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第43話 異変

そしてその日がやって来てしまった。

今でも後悔してもしきれない。


テツの不在。

そしてオレの極度の勘違い。

それが大きいだろう。


でもなければ、マコと順調に楽しい恋人になれていたはずだったのだ。


その日の早朝もいつものように15キロのジョギングをしていた。

もう走るだけなら師匠は付き合わない。

夜も遅くまで鍛錬に付き合ってくれるので、走るのくらいオマエ一人でやれということだ。


駆ける。駆ける。駆ける。

打倒、神納正十郎。

ヤツより強い男になってマコに振り向いてもらう。


オレの方が長い時間一緒にいたんだ。

これからだってそうありたい。


なれたとは言え、15キロの走破はキツい。

家の近くの公園。マコと待ち合わせしたあの場所。

そこのベンチの前がこのジョギングのゴールと決めている。


息継ぎ粗く、へたり込んだその時だった。


「コヒュ! あれ?」


咳が一つ飛び出した。

それから連続して5回。

今になって思えば疲労が蓄積していたのであろう。

ノドの奥からゼロゼロと喘ぐ音が聞こえて来た。


しかし、右腕で胸をドンと打ち付ける。

何を弱ったれて病気のフリをしてやがるんだ。体。

そんなんで神納が倒せるか!

気合いが足りねぇ。


強化選手の顔合わせを三日後に控えた日であった。



登校するのも息苦しさを感じた。

深呼吸しながら進むものの、頭もボーッとしていた。


ホームルームの5分前に到着。

いつもより10分遅い。

それだけ呼吸に悩まされていたんだ。


マコの前に大きな人だかり。

それがこちらを向いてヒューヒューと口笛を吹いた。


マコが嬉しそうな顔をしてこう言った。


「リュージゴメン。言っちゃった!」


なんだ?

何を言ったんだ?


マコの前の人だかりが、こちらに向かってくる。


「白井、女になんて興味がねぇなんて言ってたくせに、近内さんと付き合ってるんだって?」

「は?」


ニヤニヤしながらクラスメイトたちが好奇の目で見てくる。

意味が分からなかった。

マコの恋人は神納正十郎だ。

それがオレと付き合ってるなんてありえない。


ハッと思った。


神納は高校二年生だ。そんな歳上と付き合っていると言うことが恥ずかしいのかもしれない。

キスをしたり、それ以上のことをしたのかもしれない。

そんなのがみんなにバレるのが嫌で、オレをカモフラージュに仕立て上げるつもりでは?


いや、マコはそんなヤツじゃねぇ。

オレの親友だ。なにか深い意味があるのかも……。


マコの方を見ると、左目だけ閉じて目配せをしてきた。

後に分かったことだが『アイシテル』と五回ウインクしたらしいが、オレは別の意味にとった。


親友ならこの場をおさめる為に合わせろよ。と。

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