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第44話 こわれたふたり

体が震える。

マコが好きだ。大好きだ。

だがマコにとっては自分は格下の都合のいいカモフラージュの使い捨てアイテムだと思われていることに腹が立った。


マコに近づく為に鍛錬に鍛錬を重ねた。

神納にはまだまだ及びも付かない。

マコにとっては神納は竜。オレは蛇なのかもしれない。


だからって今までの楽しく遊んだ日々を捨ててまでオレをみんなの好奇の生贄にするなど断じてあってはいけないと思ったんだ。

呼吸が整わない。

小さく一つだけ咳が出た。


もし……この場にテツがいてくれたのなら、殴ってもオレをとめてくれたろう。

一番真相をしる男だ。


「バカかてめぇ〜。マコがオレの前でリュージが好きって言ったの忘れたのかよ!」

「え?」


「オメェはバカで今まで勘違いしてたのかよ。両思いでオマエが必死こいてもがいてただけだろーが!」

「ま……マジ?」


「ホラ。マコに謝れよ」

「お、おう……マコ……今まで勘違いしててごめんなさい。だから殴らないで下さい」


しかし、マコから熱い鉄拳。


「ふざけんなよテメ〜。オマエなんてこっちから嫌いになってやっからよ」

「え、ウソ。マコ、ゴメン!」


「んふふふ」



そんな感じでおさまったかも知れない。

だがここにテツはいなかった。


「何言ってんだ! オメーは何を勘違いしてんだよ!」

「え?」


教室が一斉に静まる。

先生が来てホームルームが始まるわずか三分前。

オレの怒号が響き渡り、マコの消え入るような小さな「え?」。


だが、オレの怒りは覚めやらなかった。

この女の為に今まで一生懸命だったと言うのもそれに拍車をかけた。

頭もボウッとしており、もうどうでもよくなってしまったんだ。


「なんでオレとオマエが恋人なんだよ! いい加減にしろ! ふざけんな!」

「え? やだ。リュージ……」


「それになぁ、それに……」


これから先のセリフを言うのははばかれる。

どーせ、アンタは『バカ』というに違いない。

まぁ言われても当然だ。自分自身そう思うんだから。


「オレには好きなヤツがいる。オマエみたいな長髪の女じゃねぇ!」


マコのふっくらしてかわいい、涙袋の上に涙が盛り上がって行くのが分かる。

それがこぼれる前にマコは机に突っ伏してしまった。


それにも構わず席に着いた。

クラスメイトたちも潮が引くようにざわつきもせず席に着く。

そこに担任の藤ゴリラが入って来て、いやみったらしく


「おはようございます。おや今日は静かですね」


と言いながら教壇に立った。


「へー。君たちもやればできるんですね。おや? 近内さんどうしました? 体調が悪い?」


一人だけ突っ伏しているんだ。

そりゃ言われても当然だ。

マコは机の横にかけてあったカバンを取り、素早く立ち上がって教室の出入り口の前に小さな声で


「早退します」


と言って出て行った。

その声はか細く、涙声だった。

その時でも、オレに裏切られて悔しいのだろうと思っていた。

みんなの前で恥をかかされたのはお互い様。

しばらく反省しろ。

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