第35話 大会出場
次の日。師匠の車に乗って、オレとマコは大会会場まで連れて行かれた。
今日の大会は強化選手は関係ない。
中学部活と、道場の中学生が参加出来る。
他に、高校生もいる。
中学男子、中学女子、高校男子、高校女子の順で区切られ、それぞれトーナメント方式だ。
最初は団体戦が行われ、次に個人戦。ここにオレとマコは入って行く。
オレとマコは師匠の道場から出場と言うことで二人しかいない。
かえって気が楽だ。
他のところはぞろぞろ人がいる。
「いいか? オメーら。オレは役員だし審判もしなくちゃいけねーからここから離れるが、変なことすんじゃねーぞ!」
変なこと……。おそらく血の気が荒いやつらばかりだからケンカなんかするなと言う意味だと思い、返事をすると師匠は足早に去って行った。
二人して会場の畳の一角に小さいレジャーシートをひいた。
ここがオレたちの陣地。
マコが持って来たバッグには、あの遊園地で買った人形と、テツと共同で買ったお守りがぶら下がっていた。
「あ、それ」
「うん。ウチの守り神」
「すげぇ」
「んふふふ」
ちゃんと付けていてくれていることが嬉しかった。
開会式も終わり、会場は活気づいて行った。団体戦を見ていると血が騒ぐ。
どこのチームの誰が強そうだとかマコと言い合ったりしていた。
「なんだアイツ! デカくて強ぇえ!」
「碧中の三年、牛島くんだよ」
「あのゴツくて貫禄あるのは?」
「剛掌会の猪俣くんだね」
「向こうのもデケぇ!」
「剛掌強人会の犀川くん」
「あんなに小さくても大将ってのもいるんだな」
「黒華中の都権くん」
「やっぱ何でも知ってるなぁ。マコは」
「あの人たちも大会の常連さんだよ」
「うげ。やっぱ強ぇえんだろうなぁ」
「まーね。でもリュージも負けてないと思うよ」
「マジかよぉ」
たしかに師匠やマコを良く見ているからだろうか?
牛島や猪俣、犀川の動きを見れないわけじゃなかった。
しかし、大会の熱量は凄まじく、圧倒され緊張感が押し寄せて来たんだ。
マコは別の中学の女子に連れられてどこかに行ってしまった。
オレはポツンと一人。
自分の出場まであと1時間ほどある。
その辺を歩いてみようとブラつき始めた。
自動販売機のスペースがあった。
壁で囲まれており、少しばかり薄暗い。今現在の利用者はゼロ。
それで儲かるのかな? と思いながら中をのぞこうとすると背中をトンと押されて中に入れられた。