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第30話 相合傘

次の日。顧問の先生が結婚式に呼ばれていると言うことで、ちょうど部活も休みだった。

オレは早朝のジョギングをした後、シャワーを浴び、することもないので公園に行ってマコが来るのを待っていた。

まだ時間は8時。全然早い。時間があるのでベンチの前でスクワットをしていた。

途中、テツが自転車で前を通り過ぎようとしたので大声で呼んだ。


「おう! テツ!」


テツはこっちに顔を向けると自転車のまま公園に入って来た。


「なんだリュージ。オマエ何してんの? 部活は?」

「今日は休みなんだ。マコの買い物の付き合いをするって感じ」


それを聞くとテツは自転車のハンドルに顔を埋めてしまった。


「どうした?」

「うーん。オレは呆れた! なんだその格好! 小学生が虫取りにいくんじゃねーんだぞ! ダセェ!」


「ダメか?」

「ダメだ。バカか。とっとと帰って着替えて来い!」


他ならないテツがいう言葉だ。

仕方ないので、家に帰ってそれなりの格好をして戻ってくると、テツがまだ公園で待っていてくれた。


「これでどうだ?」

「……。正直クソだがさっきよりはマシだ。オマエ自分が中二だってこと忘れんなよ。そろそろファッションを考えろ。ああ、もう完全に遅刻だわ。バーカ! リュージのバーカ!」


「なにおう!?」


拳を振り上げて追いかけようと思ったがテツは全速力で行ってしまったので諦めた。


ベンチに座り、公園の時計を見ると8時45分。

暇つぶしに、落ちていた木の枝を取り地面に自分の名前を書いた。


成績は悪いが漢字を書くのは好きだ。

漢字は格好がいい。

特に自分の名前が好きだ。


竜をつかさどるで『竜司』。

ドラゴンだ。ドラゴン。


そしてその隣りにマコの名前を書く。


マコの『実』ってパッとしない。

あんなに強いんだからもっと強そうな名前がいいと思い、オレが小学生の頃に思いついた名前。


真の虎の人で『真虎人まこと』。

超カッコいい。


オレが竜であいつが虎。

いいだろ? いい感性だといつも思う。


「何やってんの?」


顔を上げると、白を基調にしたオシャレな姿のマコがいた。

これがオシャレか。やっぱ彼氏持ちは違うなぁと正直思った。


「おー。マコか。買い物ってどこにいくんだ?」


「どこって隣町のショッピングモール行って、ギャラクシーハイランドにいこうと思ってたんだけど」

「はぁ? 何それ」


「いいじゃん。久しぶりに二人なんだし」

「まぁ、別にいいけどよ。最近金使うこともねぇから貯まってるし。遊園地かぁ。面白そうだなぁ」


「でしょ? でしょ?」

「明日大会なのにうかれてていいのかなぁ?」


「いいよ!」

「そーだな。いいな」


オレがベンチから立ち上がると、マコは地面を指差した。


「なにこの漢字」

「ああ。ふっふ〜ん。これはオレ。竜司だろ?」


「ウン……」

「そして、こっちは真の虎の人。マコちゃんのお名前でした〜」


と手を広げて戯けてみせた。


「なんだそりゃ。メチャクチャ男の名前じゃん」

「かっこいいだろ?」


「別に? もっとカワイイ名前あるじゃん?」


そういってマコはオレから木の枝を取り上げた。

せっかく書いたものを消すのかと思ったら違った。


名前の上に大きな三角を書き、二人の名前の間に線を引いた。

まるで矢印。それは隣町を指していた。

つまり、これから二人は隣町に行く。みたいなことだろうと思った。


「ああ、そういう意味か」

「ふふ。分かる?」


「あったりまえだろうが」

「あ、待って。写メとって待ち受けにする」


「待ち受け? なんの面白画像だよ」


マコはスマホを持たせてもらってる。

実にうらやましい。オレは成績が上がるまでダメらしい。それって永久に無理ってことじゃねーか?

まぁ、電話しかしねーから別にいいけどよ。


オレたちは駅に向かって歩き出した。

ベンチの前の文字を残したまま。



 △

 |

真|竜

虎|

人|司

 |

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