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第40話 夢でよかった

次の日、朝起きるとマコはいなかった。

たしかにあの腕に抱かれていたのに。

あれは夢だったのか?


急いで起きて、道場に行くと師匠に遅いと叱られた。

そこには笑いながらマコも立っていた。


「おせーぞ。リュージ。まぁ昨日の今日だ。今日はコースを短くしよう。5キロのランニング始め!」


いつもの三分の一。

少しばかり精神的に疲れていたので丁度いい。


師匠は自転車に股がり駆け出した。

オレはそれに付いて行く。

その横にマコもいた。


最初は顔を見れなかったが思い切って謝った。


「マコ。ゴメン。昨日は……」

「え? なんのこと?」


「え?」

「優勝のこと?」


「い、いや。昨日、家に来た?」

「行ったけど寝てたから帰ったよ」


「う、うそ。マジ? 夢?」

「ふふ。どんな夢?」


欲求不満なのかもしれない。

部屋に入ったマコの匂いがして、それで夢を見たのかも。


「あ〜! そっか! 夢か! よかったぁ〜!」

「なに? どんな夢?」


「うぉぉぉぉおおーーー!」


オレはピッチを上げて駆け出した。

マコは後方から「どんな夢?」と聞いて来た。

くすぐったい言葉。

でも夢で良かった。


なぁ、マコ。待っててくれよ。

世界制覇の実力を今から期待されてる神納正十郎。

それから見りゃぁオレは見劣りするだろう。


だが、ヤツに勝つ。

そしたら告白させてくれ。

きっとオマエに見合う男になるから。



だが神納正十郎は高校生大会の全国優勝を2度もした男だ。

それが中二のオレで敵うわけもない。

ウエイトもリーチも全然違う。

スピードや技のキレなんて目も当てられない。



オレはマコがいない時にもう一度師匠に土下座した。


「なるほどな。神納に勝ちたいと」

「はい」


「それでもう一度鍛え直して欲しいと言うことだな」

「いえ……」


「ん?」

「どなたか、いい先生を紹介して頂きたく……」


正直、こんな街の小さな道場の師匠では勝ち目がないと思ったんだ。

だが師匠はそれを聞いた途端、ずっこけた。


「リュージ! なんでオレじゃダメなんだよ」

「いえ、そういう意味じゃなく……」


師匠は、道場の壁に下げられている賞状の数々を指差した。


近内寅道こんないとらみち

日本空手道連盟 高校生大会 個人の部 優勝


近内寅道

日本空手道連盟 全国大会 個人の部 優勝


近内寅道

空手世界大会 個人の部 優勝


世界大会の賞状には金メダルも一緒に入っていた。

師匠は誇らしげに鼻を鳴らした。


「誰ですか?」

「ぅおい! オレだ!」


「え? 師匠?」

「マコが強化選手になったから家にいるが、ちゃんと大きな道場でも教えてたし、強化選手のコーチもやってたんぞ?」


「ま、マジすか」

「まぁ、任せろ。オマエは筋がいい。贔屓目じゃねぇ。神納を破るのはオマエだ!」


まさか師匠がそんなに頼もしい人だなんて全く知らなかった。

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