーの?」
たしかに、シチュエーション的にそんな気もするが……。
「でも、付き合ってるって……」
テツは少し首をひねって考えた。
「オメーがなんて聞いたかしんねーけど、マコはオマエと将来をともにするってずっと決めてたんだ。だからマコはオメーのことよくオレに相談してたよ。オメーがバカすぎるってよ」
ムカつくが、思い当たる節もある。
「付き合うって、空手の話じゃねーの? 練習中に突き合うってやつ」
オレは頭を抱えた。そう言えば、マコはあの時、そんなゼスチャーをしてたっけ……。
「うそだろ? オレずっと勘違いしてたのかよ? ああクソッ!」
テツはそのまま椅子の背もたれに顔を突っ伏した。
「コイツ、ホントばか。殴りたい!」
「オレも殴られててーわ! マコに謝らなきゃ!」
「……それがなぁ。リュージ」
「は?」
「マコは本当にショックだったんだろう。大阪の天心志館の中等部へ転入しちまったんだわ……」
「は? は?」
「うん……。さっさと転入手続きしてな、昨日学校から出て行っちまった。おばさんと向こうで暮らすらしい。おじさんは仕事やら道場やらの関係で残っているらしいが……」
「そんな……。そんな……。ワッ!」
テツの言葉が終わる前に泣いてしまった。
小石みてぇな涙がゴロゴロ転がり出してくることを止めることが出来なかった。
人の前で自分が彼氏だと思っている人間に冷たく突き放されたなんて、心が痛んだろう。
ましてやそれが長い付き合いのオレからだったなんて、そりゃショックも大きかったろう。
アイツの精神を壊してしまったかも知れない。
一番に守らなくちゃならねぇアイツのことを傷付けた。
悔やんでも悔やみきれなかった。