第29話 それってデート
その調子で師匠とオレは稽古を続けた。
たまにマコも入って組み手の相手になってくれることがあったが、20回に1度くらいは一本とれるようになった。
まだまだだ。
マコが話しかけたり、コンビニに誘ってくれたりするが断った。
今は空手に集中したい。
師匠は五月の初旬にある中学生と高校生の大会に出場するように言ってくれた。
それの女子の部にはマコも出場する。
オレも今までの成果を出したいので二つ返事だった。
部活をやりながらの早朝と夜の稽古。
親たちは学習塾に入れたがっていたが、どうしてもオレはこれをやりたかった。
マコに認められる男になる。
そしてマコに愛の告白。
動機は不純だし、彼氏がどのくらいのレベルかわからねぇ。
だが釣り合いの取れる男にならなきゃだめだ。
その日の稽古も師匠に打ち付けられ、オレは畳の上に転がっていた。
「立てリュージ。そして掃除をしろ」
「ハァハァ。押忍」
オレは立ち上がって道場の掃除を始めようとした。
いつもの師匠はとっとと母屋のほうにいってしまうのだがその日は違った。
「あ〜。オホン。リュージ。今までよく頑張ったな。週末は大会だ。いい成績が残せるだろう。感触で分かる。明日の土曜日は休みだ。英気を養え」
「ハァハァ。え? 休みっすか?」
「そうだ。まぁ、そのぉなんだ。マコが買い物に行きたいらしいから荷物持ちをしてこい」
「え? に、荷物持ち?」
「そうだ。これも修行の一環だ」
「は、はぁ……?」
「そのぉ〜。近所の公園に9時待ち合わせらしい」
師匠はなんでオレが言わなきゃならないんだと言うような真っ赤な顔をしていた。
「その代わり、朝はきっちり走れよ! 道場の掃除をしなくとも部屋の掃除でもしろ!」
「お、押忍!」
そこまで言うと、師匠は体を反転させてとっとと母屋の方へ行ってしまった。
分けが分からないが、マコと買い物……。
なんだそりゃ。スーパーか何かか?
と思いながら掃除して家に帰った。
12時にもう一話アップします。